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地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するのが「日本遺産」。兵庫県では、全国104件のうち最多9件(2024.6現在)のストーリーが認定されており、その時代もテーマも多彩であることが特徴です。
ここではその9件のストーリーの特色や地域の魅力をご紹介します。(掲載は認定順、タイトルの後の括弧内は認定年度)
城下町の篠山で200年にわたって育まれ、歌い継がれてきたのが江戸時代の民謡を起源とする「デカンショ節」です。人々の喜怒哀楽やふるさとへの誇りとともに時代ごとの風情や名所、名産品が歌に織り込まれ、その歌詞は今では300番以上に。毎年8月15日、16日に開催されるデカンショ祭では、篠山城跡に高く組まれたやぐらを中心にデカンショ節の生歌・生演奏に合わせ数千人が幾重にも輪を描きながら踊り続けます。
古事記の冒頭に書かれた「国生み神話」の中で最初に誕生するのが淡路島です。その背景には、金属器文化をもたらし、塩の生産術に長け、巧みな航海術で畿内の王権や都の暮らしを支えた”海人〞と呼ばれる海の民の存在がありました。彼らの足跡は島内各地に点在する遺跡や出土品などに見ることができ、伊弉諾神宮や沼島などが国生み神話の伝承地として残っています。
姫路・飾磨港と生野鉱山を南北に結ぶ全長49キロの銀の馬車道はかつて、鉱物や資材を届ける馬車が盛んに行き交いました。生野は「佐渡の金、生野の銀」と称された鉱山町で、そこから「銅の神子畑、明延、金の中瀬」といわれた鉱山群をつなぐ24キロの鉱石の道には、東洋一の規模を誇った神子畑選鉱場跡や、その先の明延鉱山との間に敷かれた明神電車跡などが、近代日本の発展を支えた歴史を伝えています。
瀬戸、備前などとともに日本六古窯に数えられる丹波焼。13世紀に開かれたと伝わる産地の丹波篠山市今田町立杭は、今も山麓の緑に抱かれるように約60軒の窯元が南北に連なり、独特の景観を醸しています。窯元の多くが工房近くにギャラリーを構え、「丹波焼最古の登窯」や兵庫陶芸美術館、「丹波伝統工芸公園立杭陶の郷」などとともに巡る窯元路地歩きは、産地ならではの楽しみ方として人気を集めています。
日本海や瀬戸内海の沿岸に点在する港町には港に通じる小道が随所に走り、通りに面して、かつての広大な商家や豪壮な船主屋敷がたたずみます。また、社寺には奉納された船の絵馬や模型が残り、京など遠方に起源がある祭礼が行われています。これらの港町は、荒波を越え、動く総合商社として巨万の富を生み、各地に繁栄をもたらした北前船の寄港地・船主集落で、今も人々を引き付けてやみません。
江戸時代、システマティックな入浜塩田による塩づくりが確立された播州赤穂。瀬戸内の穏やかな海と気候に抱かれ、千種川が中国山地からもたらした良質の砂からできた広大な干潟は、入浜塩田の開発に適しており、その製塩技術は、瀬戸内海沿岸に広がり、市場を席巻するまでに成長しました。中でも赤穂の塩は、国内きってのブランドとして名を馳せ、赤穂に多彩な恵みをもたらしました。このまちには瀬戸内海から生み出される塩とともに歩んできた歴史文化が蓄積され、現在に息づいています。赤穂は今なお「塩の国」なのです。
日本海から吹きつける季節風が創り上げた日本最大級の鳥取砂丘。海岸を進むと風が起こす荒波に削り出された奇岩が連なっています。鳥取砂丘の砂を生み出す中国山地へと急流を辿ると、風がもたらす豪雪に育まれた杉林を背に豪邸が佇んでいます。さらに源流へと分け入ると岩窟の中に古堂が姿を現します。これらは日本海の風が生んだ絶景と秘境です。人々は、厳しい風の季節での無事とそれを乗り越えた感謝を胸に、古来より幸せを呼ぶ麒麟獅子を舞い続け、麒麟に出会う旅人にも幸せを分け与えています。
人生を通して、いかに充実した心の生活を送れるかを考えることが、日本人にとっての究極の終活だと言えます。そして、それを達成できるのが西国三十三所観音巡礼です。日本人は海外の人から『COOL!』だと言われます。そのように評価されるのは、優しさ、心遣い、勤勉さといった日本人の本来の心であり、実はそれは日本人が親しんできた「観音さん」の教えそのものと言えます。観音を巡り日本人本来の豊かな心で生きるきっかけとなる旅、それが西国三十三所観音巡礼です。
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第26番札所 一乗寺ホームページへ(外部サイトへリンク)
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江戸時代、伊丹、西宮・灘の酒造家たちは、優れた技術、良質な米と水、酒輸送専用の樽廻船によって、「下り酒」と称賛された上質の酒を江戸へ届け、清酒のスタンダートを築きました。酒造家たちの技術革新への情熱は、伝統ある酒蔵としての矜持と進取の気風を生み、「阪神間」の文化を育みました。六甲山の風土と人に恵まれたこの地では、水を守り米を育てる人々、祭りに集う人々、酒の香漂う酒造地帯を訪れ、蔵開きを楽しむ人々が共にあり、400年の伝統と革新の清酒が造られています。
「伊丹諸白」と「灘の生一本」下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷(外部サイトへリンク)
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