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第347回兵庫県議会の開会に当たり、議員各位の日頃のご尽力に敬意と感謝の意を表します。
提出議案の説明に先立ち、今後の県政について所信を申し述べます。
1月17日に震災から25年を迎えました。秋篠宮皇嗣同妃両殿下のご臨席のもと、県公館とHAT神戸において追悼式典を行いました。小中高校生の言葉と「しあわせ運べるように」の歌声に、明日への決意を共有しました。
長いようで、瞬く間のように感じた25年。成熟社会を見据えた創造的復興をめざしてきました。この経験と教訓は、国内外の被災地の復興に生かされています。
必要なことは、過去から学び、未来につなぐことです。風化が懸念されている今だからこそ、この原点に立ち返り、経験や教訓を「忘れない、伝える、活かす、備える」のもと、次なる時代への安全を期さなければなりません。
南海トラフ地震が間近に迫っています。国難となりうる大災害を前に、兵庫がわが国の防災モデルとなるべく、災害文化を定着させ、安全安心の基盤を確立します。
令和2年は、本格的な令和時代の始まりと言えます。平成時代は、経済的な長い停滞が続き、少子高齢化が深刻化し、自然災害が多発した時代でした。
一方、グローバル化、AIなど情報社会化、ITベンチャーの成長などが進展しました。第4次産業革命と言われるこれらの技術革新は、さらに驚くべき早さで進化を続け、私たちに希望を与えています。
こうした技術を大きく育て、平成から引き継いだ課題の解決に挑み、次なる時代をつくり上げていかなければなりません。
しかし、先行きに懸念がない訳ではありません。
そして、最大の課題は、人口減少対策です。昨年の日本人の転出超過数は、1,000人あまり拡大し、7,260人となりました。東京、大阪への転出が広がっています。出生数も4万人を割って38,658人となり、近い将来、高齢者数が現役世代の人数を上回る地域が出てくると予想されます。
しかも、地域偏在が拡大し、二極化しています。子育て世代などの人口流入により持続可能な地域と、人口流出により地域社会の存立が危ぶまれている地域が出てきました。県全体としての社会減をなくすこと、あわせて、都市部以外の地域の活力を持続できるかどうかです。
そのためには、広域的に人を引きつけるプロジェクトを大胆に展開し、選ばれる地域として再生すること、AI・IoTを地域に取り込み、どこにいても豊かな生活環境を整えること、そして、地域づくりの担い手を確保していけば、地域創生の活路は開くはずです。
第2期地域創生戦略では、「地域の元気づくり」、「社会増対策」、自然増対策として「子ども・子育て対策」、「健康長寿対策」の4つの戦略目標を掲げています。
震災の復旧・復興による財政負担は、これまで長期にわたり、また、これからも10年は続いていきます。行財政構造改革を成し遂げたとはいえ、依然として厳しい財政運営を強いられます。
しかし、重要なことは、震災から25年を経過した今こそ、新しいステージにふさわしい県政を推進すること、そして、人口が減っても活力のある、住み続けたいと思える元気な兵庫をつくることです。
今こそ、新たな時代を切り拓く挑戦のときです。
求められているのは、兵庫2030年の展望で描いた「すこやか兵庫」の実現。暮らし、産業、地域の魅力、教育など、あらゆる分野の質を高めるための種をまき育てていく。大きく後れをとってしまった社会資本整備やまちの再整備にも取り組まなければなりません。
令和新時代の本格的なスタート。復興の先の新しいステージに向かって、大きく羽ばたこうではありませんか。
令和2年度の県政の柱は、次の六つです。
まず、第一に、安全な基盤の確立です。
その一は、防災・減災対策の推進です。
安全基盤の確立は県民生活の礎です。国の3か年緊急対策や経済対策補正を活用し、14ヶ月予算として前年度を上回る事業費を確保しました。地震・津波対策、高潮対策、土砂災害対策、ため池の防災力向上など、防災・減災の基盤づくりを急ぎます。
これまでの風水害対策により、昨年は幸いにも大きな被害は発生しませんでした。しかし、東日本を襲った台風19号の降雨量などを本県に当てはめた場合には、流域面積の大きい河川で氾濫する可能性があります。頻発・激甚化する風水害への対応力を引き上げなければなりません。
河川改修に加え、超過洪水時にも決壊しにくい堤防の整備や、ダムの利水容量を治水対策として活用します。あわせて、堆積土砂の撤去も徹底するなど、事前防災対策を加速します。
震災25年を機に再認識した「忘れない、伝える、活かす、備える」を具体化しなければなりません。日頃から災害時にとるべき行動を想定しておく、災害文化の定着をめざす取組を強化します。
マイ避難カードの作成を全県に展開します。避難の判断に役立つ河川水位情報を追加するなど、ひょうご防災ネットのスマホアプリ機能を充実します。
要支援者の避難を効果的に行うため、福祉事業所が中心となり、ケアプランなどの作成に合わせた個別支援計画の作成を促進します。
全国的な防災人材育成拠点として広域防災センターの機能強化を図るため、宿泊施設を整備し、研修プログラムを充実します。
企業が地域の防災活動に力を発揮できるよう、消防団と連携した消火・防災訓練を支援します。
その二は、持続可能な地域環境の創造です。
温室効果ガスの2030年度目標値の見直しに着手し、さらに長期的な削減目標を検討します。家庭用蓄電システムや中小事業所の再エネ設備導入への支援も拡大します。
オーストラリアから神戸に液化水素を運ぶ世界初の運搬船が昨年12月に進水するなど、水素社会の実現に向けた動きが活発化しています。
神戸や尼崎に続く水素ステーションの整備を促進するほか、バスへの次世代燃料電池自動車導入を支援します。
プラスチックごみによる海洋汚染や生態系への影響について、懸念が広がっています。資源循環に向けた市町の分別回収モデル構築を促し、レジ袋などの削減に取り組む県民運動を展開します。海底・漂流ごみの回収支援も進めます。
スーパー、福祉団体、市町と連携して、家庭で使い切れない食品を子ども食堂などで有効活用するフードドライブ運動を全県で実施します。
野生鳥獣対策も強化します。イノシシ25,000頭、アライグマ7,000頭と、捕獲目標をそれぞれ5,000頭、1,000頭、上乗せするとともに、鳥獣対策サポーターの派遣集落を拡充します。
人に危害を加えるなど危険性が高いサルについては、専門家チームで捕獲を行います。ツキノワグマは、個体の違法流通を防ぐための適切な管理体制を構築します。
その三は、安全な地域づくりです。
SOSキャッチ電話相談は、日常生活で気付いた様々な異変を、誰でも匿名で通報・相談できます。福祉などの専門相談機関や警察との連携を強化し、SNSを活用した県民へのPRを強化します。
子どもが犠牲となる交通事故が相次ぎました。交差点などへの防護柵の設置や路肩のカラー舗装、信号機のLED化による視認性の向上など、通学路や子どもの集団移動経路の交通安全対策を強化します。踏み間違い防止装置の購入支援も、引き続き取り組みます。
その四は、感染症への備えです。
新型コロナウイルスの感染者が近隣府県で発生した直後から、健康福祉事務所などに相談窓口を開設し、県民の不安解消に取り組んでいます。あわせて、高齢者施設などに注意を呼びかけています。
感染経路が明確でない場合にも備え、感染症予防医療体制を整備する必要があります。また、観光客の減少などにより、県内中小企業者への影響も出始めています。
このため、国の緊急対策を活用し、帰国者・接触者外来の設置、指定医療機関の設備強化への支援や中小企業の金融支援を実施します。
県民の皆様には、季節性インフルエンザと同様の感染予防に努め、感染が疑われるときは、事前に相談窓口へ連絡のうえ受診してください。国や県、市町からの情報に基づき、冷静に行動いただくようご協力をお願いします。
第二に、安心な暮らしの実現です。
その一は、子育て環境の充実です。
待機児童解消に向け、保育の受け皿を拡大します。一方、出生数の減少により、保育需要の減少が見込まれる市町もあります。地域により異なる保育事情を中長期的に見極めつつ、今後の保育のあり方を検討します。
保育の質の向上を図るため、代替要員の人件費助成により、研修を受講しやすい環境を整え、保育士のキャリアアップを支援します。
急増する児童虐待相談にきめ細やかに対応するため、こども家庭センターの専門職員を増員し、体制強化を図ります。阪神地域、北播磨地域にはセンターを新設します。
その二は、高齢者への支援の充実です。
高齢者が望む形で介護を受けられる基盤を整備します。定期巡回・随時対応サービス事業者の参入促進のため、開業当初の人件費に対する支援を拡充し、在宅介護を支えます。特養の整備も進めます。
介護需要の増大に伴う人材不足に対応するため、介護ロボットやICT機器の導入を推進し、労働環境を改善します。奨学金返済支援制度の導入や外国人介護人材への支援も強化します。
その三は、戦争体験の次代への継承です。
終戦75年目の節目にあたり、戦没者への追悼と、戦争の悲惨さや平和の尊さを次代に伝承しなければなりません。8月には、県公館で式典を開催します。
あわせて、全国戦没学徒追悼式を南あわじ市の若人の広場で開催します。これを機に広場の存在を高めるため、戦没学徒の遺品や写真など展示資料の充実を図ります。
兵庫・沖縄友愛の原点であり、沖縄県民の尊敬を集めている島田叡元沖縄県知事と、ともに活動した栃木県出身の荒井退造元警察部長の足跡を振り返り、改めて平和の尊さを伝えるため、3県で交流事業を実施します。
その四は、障害者への支援の充実です。
ユニバーサル社会づくりへの県民の主体的な取組を促進するため、障害者、高齢者などが交流する居場所づくりを支援します。視覚障害者の情報取得促進のため、オーディオブックを充実し、ICT指導者も養成します。
原田の森ギャラリーでは、常設展示機能を設けるなど障害者芸術の発表機会を増やします。
重度肢体不自由児者の日常生活活動や身体能力の維持を図るため、訪問看護によるリハビリの自己負担を軽減します。
障害者の職場定着に向けた支援のため、県独自のジョブコーチ制度を創設します。ジョブコーチが、障害者の職務能力の開発や、職場での指導など支援を行います。
障害福祉事業所の農業への参入や特例子会社の設立も促進します。
その五は、医療の確保と健康づくりです。
医師不足が深刻な産科、小児科と、今後、需要が増える見込みの総合診療の専攻医に対し、研修資金の貸与制度を創設します。医師の労働時間短縮に向けた取組を行う医療機関に対する支援も始めます。
地域医療構想に基づき、回復期、高度急性期機能への病床転換を促すほか、病床削減や統廃合、機能の集約に対する支援も新たに行います。
分娩施設数の減少により、特定の病院に妊婦が集中しています。周産期医療体制の充実と産科医の負担軽減を図るため、院内助産や助産師外来の設置を促進します。
全国平均を下回るがん検診受診率を改善するため、市町域を超えた広域的な検診受診体制を構築します。
若年がん患者について、抗がん剤治療などを受ける前に、将来の妊娠の可能性を残す、妊よう性温存治療を支援します。
あわせて、妊よう性への影響が少ない陽子線治療の受診を促すため、治療費の一部を減免します。
疾病予防や健康づくりに先端技術を活用します。ビッグデータを活用した地域の健康課題の見える化や、スマートウォッチを使った高齢者の健康管理モデル事業の支援に取り組みます。
県立西宮病院と西宮市立中央病院を統合再編することとし、新病院の設計に着手します。
がんセンターは、合併症患者に対する総合病院などとの連携方策の検討を行い、これを踏まえ建替の準備を進めます。
こども病院での治療・退院後、経過観察が必要な遠方の患者の負担を軽減するため、遠隔診療を行うシステムを導入します。
第三に、地域の元気づくりです。
その一は、兵庫の強みを活かした産業の育成です。
意欲あふれる新たな挑戦を後押しするため、全国屈指の起業・創業環境の創出をめざします。
起業プラザひょうごの移転に合わせ、発展途上国での食料確保など、社会課題に挑む起業家を育成する国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)のグローバル・イノベーション・センター(GIC)を開設します。起業プラザとの相互連携、相乗効果を期待します。姫路市と尼崎市には、起業プラザのエリア拠点を設置します。
準備段階から在留できるスタートアップビザ制度を活用し、外国人の起業環境を充実します。
ものづくり支援センター神戸の機能を拡充し、専門家による相談や技術支援を通じて、中小企業のデジタル技術の導入を支援します。
神戸市や経済界と連携して、本庶佑ノーベル賞受賞記念 次世代医療開発センター(仮称)を整備します。自己免疫疾患完治療法に関する先進的な創薬研究や開発を期待します。
スパコン「富岳」の令和3年頃の共用開始に向け、FOCUSスパコンの増強や人材育成により、産業利用を促進します。
産業立地条例に基づく支援の対象をほぼすべての業種に拡大し、幅広い企業の誘致を推進します。
外資系企業の誘致を進めるため、事務所の賃料助成の補助単価と限度額を引き上げます。欧州・米国へのプロモーションも強化します。
制度融資による中小企業の支援を拡充し、防災対策や、事業承継、起業、ナイトライフの活性化などに取り組む事業を対象にします。
経営改善に取り組み、今後の成長が見込まれる「ひょうごプラチナ成長企業」を認定します。
その二は、力強い農林水産業の確立です。
農業の持続的発展には、経営基盤強化と新規就農者の確保が不可欠です。
法人化の推進と法人の経営基盤を強化するため、生産規模の拡大に伴う機械の導入や、ブランド化の取組などを引き続き支援します。農地の集積・集約化を進めるため、人・農地プランの策定をサポートする専門家を派遣します。
雇用就農を促進するため、求人サイトを活用するとともに、簡易トイレの設置など労働環境の整備を進めます。
農地の適正な管理を行っていく小規模農家の役割も重要です。
孤立、分散した農地の借り受けや、農家と農作業を受託する人材とのマッチングを行うJA出資法人などを支援し、小規模農家が所有する農地の放棄田化を防止します。農業施設貸与は小規模農家を承継する定年帰農者なども対象とするとともに、リース期間の延長により貸付料を低減し、利用を促進します。
ICTや自動化技術などを活用したスマート農業を推進し、生産性の向上や農作業の効率化を図ります。
神戸ビーフに対する国内外の需要が増大しています。牛舎整備、繁殖雌牛の導入、施設用地の掘り起こしや紹介などに引き続き取り組みます。
林業の収益性と防災機能の向上を図るため、成熟した人工林の主伐と再造林を推進します。
非経済林では、森林環境譲与税を活用した間伐など市町による適切な管理が求められています。市町への支援を行う森づくりサポートセンターの体制を整え、技術者の派遣や調査・設計業務を受託します。
県産木材を用いた住宅の建築、リフォームの拡大を図るため、融資の返済期間を延長します。駅などの公益性の高い施設の木質化も支援します。
豊かで美しい瀬戸内海の再生に向け、海域での栄養塩類の状況や生物影響を調査研究するなど、適切な栄養塩管理を進めます。水産物の育成に適した藻場の造成や、耕うんによる海底環境の改善も図ります。
令和3年に開催する全国豊かな海づくり大会の開催準備を進め、プレイベントによる機運の醸成を図ります。
その三は、魅力あるまち、地域の整備です。
県政の中枢拠点としてふさわしい耐震性と先進的な機能を備える県庁舎の整備を進めます。建替に伴い発生するスペースを活用して、にぎわいと交流を生み出すまちづくりを推進します。基本計画のとりまとめを急ぎ、基本設計にも着手します。
兵庫・神戸の顔である三宮の活性化を図るため、国際競争力のある魅力的なまちづくりを支援します。
新長田駅南地区のにぎわいづくりにも資するため、総合衛生学院の移転建替に合わせ、リカレント教育などの拠点として兵庫教育大学と県立大学を誘致します。
県立西宮病院の跡地、姫路港旅客ターミナルエリア、明石港東外港地区などの再整備を市町と連携して進めます。
県立都市公園もリノベーションが必要です。トイレや遊具などを修繕・更新し、さらに、各公園の再整備を計画的に進めます。
有馬富士公園では、「地球アトリエ」構想の具体化を図ります。
オールドニュータウンの再生モデルとすべく、明舞団地におけるコミュニティづくりや魅力向上を図る地域主体の活動を、引き続き支援します。分譲マンションを再生し、流通させるモデル的取組も始めます。
六甲山の魅力を高めます。遊休施設の改修や建替支援の拡充に加え、産業立地条例の拠点地区に指定し、税の軽減や、設備投資、新規の正規雇用に対する助成を行います。融資の拡充と合わせ、事務所やホテル、レストランなどの立地を加速させ、にぎわいの創出を図ります。
兵庫県の成立や五国の歴史、文化、産業を学び、体感・体験できる兵庫津ミュージアム(仮称)の整備を進めます。
鳴門海峡の渦潮の世界遺産登録に向け、海外類似資源の調査や普及啓発活動を実施します。
その四は、スポーツ、芸術文化の振興です。
東京オリンピック・パラリンピックの開催まで、5か月余りとなりました。オリンピックの聖火リレーは豊岡市をスタートに五国全てを巡り、パラリンピックでは全市町の火を兵庫の火として1つにまとめ、大会を盛り上げます。事前合宿では、地域との交流事業も展開します。
ワールドマスターズゲームズ2021関西も来年に迫り、エントリーが今月から始まりました。1年前イベントやリハーサル大会の実施、ボランティアセンターの開設など取組を進めます。
スポーツによるにぎわいづくりには、アリーナをはじめスポーツ施設の整備が必要です。誰もが世界レベルを体感し、スポーツを気軽に楽しめる整備を検討します。
芸術文化の振興を図るため、新進アーティストの公演機会の確保や、複数市町のホールが連携した大型公演の誘致を支援します。学校での伝統芸能などの鑑賞機会を充実します。
県立美術館は旧近代美術館から開館50周年を迎えます。美術館の持つ名品を展示するなど記念事業を展開します。貴重な東洋美術を収蔵する頴川美術館を、10月に西宮分館としてリニューアルオープンします。
開館15周年を迎える芸術文化センターでは、佐渡 裕芸術監督プロデュースオペラ「ラ・ボエーム」などの多彩で魅力的な企画を、年間を通じて展開します
第四に、全員活躍社会の構築です。
その一は、未来を担う人材の育成です。
子どもたちが大人になり社会に出て、様々な課題に立ち向かうためには、基礎学力とともに主体的に学ぶ力を身につけなければなりません。
小・中学校では、学習状況調査で明らかとなった課題の克服や、主体的・対話的な学びを実践する少人数授業を行います。
県立高校では、問題解決力や創造力を備えた人材を育成する文理融合型教育を兵庫版STEAM教育として、モデル校で展開します。県立高校の更なる特色づくりや、生徒数の減少に対応した規模、配置のあり方も検討します。
国際観光芸術専門職大学(仮称)は、芸術文化や観光の高度な専門職業人の育成をめざしています。令和3年4月の開学に向け、設置認可に向けた調整や校舎整備などに取り組みます。
情報活用能力の育成のため、令和2年度に全県立学校にWi-Fi環境を整備します。令和6年度にはすべての県立高校の生徒がタブレットを持ち、授業で活用できるようICT化を進めます。
阪神地域の特別支援学校では、校舎が狭隘化しています。今後も児童生徒数の増加が見込まれますので、川西市に特別支援学校を新設します。
経済格差が教育格差につながらないように努力が必要です。
4月から年収590万円未満の世帯を対象に、私立高校などの授業料が実質無償化されます。これ以上の中所得世帯に対しては、年収910万円未満世帯について、所得に応じた県独自の授業料軽減を行います。
大学など国の高等教育の無償化に伴い、低所得世帯を対象に県立大学などの授業料、入学金の減免も行います。
その二は、多様な人材の活躍推進です。
昨年の転出超過7,260人のうち、20代が7,098人と大宗です。兵庫で働きたいという願いを叶え、流出に歯止めをかける必要があります。
マッチングサイトの充実を図り、掲載する求人件数を全国トップレベルにします。首都圏に進学・就職した女性と、県内企業で活躍する女性社員との交流会などを開催し、兵庫での就職を後押しします。
インターンシップの対象を大学1・2年生にも広げ、参画企業とのマッチングの場を設けるなど、取組を強化します。
不安定就労に陥っている人は、年齢の上昇に伴い正規での就職がより難
しくなり、健康や生活の不安が高まります。
就職氷河期世代を含むミドル世代とシニア世代の幅広い就労ニーズに対応するため、ひょうご・しごと情報広場にそれぞれの相談コーナーを設けます。
県内のひきこもり者は5万人余りに及ぶと推定されています。8050問題への対応が急務です。
ひきこもり総合支援センターで相談から就労援助へつなぐ一体的支援を行います。
家族を介したひきこもり当事者への支援プログラムを普及し、困難な事案への対応を強化します。
外国人雇用に対する企業の理解を深め、在留資格に応じて適正な就労を促す相談窓口、「外国人雇用HYOGOサポートデスク」を設置します。
多文化共生を更に進めるため、双方向のコミュニケーションの円滑化を支援します。
第五に、交流・環流の促進です。
その一は、交流人口の拡大です。
世界遺産姫路城や全国最多8つの日本遺産など多様な観光資源を活かす戦略的な誘客が必要です。ひょうご観光本部では、民間人材を活用するなど体制を強化し、魅力的な周遊・体験型コンテンツの開発や観光人材を育成します。観光地における多言語化対応など受入環境の整備にも取り組みます。
スポーツ観戦と周辺を観光するスポーツツーリズムが注目されています。ゴールデン・スポーツイヤーズの2年目は、東京オリンピック・パラリンピックです。この好機に、有楽町の東京スポーツスクエアで、兵庫の観光情報や物産を重点的にPRします。
県内を巡るサイクリングモデルルートを設定し、走行環境を整備します。大鳴門橋への自転車道設置も、具体化を更に進めます。
インバウンドの推進には、情報発信力の強化が不可欠です。大手口コミサイトやオンライン旅行会社、航空会社などと連携し、旅行先や時期、旅行形態など、ターゲットに合わせた効果的なプロモーションを実施します。
淡路で開催される日中韓観光大臣会合を機に、兵庫の観光をPRします。
淡路花博の開催から20年を迎えます。その理念の継承と淡路の多彩な魅力を発信する花みどりフェアを、秋と来年の春の2シーズンにわたり開催します。
雪不足によるスキー場への影響が深刻です。降雪・造雪設備の導入など、今後の雪不足に備えます。あわせて、通年でのスキー場周辺への誘客を促進するため、スポーツ・文化関連の合宿などの誘致を支援します。
その二は、定住人口・関係人口の創出、拡大です。
カムバックひょうごセンターには、これまでに約17,000件の相談が寄せられ、140名を超える移住に結びついています。4月から東京センターのサテライト窓口を、有楽町のふるさと回帰支援センターに設け、機能を強化します。
ひょうごe-県民には、1年で約3万人もの方に登録いただきました。更なる登録を促すため、イベントや地域活動への参加に対し、アプリ内でポイントを付与するなど兵庫県への関心を高め、地域との交流や移住につないでいきます。
小規模集落は10年間で倍増しています。高齢化による地域づくりの担い手不足が課題です。集落での外部人材の活用を促進するため、県版地域おこし協力隊の対象市町を拡充します。あわせて、協力隊OBのネットワークを活かし、集落間の連携や都市部との交流を促します。
その三は、交通基盤の充実です。
基幹道路ネットワークは、交流の基盤です。
大阪湾岸道路西伸部、北近畿豊岡自動車道、山陰近畿自動車道、中国横断自動車道姫路鳥取線、神戸西バイパス、東播磨道の早期整備、名神湾岸連絡線、播磨臨海地域道路、東播丹波連絡道路の早期事業化を推進します。
広域交通網の利便性の向上のため、神戸市の北神急行の鉄道資産取得に対して支援します。
鉄道、バスなど複数の移動手段の経路検索や予約をICTにより一括して行える、MaaS導入に向けた実証実験に取り組む市町を支援します。
令和3年度の播磨自動車道の全線開通に合わせ、播磨科学公園都市の交通結節点となるバスターミナルを整備します。
神戸空港の運用規制の緩和により、1日80便に拡大された発着枠は1年足らずで埋まりました。22時台の到着便も設定されます。万博など大規模な国際イベントを見据え、3空港懇談会での更なる規制緩和を働きかけます。
但馬空港は、滑走路端安全区域(RESA)の整備が必要です。航空需要や高規格道路の供用などの環境変化を踏まえ、滑走路延伸を含めた今後のあり方を検討します。
第六に、新たな兵庫の展開です。
その一は、地域創生の推進です。
第二期地域創生戦略に基づき、人口減少下でも活力ある兵庫づくりを進めます。
阪神・淡路大交流プロジェクトなど、広域的で先進的な8つの地域プロジェクトのモデルを提示し、地域の未来づくりに向けて住民、企業、行政などが一体となって取り組みます。
その二は、リーディングプロジェクトの推進です。
兵庫2030年の展望で描いた将来像を実現するため、全員活躍プロジェクトなど、未来を拓く先駆的な取組を16のリーディングプロジェクトとして設定しました。2030年度までの10年間を推進期間とし、毎年度重点施策として、取組を展開します。
その三は、新しい将来ビジョンの検討です。
兵庫づくりの基本方向を定める新ビジョンの検討を本格化します。社会潮流を見通し、めざす姿を大胆に描き、次世代へとつなぐ道筋を示します。各地域でも検討体制を立ち上げ、新しい地域ビジョンづくりを進めます。
その四は、適切な行財政運営の推進です。
行財政運営方針に基づき、引き続き適切な行財政運営に努めます。
財政フレームでは、収支均衡などフロー指標の目標は概ね保持しましたが、令和元年度の県税収入の減などから後年度の財政運営に影響が見込まれます。このため、財政フレームを見直すとともに、県債管理基金を活用した県債残高縮減対策を行い、財政構造のスリム化と将来の公債費負担の軽減を図ります。
また、将来負担比率について、県債償還に対する交付税算入見込額を実額で積み上げたため、算入額の減少が見込まれます。目標数値を変更し、構造改革中の実績の2倍、50ポイントの縮減をめざします。
阪神南県民センターと阪神北県民局の統合方針を踏まえ、阪神県民局としての体制の構築に着手します。
ICT技術の活用による業務の効率化を進めます。定型的業務の自動化やペーパーレス・ストックレスの推進、AIによる自動応答サービスの充実などに取り組みます。
SNSを活用した情報発信力も強化します。
その五は、地方分権改革の推進です。
具体の支障事例についての国の提案募集方式の見直しや、大括りの権限移譲を粘り強く国に求めていきます。県や市町の規制改革も進めます。
関西広域連合では、関西における広域行政の責任主体として、第4期広域計画に基づき、防災、産業振興、観光、医療など7分野の広域事務を着実に推進していきます。ワールドマスターズゲームズ2021関西や2025年大阪・関西万博に向けて、オール関西で取り組みます。
これより新年度予算の概要を説明します。
平成の時代に取り組んだ行財政構造改革。その目標を達成したとはいえ、本県の財政環境は依然として厳しい状況が続きます。予算編成に当たっては、選択と集中を徹底し、取組の重点化を推進しました。
歳出では、地方消費税率の引上げに伴い、社会保障の充実や幼児教育、高等教育無償化など制度充実を図ります。投資的経費については、地方財政計画を踏まえた投資水準を基本に、補正予算と合わせて前年度を大幅に上回る事業費を確保し、河川の改修や浚渫、地震・津波対策など喫緊の課題に対応します。
歳入では、県税等全体で前年度を271億円上回りますが、地方消費税率引上げによる増収額を除くと117億円下回る見込です。普通交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税は、前年度から114億円上回ります。
以上の方針のもとに編成した新年度の歳入歳出予算は、
一般会計 1兆9,956億2,400万円
特別会計 1兆6,866億6,200万円余
公営企業会計 歳入 2,592億2,300万円余
同 歳出 2,727億 400万円余 となります。
条例については、兵庫県監査委員に関する条例の一部を改正する条例や警察署の名称、位置及び管轄区域に関する条例の一部を改正する条例など16件、その他、兵庫県行財政運営方針の変更など16件です。
20世紀から21世紀へ大きく時代が転換する中で、兵庫県は、創造的復興をめざすとともに、県民の希望や夢を「ビジョン」として取りまとめ、これを県政推進の基本方向としました。これこそ、県民主導・地域主導でつくりあげた21世紀兵庫長期ビジョンです。
それだけに、長期ビジョンの実現は、県民とともに進める必要がありました。このため、県政運営の基本姿勢を「参画と協働」として取り組みました。このように、我が兵庫は、これまでも様々な苦難を糧に、県民とともに、常に時代の先を見据えた施策に取り組んできました。
新たな挑戦のときを迎えた今、目の前にある課題は決して容易なものではありません。
しかし、私たち兵庫には、未曾有の大震災さえ乗り越えた力があります。
県民とともに考え、行動する。それがたとえ小さな一歩でも、「参画と協働」の理念を基本に、挑戦し続ければ大きな壁も越えられる。
県民の皆さん。新時代の兵庫をつくり上げるため、再び一丸となって、「すこやか兵庫」の実現をめざそうではありませんか。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議の上、適切な議決をいただきますようお願い申し上げます。
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