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皆さん、こんにちは。
来年は、阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えます。新聞やテレビで震災に関する話題が増えてきましたが、同時に震災30年限界説という言葉も目にするようになりました。県庁でも職員として震災を経験していない割合が約7割となっています。震災経験者が年を追うごとに減少し、世代交代が進むにつれ記憶の継承が困難になっていきます。次なる備えのためにも、震災の経験や教訓は世代や地域を超えて、広く継承・共有されていくことが大切です。
県ではこれまでの、「忘れない」「伝える」「活かす」「備える」に、今回「繋ぐ」を新たなテーマに加えて、県民の皆さんと一緒になってさまざまな取組みを行っています。最近、私が触れる機会を持った取組をご紹介します。
神戸新開地も阪神・淡路大震災で大きな被害を受けました。今回喜楽館で地域の震災復興を振り返り、笑って元気になろうという特別企画をお届けします。今月16日に制作発表会を行わせていただきました。
震災を経験した噺家さんたちによる落語、震災をテーマとした創作浪曲、さらには当時のアーカイブ映像を見ながら朝日放送アナウンサーでもある支配人・伊藤史隆さんと落語家さんが震災当時を振り返る対談など、特別な一週間となります。トリの落語家さんも、神戸・阪神にゆかりのある豪華なラインナップが日替わりで登場します。
震災というテーマが落語とどう結びつくか、一見チャレンジングな発案に思えますが、このことを関係者が真摯に受けとめて実現した企画です。被災した噺家さんや関係者が、震災時の苦労や復興の道のりを振り返り、その思いを多くの方々に伝えます。もとより落語は視覚的・瞬発的な笑いではなく、喜怒哀楽や人生そのものを題材として人が想像力を膨らませ、ほの温かくなる笑いとして親しまれてきました。この度の企画も、落語の持つ力がきっと記憶を繋ぐこと、笑って元気になることに一役買ってくれるのではないかと思います。
笑ってがんばろう!震災復興ウィークチラシ(PDF:994KB)
笑ってがんばろう!震災復興ウィーク(外部サイトへリンク)
震災からの復興の文化的なシンボルとして平成14年に開館した兵庫県立美術館は、これまで震災の節目ごとに関連する展示を行ってきました。そして今回、震災30年の節目に、阪神・淡路大震災30年企画展「1995 ⇄ 2025 30年目のわたしたち」が開催されています。
12月21日(土曜日)~3月9日(日曜日)
國府理さん、束芋さん、田村友一郎さん、森山未來さん・梅田哲也さん、やなぎみわさん、米田知子さん 6組7名のアーティストによる企画展です。
展覧は各室だけでなく、受付を済ませた直後の廊下から始まっているという面白いものでした。鑑賞した人が自由に解釈すればよいのでしょうが、震災当時やこれまでの道のりを振り返るだけでなく、これから先に向かって考えていくような要素も込められている印象を受けました。
阪神・淡路大震災30年 企画展 1995⇄2025 30年目のわたしたちチラシ(PDF:1,001KB)
阪神・淡路大震災30年 企画展 1995 ⇄ 2025 30年目のわたしたち(外部サイトへリンク)
企画展にお伺いした際、彫刻家・青木野枝氏による新しい屋外作品を観ることができました。
日頃より県美を応援してくださっている(公財)伊藤文化財団の寄贈による、震災を忘れないためのモニュメントです。場所は4階屋外の「風のデッキ」。北側に六甲山、南側に海を臨むスペースです。写真のとおり鉄を素材にした大きな作品で、分割して搬入し、当地でこの形になるよう溶接して完成しました。この地が震災より以前に川崎製鉄阪神造船所や神戸製鋼所があった「製鉄」とゆかりが深い場所であることも作品選定の理由の一つだそうです。
来年1月10日(金曜日)には地元の渚中学校生徒も招待した寄贈式、翌1月11日(土曜日)には設置の構想に至る過程や作品に込めた思いを青木さんにお話しいただく講演会を予定しています。
1月11日(土曜日) HART TALK 館長といっしょ!Vol.14 彫刻家、青木野枝さんをお迎えしてー兵庫県立美術館への屋外作品設置を終えて(外部サイトへリンク)
震災の経験や教訓を継承していくためには、いろんな形、方法があってよいのだと思います。皆さんが足を運びやすい、興味をもったものに参加してみてください。
今年も残り少なくなりました。暦の関係で年明けまで長いお休みになる方も多いのではないでしょうか。健康に留意して穏やかな年末年始をお過ごしください。
兵庫県神戸県民センター長
内藤 良介
≪以下に「過去の神戸県民センター長だより」のリンク先を掲載しています。≫
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