金物のまちとして約400年続く三木市には、機械化が進む中、大工道具や日用品を手作業で製造する昔ながらの鍛冶屋も30軒ほど残っています。田中一之刃物製作所もその一つで、祖父や父の代は鎌、私の代になってからは包丁をメインにしています。鉄をベースに、刃先だけに高価な鋼を張り合わせる伝統的な刃物作りは、少ない資源で最大の切れ味を生み出すために先人たちが知恵を絞って編み出した日本の誇るべき技術です。体験ではまず、1,200℃の炉から取り出した熱々の鉄の棒を金づちやベルトハンマーで鍛錬して包丁へと成形していく様子を見てもらい、希望者には同様の工程に挑戦して「鉄は熱いうちに打て」の語源を体感してもらいます。また、土壁に格子窓が付いた典型的な三木の鍛冶屋の工場内も案内。一人でも多くの人に、土地に根付いた鍛冶文化や包丁の“本物”の切れ味に触れてもらいたいです。(田中一之刃物製作所代表 田中誠貴さん)