更新日:2004年2月25日

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第278回兵庫県県議会 知事提案説明 (平成16年2月25日)

県民生活の元気と安心

重点施策の第一の柱は、「県民生活の元気と安心」です。
県民生活の質的充実を図り、新しい時代を切り拓いていくためには、安全と安心の確保とともに、地域の元気や活力を生み出していかなければなりません。このため、震災からの創造的復興と防災対策はもとより、経済・雇用対策や暮らしの安全・安心の確保に力を注ぎます。
まず、阪神・淡路大震災からの復興と防災対策です。
あの大震災から9年を経過し、成熟社会を先導する創造的な復興をめざす計画の最終段階を迎えています。このため、住宅や道路等の復興、健康福祉や産業雇用、文化やまちづくり等これまでの復興過程において、行政や団体、NPO、被災者自身等が取り組んできた状況について検証を行います。また、191の国や地域代表が集う「国連防災世界会議」が開催されますので、これまでの経験や教訓を被災地から全世界へ発信するとともに、創造的復興フォーラムなどを行い、検証の成果や震災の教訓を次世代に継承していきます。
また、国内外からの温かい支援に感謝し復興に歩む兵庫の姿をアピールするため、この4月から2年間にわたり、「1.17は忘れない」をテーマに「阪神・淡路大震災10周年記念事業」を展開します。全県や広域、市町域の事業とともに、様々な団体やグループ等の自主企画も支援しながら、幅広い県民の参加のもとに、防災のまちづくり、芸術文化やスポーツ、福祉、産業など、多彩な行事が繰り広げられ、これが未来へつながることを期待しています。
被災高齢者の暮らしを支えるとともに、まちの賑わいづくりが急務です。高齢世帯生活援助員の訪問等による夜間・休日を含めたきめ細かな支援を行うとともに、復興住宅では、日常のふれあいのなかで見守り活動を行う住民グループの育成を進めるなど、地域ぐるみで高齢者を包み込む仕組みを強化します。
そして、被災地“花・緑いっぱい”推進事業の拡充等を図り、道路や空地、住宅などの緑化を進めるとともに、商店街の賑わい創出イベントを引き続き支援するほか、市街地再開発や区画整理事業等の促進を図ります。
被災地から提案した住宅再建支援制度については、国の「居住安定支援制度」として創設されることとなり、公的支援の道が開かれました。しかし、住宅建築費本体への支援ができないなど課題も多く、今後とも、国に対して制度の改善を働きかけていきます。県としてはこの制度を補完するため、国の制度の限度額と実支給額との差額を助成することにより、住宅再建制度としての趣旨を生かすべく、住宅の再建や購入等についても独自に支援することとしました。住宅再建共済制度については、県民の意向調査等を行いながら、引き続き、その詳細な制度設計など検討を加え、自助・共助・公助の仕組みの実現をめざします。
東南海・南海地震への備えとして、津波による浸水予測図の作成や津波緊急警報装置の設置、平素からの訓練の実施などとともに、県下11市13町の推進地域を対象に緊急避難や施設整備等の計画をとりまとめます。
建物の耐震化を促進するため、住宅の耐震改修にかかる支援を拡充するとともに、県有施設の耐震化についても新年度中には診断を終え、計画的な整備を進めます。特に、県立学校は今後10年間で必要な耐震化を進めることとし、新年度は11校の改修整備を行います。
防災を担う人材育成のため、地域における学習や研修とあわせて、体系的・実戦的な研修を行う「広域防災センター」(仮称)が、この4月「三木震災記念公園」(仮称)にオープンします。新しい消防学校も開校されるほか、自主防災組織のリーダー等を対象にした講座の開催や救急救命士養成所の開設準備も進めます。
次に、経済・雇用対策の推進です。
本県の経済雇用状況は、輸出や設備投資に支えられ、鉱工業生産が堅調に推移しており、雇用情勢も厳しいながら上昇基調にあります。こうした回復基調を確かなものにしていくため、「ひょうご経済・雇用再活性化プログラム」のもと、今後とも切れ目のない総合的な対策を進めていきます。しごと・雇用の創出の目標とする5万人は十分達成しうる見込みです。
また、この明るい兆しを、全業種の中小企業、全地域に押し広げていく必要があります。したがって、まず、中小企業向けの制度融資については、その目標額を2,800億円から3,000億円に増額しました。業況の回復・発展に伴い必要となる設備・運転資金のための事業活性化貸付を創設し、資金繰り対策として運用してきた特別経営資金は、その融資条件を拡充して経営円滑化貸付に統合し、担保や第三者保証人を不要とする経営活性化資金を創設、また、借換貸付の拡充を図るほか、制度全般について有利で使いやすくなるよう再編成しました。
企業立地を促進していくため、産業集積条例を改正して、既に産業集積がある地域の再活性化を図る「産業活力再生地区」を追加し、既存事業所の新たな事業展開も支援するとともに、先端技術型産業が行う大規模な設備投資には10億円を限度とした補助制度を設けることとしました。
本県で活躍する外資系企業と共同したトップセールスを行うなど、積極的な外国・外資系企業の誘致に努めるとともに、欧州への経済代表団の派遣や中国との経済交流も進めます。
新たな成長産業の創造については、補助制度を再編・拡充し、県COEプログラム等により、初期の技術研究から実用化開発、そして事業化に至る各段階において、産学官の連携や第二創業・新分野進出等への取り組みを支援します。新産業創造キャピタルも、企業の意欲につながるよう、株式買取条件付きの引き受けに改め、県内経済界が設立を進める「ひょうごエンジェルファンド」(仮称)と一体となった支援も行います。
中小企業活性化センターを中心とする支援ネットを活用して、アイデアや技術力のある企業を発掘し、市場競争力を高めるためのマーケティング戦略策定の支援や専門家によるきめ細かな経営支援を集中的に行います。
また、地域産業の元気を回復するため、新製品や新技術の開発から販路開拓に至るまでの取り組みを支援します。産地企業と大手小売業者との商談会を開催して取引機会の拡大を促進するほか、元気アップイベントやまちづくりに意欲のある商店街への支援を強化します。
構造改革特区では、先端光科学技術特区をはじめ、先端医療産業特区、自然産業特区、産業集積特区など、既に15箇所の多彩な特区が認定され着実な進展を見せつつあります。今後は、規制緩和だけでなく、権限移譲や補助金改革なども含めた措置が検討されている地域再生プログラムと一体的な取り組みを進めていきます。
雇用対策では、若年者向けに公共職業訓練と企業の実習訓練を組み合わせた実践的な能力開発を行うほか、各種の産業政策を展開するなかで得られた企業の雇用ニーズを活用した職業紹介を行い、しごとカレッジを推進します。
このほか、若年雇用創出型のワークシェアリングをモデル的に実施し、コミュニティビジネスの普及啓発や生きがい就業の支援、離陸応援にも努めます。
そして、くらしの安全・安心の確保です。
県下の犯罪発生件数は依然として高く、街頭犯罪や侵入盗も多発化しており、地域の安全・安心の確保は喫緊の課題です。
このため、警察官を増員してその活動を充実するとともに、1人勤務、2人勤務交番に相談員を配置して、不在交番の解消を図るほか、拠点交番への小型パトカーの配置も進めます。
また、地域の安全を地域ぐるみで守っていく「まちづくり防犯グループ」を、自主防災活動のエリア等で組織化して、自主的な活動を展開できるように支援することとしました。県警察との一体的な取り組みや県民運動の推進等を図るため、知事部局の体制も整備します。
商店街における防犯カメラの設置をはじめ、三宮地区では緊急通報機能を有する防犯灯も整備して、街頭犯罪の防止に努めます。
鳥インフルエンザの発生もあり、食の安全・安心への関心が高まっています。生産履歴や安全性を確認して、県民が信頼できる県産食品を認証する制度を創設するとともに、より厳しい残留農薬等の基準を設けた本県独自の安心ブランド農産物の生産を拡大します。さらには食品の履歴情報開示制度(トレーサビリティシステム)を拡充して、県産牛肉に加えて農産物への導入も進めるほか、公募によるモニターの配置、鶏卵選別包装・液卵製造施設への兵庫県版HACCP認定制度の導入など、食品の監視体制の強化にも努めます。
次に、保健・医療・福祉対策の拡充です。
子どもたちを健やかに育み、元気な高齢者が活躍する社会を実現していくため、「少子・高齢社会ビジョン」 (仮称)を策定して、保健や医療、福祉など各分野において取り組むべき具体的方策を明らかにします。
生涯を通じた健康づくりを支援するため、「まちの保健室」を全県に広げるとともに、市町と一体になって、運動や生活習慣の指導改善も行い、スポーツによる突然死を防ぐAED(自動体外式除細動器)を県下に配備するほか、高校生を対象に、エイズ予防や喫煙防止などの健康教育を実施します。
また、食は健康の基本であることから、「ごはん」「大豆」「減塩」に焦点をあて、健康食生活メニューの普及を支援する、ひょうご“食の健康”運動を引き続き展開します。地域農産物や米粉パンの導入、学校給食における地産地消の推進、望ましい食習慣を身につける「食育」にも取り組みます。
救急医療の充実のため、県災害医療センターを拠点に県・神戸市が連携して防災ヘリを活用する兵庫型ドクターヘリの運用を始めます。
小児の救急医療相談について、神戸・東播磨地域、淡路地域の窓口に加えて、全県下で医師や看護師が電話相談に応じる体制を整備し、小児科救急対応病院の輪番制を強化するほか、不妊専門相談の拡充や、不妊治療にかかる経済的負担の軽減も図ることとしました。
県立病院におけるがん等生活習慣病医療のあり方の検討を進めるとともに、こども病院アレルギー科や成人病センター形成外科の設置など、診療機能の充実を図るほか、粒子線医療センターで炭素線治療を開始し、全国で初めて陽子線との併用治療を行います。
本年4月には、大震災の経験と教訓を生かし、トラウマやPTSD(心的外傷後ストレス障害)などに関する研究や研修等を行う全国初の施設として「兵庫県こころのケアセンター」(仮称)を開設します。
SARS対策についても、医療従事者等への研修や正しい知識の普及啓発に万全を期します。
高齢者福祉では、介護保険サービスの質的向上を図るため、第三者評価を本格的に行い、地域で支え合う介護予防のモデル事業を実施するほか、但馬長寿の郷では、新たに地域ケアチームによる介護予防プラン等の作成指導を実施します。また、高齢者虐待の実態調査を行い、相談機能の充実等を図ります。
障害者のニーズの変化に対応しつつ自立を支援するため、障害者福祉プランを改定するとともに、ホームヘルプサービスをはじめとする居宅サービスの充実など、障害者にかかる支援費制度の円滑な実施に努めます。西播磨における総合リハビリテーションセンターブランチの整備を引き続き進め、知的障害者の独立した生活の支援や西播磨養護学校の整備にも取り組みます。
そのほか、無年金外国籍の高齢者、障害者に対する福祉給付金の拡充や、民間社会福祉施設のサービス向上への支援制度も創設します。

未来への期待

第二の柱は、「未来への期待」です。
新しい世紀を担う人づくりや新技術の創造は、明日を拓く基盤です。そのため、兵庫らしい教育の推進とともに、科学技術の振興に積極的に取り組みます。
まず、兵庫らしい教育の推進です。
豊かな人間性や社会への対応力などを培う体験教育について、中学校の「トライやる・ウィーク」を、県立学校に準じ、新たに市立盲・養護学校で実施するほか、小学校の「自然学校」や高校の「クリエイティブ21」を引き続き行います。
地域の教育力の向上では、PTCA活動や「いきいき学校」応援事業等を引き続き展開するとともに、地域の人々に授業や行事の様子を公開する「オープンスクール」を県下全域で推進するなど学校教育への県民の関心を高めます。
心の教育を推進するため、中学校のスクールカウンセラーや高校のキャンパスカウンセラーを拡充し、不登校の未然防止や早期発見を図る相談員も配置します。
また、学習障害(LD)等のための相談室を開設して、保護者からの電話相談や面談等に対応するとともに、幼児期からの総合的な支援のあり方も検討します。
地域の民話や偉人伝等を通じて道徳や生活のきまりを学ぶ教材を作成し、担当教員の研修を行うなど、道徳教育の充実に意を用います。
児童生徒が基礎・基本を身につけ、個性や創造性を伸ばしていくため、小・中学校における新学習システムを推進し、複数担任制の導入や教科別の少人数授業の充実などを図るとともに、市町が希望する場合には小学校1年生の35人学級編制に研究指定として取り組めることとするほか、総合的な基礎学力調査も実施します。
高校教育では、特色選抜の実施や国語力向上のための取り組みのほか、文化・芸術活動の支援や地域の伝統文化等を生かした学習も進めます。
教職員の資質や指導力の向上については、在職10年経験者の研修を実施するとともに、新任教頭等の学校経営研修を行うほか、指導力向上が必要な教員に対する長期研修を新たに行うこととしました。
兵庫県立大学がいよいよ本年4月に開学します。現行3大学の伝統と実績を踏まえ、深い専門性を生かし、かつ、総合化することにより、21世紀を担う人材養成と地域や国際社会への貢献をめざします。そのため、情報系大学院をはじめ、企業との共同研究等を担う「産学連携センター」(仮称)や地域社会との交流連携の窓口となる「生涯学習交流センター」(仮称)、地域保健を進める「地域ケア開発研究所」(仮称)の整備運営を進めます。
次に、新たな産業力を創る科学技術の振興です。
大型放射光施設スプリング8を活用した光科学技術の産業化を推進するため、新分野の研究に対応できる新たな県ビームラインを設置するとともに、産学官の共同研究の推進等を通じて、播磨科学公園都市にナノ材料に関する研究開発拠点を形成し、先端分野の研究者や技術者の定着を図り、企業立地の促進にも生かします。
ひょうごIT新戦略の展開では、まず、コミュニティの情報化を図るため、健康や医療をはじめ、県民の暮らしの質を高めるITの先進的活用を進めます。携帯電話が通じない地区の解消をめざすとともに、兵庫情報ハイウェイの近隣府県との相互接続を広げます。
産業の情報化では、教育や科学分野を中心とした知的コンテンツ産業の振興や中小企業のIT化を支援し、地域産業と情報産業との出会いの場づくりも進めます。
一方、自治体の情報化では、市町との連携による電子申請の共同運営システムの構築や申請・入札等の行政手続きの電子化、住民基本台帳ネットワークシステムの利用拡大などに取り組みます。
また、小中高校等におけるひょうごe-スクール構想を推進し、校内LANを地元ボランティアが応援して整備するネットデイへの支援を行うなど、IT教育の充実に取り組みます。また、世界トップレベルの情報教育・研究ノウハウを持つカーネギーメロン大学日本校の誘致をめざすほか、情報漏えいの未然防止などの情報セキュリティ確保に向けた取り組みも進めます。
西はりま天文台に整備中の2メートル大型望遠鏡も据え付け作業を近く終え、子どもたちに夢とロマンを与えてくれることを期待しています。

共生社会へ前進

重点施策の第三の柱は、「共生社会へ前進」です。
子どもや家庭をめぐる様々な事件が頻発し、地域の連帯感も失われるなか、豊かな人間関係の回復をはじめ、温かい思いやりや多文化への理解など地域の環を通じて、人と人、人と自然の共生を確立していくことが不可欠です。このため、家庭と地域の再構築、ユニバーサル社会の実現、自然との共生に力を注ぎます。
まず、家庭と地域の再構築です。
子育て家庭を地域ぐるみで応援するため、県民、地域団体等が一体となった取り組みとして、「まちの子育て」地域協働プロジェクトを推進します。
全県的に、地域女性団体ネットワーク会議のメンバーが自治会等と連携しながら展開する「子育て家庭応援運動」や地域のおじさんやおばさんが子どもたちに声かけを行って見守る「ひょうごハート・ブリッジ運動」を支援していきます。また、「まちの子育て」「子どもの冒険」「若者ゆうゆう」の三つの広場事業を拡充するとともに、親子参加型の合宿事業も実施します。
安心して子どもを生み育てられる環境を整えるため、子ども未来プランの改定を行います。ファミリーサポートセンター事業や子育てゆとり創造センターへの支援も拡充するとともに、私立幼稚園における長時間の預かり保育の支援や待機児童解消に向けた保育所の創設等も進めます。
最近、家庭における家族の結びつきが落ちてきています。また、地域と家庭とのつながりも少なくなってきています。それだけに、地域において「SOSキャッチ地域支援システム」を構築し、親や子が発する子育て不安、虐待、引きこもり、問題行動などのSOSサインを地域で見逃さずに受け止め、市町の関係機関や県の専門機関に確実につなぎ、対応力を備えます。
児童虐待の防止や適切な対応を図るため、関係機関のネットワークを強化し、こどもセンター等における専門相談体制を充実するほか、保護入所児童の家庭復帰をめざして、個別状況に即した親等への指導の強化を図ります。
そのほか、企業トップセミナー等を通じて仕事と家庭の両立を支える環境を整備するとともに、男女共同参画社会づくりへ県自ら率先して行動し、事業者との協定の締結や推進員の設置など、引き続き積極的な取り組みを進めます。
また、法人県民税の超過課税を活用したCSR事業については、これまで主として、勤労者等のリフレッシュのための余暇活動を展開するために、日常生活の場を離れて利用する自然活用型施設や文化施設、スポーツ施設の整備を行ってきました。そして、人々の生活の広がりとともに、地域や生活の場でのCSR活動の必要性が増し、身近な活動の場づくりとスポーツを通じた交流を行う「スポーツクラブ21ひょうご」を推進してきました。
今度、この措置を延長し、さらに地域や生活の場における県民の交流を広げ、多彩な実践活動や学習活動などが行える、県民交流広場づくりを進めることとしました。新年度は、それぞれの地域にふさわしい施設の活用や活動展開のあり方等について幅広く検討し、各県民局ごとに地域提案型のモデル事業を実施して、平成17年度以降の本格実施につなげます。
一方で、生涯学習機関や団体と連携した「ひょうごインターキャンパス」等により、県民への情報提供を充実するとともに、地域の高齢者の学ぶ意欲に応え、新たに2年制の地域活動実践講座を実施します。但馬文教府や各文化会館を改修して県民の生活創造活動の場を充実するほか、嬉野台生涯教育センターに情報プラザを新設し、コーディネーターによる活動交流の支援も行います。
また、県民交流の船を活用して、青年洋上大学にあわせて近隣県に住む青年が参加する「ふるさと青年洋上大学」(仮称)を開設し、交流の輪を広げます。
次に、ユニバーサル社会の実現です。
年齢や障害を超えすべての人々が安心して暮らしていけるよう、ハードとソフトの方策や手順を示す総合指針を策定します。
また、鉄道駅舎へのエレベーター設置をはじめ、歩道の段差解消や中小企業者が行うバリアフリー化改修の支援とともに、高齢者や障害者に配慮して、住宅改造助成やまちの情報提供も進めます。「あんしん歩行エリア」の拡充など、高齢者の交通安全対策にも取り組みます。
障害のある方への声かけ運動を引き続き展開するとともに、「聴覚障害者情報センター」(仮称)を整備します。全国障害者スポーツ大会に向けたボランティアの養成や全国障害者芸術・文化祭を開催するとともに、障害者スポーツの中核拠点となる体育館を整備します。
障害者の雇用と就業支援では、生活支援等の機能も果たす障害者専門の職業紹介や職場適応援助者の養成に取り組むほか、インターネット通販ショップの開設等による授産製品の販路拡大を行い、障害者のしごと開拓を進めます。障害者就業・生活支援センターの整備や知的障害者の短期研修生の受け入れに取り組みます。
異なる文化への理解を深め、多文化が共生する社会の実現をめざして、兵庫国際新戦略に基づき、留学生の受け入れ態勢や相談事業の充実など外国人県民安全・安心ネットの推進を図るとともに、外国人児童に対する日本語指導ボランティアの養成などに取り組みます。
人と自然との共生は地球環境確保の基本です。
地球の環境は生態系の複雑かつ微妙なバランスのなかで成り立っています。森・川・海をフィールドにした体験・交流型学習の推進をはじめ、海の環境をじかに学ぶ拠点施設の構想検討や森林体験活動を行う「教育のもり」の整備など、体験型の環境教育に取り組みます。
先導的な取り組みを進める学校を「グリーンスクール」として認証するとともに、専門的な知識・経験を備えた指導者を養成していきます。環境学習器材の貸し出しや実践活動の発表の場となる環境学習フォーラムを実施するなど、地域の特色を生かした仕組みづくりにも努めます。
自然環境の再生をめざし、平成17年度から始まる試験放鳥に向け、コウノトリの郷公園での野生馴化訓練を本格的に実施します。また、環境整備として、えさ場を備えた放鳥拠点の整備、転作田のビオトープ化や市民参加による営巣里山林の再生など、コウノトリと共生する地域づくりを進めます。
さらに、来年3月からの愛知万博にも出展し、兵庫からのメッセージを、復興10年の感謝の思いとあわせて、全世界に伝えていきます。
人と野生動物、森との共生をめざすワイルドライフ・マネジメントの研究施設として「森林・野生動物保護管理研究センター」(仮称)の整備を進めます。近年、農作物被害等の問題が生じているサルの生息動態調査を実施するほか、野生動物被害を未然に防ぐ出没対策も進めます。
21世紀から22世紀への夢をかけて、失われた自然環境を回復し、森と水と人が共生するまちづくりをめざす「尼崎21世紀の森」では、参画と協働による森づくりの行動計画を策定するほか、PFI手法を導入したスポーツ健康増進施設等の建設など中央緑地の整備、自転車道の整備をはじめ環境にやさしい交通システムの検討も行います。
このほか、「上山高原エコミュージアム」(仮称)、「エコキャンパス・しそうの森」(仮称)の整備をはじめ、いなみ野ため池ミュージアムや、自然保護センターの機能強化等六甲山の活性化など、多様な主体の参画による地域づくりを積極的に進めます。
なお、菜の花を通じて循環型社会の構築をめざす全国菜の花サミットが、環境立島淡路で開催されます。

新しいふるさとづくり

第四の柱は、「新しいふるさとづくり」です。
県民誰もがどこでも、豊かで充実した生活を送ることのできる県土空間づくりを進めていかなければなりません。このため、個性と魅力ある地域や、快適な生活環境づくり、交流基盤づくりが必要です。
まず、個性と魅力ある地域環境づくりの推進です。
花と緑の美しい県土づくりを全県で進め、花いっぱい運動をはじめ、まちの中心の河川や道路沿いにおける水辺空間や広場づくりなども進めます。
農山漁村の「美しいむらづくり」として、多様な景観の保全や地域資源の活用をめざす住民の主体的な取り組みを支援するため、基本指針を策定し、アドバイザーの登録・派遣制度も設けます。
適正な土地利用を促進するため、緑条例の全県適用への取り組みを進めるとともに、阪神地域においては、集客施設等の適正立地を誘導するため、市町が策定する土地利用計画への支援も進めます。
また、潮芦屋では民間のノウハウを生かしたマリーナを開業し、住宅分譲を進めるとともに、明舞団地では、モデル的に、住民と一体となった住宅の再生を促進するほか、緑豊かな環境のもとで高齢者の新しい住まい方を提案する「小野長寿の郷」(仮称)構想の検討も進めます。
次に、快適な生活環境づくりです。
ディーゼル自動車等の運行規制を本年10月から実施するにあたり、各種支援制度を活用した適合車への買い替え等を促進するとともに、車両監視の体制を整えるほか、広く普及啓発に努めます。
廃棄物の不適正処理を未然に防止するため、夜間・休日のパトロールを実施し、ボランティアの協力も得ながら、通報体制の強化も図ります。また、廃棄物のリサイクルを促進するひょうごエコタウン構想を推進するほか、缶やペットボトルなどの自動回収装置のモデル的な設置を支援します。
そのほか、家畜ふん尿による環境問題についても、共同処理施設への支援に加え、簡易処理施設の普及を図ります。
地球温暖化防止対策では、屋上緑化をはじめ、間伐材等を活用したバイオマスエネルギーの利用促進など森のゼロエミッション構想を推進し、工場等に義務づけられた温室効果ガス排出抑制計画の作成指導に取り組むほか、省エネルギー対策や新エネルギー技術などが学べる「エコハウス」の整備も進めます。
一方で、県自ら、県立施設での計画的な太陽光発電の導入や省エネルギー化の改修のほか、生ゴミのたい肥化等にも取り組みます。
続いて、農林水産業の新たな展開です。
食糧法の改正により、米政策が、従来の国による減反面積の配分から、生産目標量を農協などが自主調整する仕組みに移行することとなるので、円滑な調整に向けた助言・指導を行うとともに、米以外の作物への転換など、産地づくりの取り組みなどを支援します。
また、食の健康運動とも連携した大豆の生産・供給体制を整備し、各地の安全・安心で特色ある農畜水産物及び加工食品のブランド化を進めるほか、女性グループによる地元農産物の加工品開発への支援や、直売所の整備促進など、県内産地と県内市場とを結ぶ地産地消の流通体制の構築にも取り組みます。
但馬牛の飼育規模拡大の支援、漁場における藻場の造成や景観園芸産業の市場拡大の支援にも努めます。また、ガーデンビレッジ構想やウッディタウン構想の先行事業として、展示や相談事業を行います。
森林の保全・育成については、森林管理100%作戦やボランティア育成1万人作戦など、県民総参加の「新ひょうごの森づくり」を引き続き推進します。県民の環境保全活動と連動した里山林の整備促進や、森に親しむ場を提供する「市民森林」制度を創設するほか、緑の公共事業等も活用して、緑の担い手育成のための研修制度の充実を図ります。
さらに、県産材の活用など、公立施設の木造・木質化を推進するとともに、「県産木造住宅10倍増作戦」を展開し、新たに住宅産業界等とも連携した内装木質化の普及を進めることとしました。
次に、県土の基盤と交流の促進についてです。
「つくる」から「つかう」プログラムに基づき、すれ違い困難区間の解消をめざす「くらしの道」緊急整備事業や渋滞交差点の解消などを引き続き推進するとともに、北近畿豊岡自動車道の整備促進、大阪湾岸道路西伸部や第二名神高速道路等の事業化への取り組みを進めます。
大型車の迂回交通対策として、本州四国連絡道路での料金割引実験の実施に向けて取り組むとともに、阪神高速湾岸線における環境ロードプライシングの結果を検証しながら、国道43号等の沿道環境改善に、より効果的な新たな社会実験の実施を関係機関に要請します。また、播但連絡道路では、昨年行った実験結果も踏まえ、国道312号の渋滞緩和に向けた料金のあり方を検討します。
鉄道については、JR加古川線の電化事業の完成を促進するほか、余部鉄橋の定時確保に向けた検討に引き続き取り組みます。また、JR姫新線をモデルとして、利用者増につながる増便や列車ダイヤの改善とパーク・アンド・ライド駐車場の整備等を組み合わせた計画を市町とともに策定し、高速化についても検討します。
連続立体交差事業では、JR山陽本線等姫路駅周辺の高架本体及び駅舎、山陽電鉄の移設工事の早期完成に向けて重点的に取り組みます。
県民の交通手段を維持確保するため、神戸電鉄が実施する安全性確保のための線路強化等に対して支援するとともに、市町のコミュニティバスの運行についても新たに支援制度を創設します。
港湾については、姫路港広畑地区の公共ふ頭にクレーンを設置し、物流機能を強化します。また、神戸空港について、平成17年度の開港に向け着実な整備が進められるよう神戸市等とも連携した取り組みを進めます。
続いて、交流の促進です。
農に親しむ「楽農生活」を広げるため、NPOとも連携しながら市民農園の整備や普及を進めます。趣味や生きがいから本格的な就農をめざす人まで、それぞれに応じて基礎から高度な技術も習得できる楽農学校を神戸市西区において開講します。
都市と農山漁村の交流では、農家民宿などの施設整備を支援するほか、都市と農山漁村の双方向の交流を促進する「消費地探訪バス」や「わが町PRバス」の運行を支援します。
また、ツーリズムバスを拡充するとともに、兵庫の優れたものづくり産業を生かしたツーリズムの推進に向け、工場等の見学者の受け入れを促進する助成制度を創設します。
あわせて、ツーリズム関連業界と連携し、旅行者の接遇の向上に取り組む「ハートフル月間」(仮称)の設定や研修事業を実施します。
そのほか、交流10周年を迎える欧州との文化・経済交流を進めるとともに、日本語を学ぶ外国人青年の来日を促す「ジャパンリターンプログラム」を支援するなど、多彩な国際交流を進めます。
芸術文化・スポーツの振興については、関西元気文化圏構想、芸術文化振興ビジョンの推進を図るとともに、平成17年秋の開館に向けて「芸術文化センター」(仮称)の整備が進むなか、大晦日のガラコンサートをはじめとしたひょうごオリジナル音楽公演の開催、ひょうご舞台芸術の上演など先行事業を展開するほか、付属交響楽団の設立に向け楽員の選考も進めます。
県立美術館では、「東山魁夷展」や「国際絵画コンペティション」などを開催するとともに、「ネットミュージアム兵庫文学館」で但馬や淡路にゆかりのある作品を取り上げます。開館20年を迎える県立歴史博物館でも、インターネットを通じて歴史情報の発信を行うウェブ分館を整備するなど新たな取り組みを進めます。
また、「県立陶芸館」(仮称)については、丹波立杭の郷との連携も検討しつつ、平成17年秋の開館に向けた整備を進めます。「県立考古博物館」(仮称)は実施設計に着手し、それぞれ所蔵品展等の先行事業を拡充して実施します。
「のじぎく兵庫国体」の平成18年開催に向け、本県の競技力向上を図るなどの準備を進めるとともに、マスコット「はばタン」を活用した積極的な広報や募金活動等を通じて、開催気運の一層の醸成を図ります。
また、震災復興のアピールも込め、「神戸女子ハーフマラソン大会」や、「第15回世界少年野球大会兵庫大会」を開催するほか、「県立武道館」での「日本古武道演武大会」や、神戸での「世界ジュニア卓球選手権大会」の誘致も進めます。

参画と協働の推進

重点施策の第五の柱は、「参画と協働の推進」です。
「21世紀兵庫長期ビジョン」については、県民の皆さんとともに、本格的な策定作業を始めてから、早や5年が経過しようとしています。また、「地域ビジョン推進プログラム」及び「全県ビジョン推進方策」も、平成17年度までの期間が折り返しを迎えています。
このため、2カ年かけて本格的な評価・検証を行うこととし、地域ビジョン委員会における実践的な取り組みにあわせ、広く県民の皆さんに参加していただく地域夢会議を段階的に開催します。長期ビジョン推進委員会では、若い世代の参加に意を用いながら、全県的な論議を深めます。
参画協働条例による、「地域づくり活動支援指針」と「参画・協働推進計画」の具体的な展開を行います。
地域団体のパワーアップを図るため、新たに市町域を超える広域的活動を支援します。また、NPOの活躍に期待しつつ、各県民局に「地域づくり活動サポーター」を配置して、参画と協働の実践活動をつなぎ広げていくほか、様々な事例やノウハウ等を白書としてまとめます。
昨年、交流のスペースや機能を拡充した「ひょうごボランタリープラザ」において、NPO大学事業やボランタリー活動メッセの開催、ボランタリー基金を活用した助成などにより、団体・NPO等の活動基盤の強化やネットワークづくりを応援していきます。
広報活動について、県民参画の新たな評価システムをつくるとともに、多様なチャンネルを通じて、より一層コミュニケーションを深め、県民との情報共有を促進します。

行財政構造改革の推進

最後は、行財政構造改革の推進です。
平成12年2月に策定した「行財政構造改革推進方策」に基づき、これまで、行財政の全般にわたる改革を進めてきました。しかしながら、経済情勢を反映して、県税収入が大幅に減少しており、国の三位一体改革への取り組みや市町合併への本格的な取り組みの進展などを背景として、新たな視点から対応すべき課題が生じています。
このため、現行推進方策の総点検を行い、議会特別委員会での審議や有識者等で構成する委員会、パブリックコメントによる県民の意見などを踏まえ、このほど「行財政構造改革推進方策後期5カ年の取組み」を策定しました。
しかし、今後の税収の動向や地方交付税の見直しなど三位一体改革の内容によっては、さらなる厳しさも予想されますが、現時点では明らかではありません。したがって、この枠組みを当面は基本とした行財政運営に取り組みます。
新年度の本県財政は、税収の減少に一定の歯止めがかかるものの、地方財政計画の規模抑制等により、地方交付税と臨時財政対策債の合計で500億円以上減少するなど、極めて厳しいものとなることが見込まれます。
このため、予算編成にあたっては、スクラップアンドビルドの徹底と限られた財源の重点配分に取り組みましたが、可能な限りの財源対策を講じても、なお生じる収支不足に対応するため、臨時的に退職手当債の発行と企業会計からの借り入れを行う結果となりました。
組織の見直しでは、県民局のあり方を企画立案・総合調整機能等を担う圏域事務所と、県民に身近で現地性の強い業務を所掌する地域事務所に再編することとし、平成17年度からの実施に向け必要な準備や県民への周知を図ります。
定員・給与については、適正かつ効率的な定員配置にさらに努める一方、特別職給与の減額措置を継続し、新たに期末手当を減額するとともに、一般職の管理職手当についてもさらなる減額を行うほか、費用弁償の観点から旅費を見直します。
公共事業等の投資補助事業については、国の公共事業関係費の抑制基調を勘案して、本県所要額を計上しました。また、投資単独事業については、地方財政計画の地方単独事業の大幅な抑制にも対応しつつ、県有施設の耐震化や合併支援県道整備事業など、県民生活に密着した社会資本整備に必要な事業量を確保しました。このほか、推進方策の総点検を踏まえて、事務事業の徹底的な見直しや重点化・効率化を図り、健康センターなど四つの公的施設の市町等への移譲や公社等の見直しを進めます。
使用料については、現在の利用率が低い県民施設につき大幅な引き下げを行い、利用促進を図ることとしました。
自主財源の大宗を占める県税収入の確保をめざさなければなりません。
より効率的、効果的な税収確保対策を実施します。なお、森林保全のための税についても、引き続き検討を進めます。
三位一体の改革については、税源移譲への道筋がつけられましたが、地方交付税の大幅な減額など、あまりにも国の都合が優先している感が否めません。しかも、法令等による一方的な地方事務の義務づけ等が廃止されていないなど、解決すべき課題が多く残されています。このため、国への働きかけとともに、県としても、2カ年にわたる検証事業の成果も踏まえるなかで、自らの内発的な取り組みにつなげます。
県内における市町合併の動きについては、現在、17の法定合併協議会が設置され、新年度に入ると、4月1日の養父市に始まり、丹波市や南あわじ市、淡路市、朝来市など新たな市が誕生する予定です。県としては、新しいまちづくりが円滑に進められるよう、合併支援県道整備事業や自治振興助成事業の拡充、新市町の行財政運営に対する助言など、地域の実情に応じた適切な支援を行います。
なお、平成17年3月までの現合併特例法の期限後の対応については、基礎自治体のあり方は、それぞれの地域の住民の意思が最大限反映されるべきであるとの考え方を基本に、必要な検討を行います。

条例・事件決議

以上の方針のもとに編成した平成16年度の歳入歳出予算は、
  • 一般会計「2兆 938億800万円」
  • 特別会計「1兆1,781億4,500万円余」
  • 公営企業会計歳入「1,479億700万円余」
  • 同歳出「1,859億5,200万円余」です。
次に、条例につきましては、本人確認情報の提供、利用等に関する条例等33件です。
事件決議につきましては、市の配置分合等13件です。
以上で平成16年度の主な県政施策と諸事業の説明を終わります。
議員の皆様には、よろしくご審議のうえ、適切なご議決をいただきますようお願いします。

お問い合わせ

部署名:総務部秘書広報室広報広聴課

電話:078-362-3016

FAX:078-362-3903

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