第274回兵庫県議会の開会にあたり、議員の皆様のご健勝を心からお喜びし、日頃のご精励に敬意を表します。
去る1月17日、被災地を歩き、阪神・淡路大震災を忘れず明日をともに拓いていくとの思いを胸に、「1.17ひょうごメモリアルウォーク2003」が実施されました。「追悼のつどい」では、ご遺族をはじめ、政府代表防災担当大臣や多数のご来賓、多くの県民の皆さんともども、改めて哀悼の意を表し、未来への決意を誓い合いました。
大震災からの復旧・復興に全力をあげるなか、10年後の創造的復興をめざした阪神・淡路震災復興計画の期間もあと2年余りを残すのみとなりました。震災8周年を迎え、私たちは、残された諸課題の解決に全力を注ぐとともに、震災を契機に根づきつつある地域づくりへの自律的な協働の輪を、ともに広げていかなければなりません。
ここに平成15年度の予算を提案するにあたり、県政に取り組む基本的な考え方をご説明します。
県政理念
21世紀の幕開けから早くも2年余が経過しましたが、大転換期のなかで私たちを取り巻く状況はさらに厳しさを増しています。
国際的には、緊迫の度を増しつつあるイラク情勢をはじめ、拉致や核開発問題で揺れる北朝鮮、さらにはテロや民族紛争などを背景として、一層の緊張と危機が懸念されています。国内では、依然として経済の長期低迷からの脱却が見通せないなか、急激な高齢化や少子化が進展する人口減少社会を間近に控えています。
このようなときだからこそ、明日への確かな展望を切り拓いていくことが急務です。困難に直面して立ちすくんでいては、何も解決できません。
その際何より肝要なことは、成長から成熟へという、時代の“終わりと始まり”を明確に認識したうえで、これまでの社会システムや構造そのものを根本から見直し、新しい価値やシステムの創造に向け、積極的な構造改革を進めることではないでしょうか。
振り返れば20世紀のわが国にあっては、効率と集中、画一、標準、量の確保を基本として、人口や経済の成長を支えていく仕組みをつくり、これまでにない発展を遂げてきました。そして、高度経済成長を成し遂げ、物質的な繁栄を享受するに至りました。
しかしながら、その一方で、人と自然、人と人、人と社会の結びつきや絆が希薄化し、その結果、社会として、また人間として、あるべき姿やめざすべき目標などを見失い、他者を温かく思いやる心や社会のなかで果たすべき自らの責務や責任といった社会の根本を支える規範意識が揺らぐなど、成長のひずみともいうべき憂慮すべき状況が見られます。
こうしたなかで、成熟の時代にふさわしい21世紀社会を築いていくためには、選択と分散、多様、個性、質の充実を基本として、生活者の視点に立って、いま一度、自らの生き方、家庭や地域社会のあり方を見直していくことが大切です。
このことは、阪神・淡路大震災の教訓でもあります。私たちは、いまこそ、明日への意欲と行動をもって、ともに力を合わせながら、新しいふるさとづくりを進めていかなければなりません。
そのためには、多様な主体が、その役割と責任を自覚しながら、未来に向かって挑戦していくことが大切です。高い目標をめざして一人ひとりが主体的に努力するなかで、初めてみんなの共感の輪が広がり、自律的な地域づくりの実践に結びついていくと考えます。
県民の参画と協働を基本姿勢に、兵庫の有する可能性を十分に生かしながら、私は、兵庫からわが国の未来を拓き先導するとの気概を持ち、「21世紀兵庫長期ビジョン」を指針として、美しい自然、美しい文化、美しい心のもとで豊かな暮らしを築く、“美しい兵庫”の実現をめざして全力を尽くします。
県政推進の基本
このような決意のもと、新年度の県政は、次の基本により進めたいと考えています。
その第一は、暮らしの安全と安心を確保して、県民生活の安定を図ることです。
震災からの創造的復興の実現に向けて、被災高齢者の生活復興やまちの賑わいづくりなどにきめ細かく対応しつつ、「最終3か年推進プログラム」に基づく対策を重点的に推進します。
厳しい経済・雇用情勢に対応するため、先の平成14年度補正予算による対策とあわせて、15箇月をにらんで、厳しい財政環境下であってもほぼ前年度に見合う投資額を確保し、機動的かつ迅速な執行に努めるなど、県内需要を喚起するとともに、地域課題に対応した機動的なデフレ対策や、兵庫経済の基盤である中小企業の活性化に努めます。
また、安全と安心の原点ともいうべき防災や防犯対策に万全を期することはもとより、健康づくりへの総合的な取り組みを展開するとともに、生涯にわたる保健・福祉・医療対策の拡充を図ります。
第二に、明日に向かう元気と活力を生み出し、未来への期待を確かなものにします。
21世紀の兵庫を担う子どもたちを、健やかにたくましく育むため、家庭とともに地域全体で子育てを支える環境の整備を進めます。
また、学校、家庭、地域の連携のもと、自然や社会での体験教育、地域で支える教育の充実などを進めます。
一方、兵庫が有する多様で多彩な資源を生かしながら、世界最先端の大型放射光施設スプリング8の活用をはじめ先導的な科学技術の産業利用や、21世紀の成長産業の創出に努めるとともに、内外からの企業立地の促進や県下各地の構造改革特区の実現をめざします。
第三は、そこに住む人々が充実した生活を営むことができる新しいふるさとをつくることです。
日本海から太平洋に至る素晴らしい自然や豊かな歴史文化のもと、県下各地域の個性と魅力を最大限に生かしながら、県民の交流と連携を支える県土空間をつくります。
特に、失われた自然の再生をはじめ、環境と調和した循環型社会づくりや自然産業としての農林水産業の振興に意欲的に取り組み、人と自然の共生を基本とした新しいライフスタイルの創造をめざします。
また、地域への愛着や誇りを育む伝統や文化の再発見に意を用いながら、兵庫の県民文化を創造していきます。
第四は、県民の参画と協働を推進して、県民の自律的活動を基本に、県政とのパートナーシップを確立します。
県民自らが地域の夢を描き、その実現に取り組む「21世紀兵庫長期ビジョン」の策定と推進を通じて、様々な協働の取り組みが県下各地で着実に芽生え広がりつつあります。
今後とも、各地域の将来像の実現に向けて、県民運動の展開ともあわせ、人と人、地域と地域をつなぐ実践活動を広げ、ネットワーク化を図ります。
こうした取り組みのもと、「県民の参画と協働の推進に関する条例」に基づき、地域社会の共同利益の実現をめざす県民の地域づくり活動を積極的に支援するとともに、県行政に対する県民の参画と協働を体系的かつ計画的に進めます。
このような基本方針のもとに進める新年度の主な重点政策についてご説明します。
県民生活の安定
「県民生活の安定」では、まず、阪神・淡路大震災からの復興です。
震災後8周年を迎えましたが、残された課題は、被災高齢者を地域で温かく見守るとともに、復興都市計画が進むまちの賑わいを早期に回復することです。
このため、生活援助員(LSA)、高齢世帯生活援助員(SCS)等によるきめ細かな見守りをはじめ、地域ぐるみの温かい包み込み活動とともに、夜間・休日の「安心ほっとダイヤル」の開設、「まちの保健室」キャラバン隊の訪問、電話による相談や安否の確認などにより、孤立しがちな高齢者の生活復興を進めます。
都市の面的な復興整備を急ぐため、再開発ビルへの商業施設等の入居や土地区画整理事業地区における土地利用を促進するほか、空き地の活用促進を図ります。
大震災の教訓の継承・発信として、神戸東部新都心において、震災に学んだ「いのちの尊さと共に生きることの素晴らしさ」をテーマに、「ひと未来館」がオープンします。「防災未来館」と一体になったセンターとして、人材育成などを通じて国内外における災害被害の軽減に貢献していきます。
さらに、国際防災と人道支援の拠点づくりに向けて、国連人道問題調整事務所など関係機関とも連携を図りながら、国の懇談会の報告を踏まえた国際平和活動に関する人材育成機能の誘致をめざします。
住宅再建制度については、引き続き、相互扶助の共済と公的支援を組み合わせた全国的な仕組みづくりをめざす一方、制度化のための突破口を探るため、本県独自の実現可能性を検討することとし、専門家等による調査会を設置します。
このほか、震災10周年を迎える平成17年を節目とした記念事業の開催について積極的な検討に着手することとし、国連防災世界会議の誘致をはじめ、県立美術館での国際絵画公募展、平成18年の「のじぎく兵庫国体」の準備なども進めます。
次に、現下の厳しい経済・雇用情勢を踏まえた「ひょうご経済・雇用再活性化プログラム」の充実による、しごと・雇用の創出です。
今日の緊急事態においては、経済・雇用のセーフティーネットが不可欠です。
緊急雇用創出事業を拡充して、新たに里山の管理を緑の公共事業として実施するとともに、環境、福祉、保育など様々な分野の雇用・就業機会の創出に努めます。失業者への融資制度も、子弟の就学継続に配慮して拡充します。
また、雇用のミスマッチの解消をめざし、関係の団体や機関等が連携して、新たに「兵庫しごとカレッジ」をスタートさせ、企業ニーズに対応した能力開発プログラムを求職者に提供するとともに、その受講者を支援して就職を促します。
一方、若年者の就職対策では、インターンシップなど大学生等への支援とともに、就職希望の高校生に対しては、職業意識の醸成をはじめ個別相談等も早い段階で実施し、目的意識を高め、就職につなげます。
このほか、労使の関係団体との連携によるワークシェアリングの導入促進や、コミュニティ・ビジネスの支援など、多様な働き方の創出をめざします。
中小企業向けの金融対策では、特別経営資金貸付の限度額の引き上げとその延長、小規模無担保貸付にかかる限度額の引き上げを図るほか、既存債務の借換えを支援する資金繰り融資や金融機関の再編等に伴う貸付減少に対応する融資などを通じて、資金調達の円滑化に意を用います。
また、地域産業の元気回復と新たな活力創造を応援しなければなりません。
中小企業支援体制の強化を図るため、「県中小企業振興公社」を「ひょうご中小企業活性化センター」(仮称)に改め、実務経験豊かでアイデアと行動力を持った総括コーディネーターの配置なども行いながら、専門的な助言や相談を充実します。
創業や新分野進出を果たした中小企業のさらなる事業展開を支援する融資制度を創設するなど、ビジネスの展開に応じた資金調達を支えます。
商店街・小売市場対策では、活性化をめざすプランづくりやまちづくりのための支援を拡充するとともに、空き店舗の活用の促進や大型店閉鎖後の商店街における集客イベントの支援なども行います。
「県民生活の安定」の最後は、県民の暮らしの基盤となる安全・安心な社会づくりです。
防災・防犯体制の充実として、今世紀前半にも予想される南海地震の発生に備え、具体的な対応プログラムを作成するなど対策強化を図る一方、防災の人材育成を担う「三木震災記念公園」(仮称)について、引き続き消防学校等の供用開始に向けた整備を進めます。
また、これまでの耐震診断事業の結果を踏まえて、住宅の耐震改修の設計費とあわせ工事費についても利子補給に相当する補助制度を創設し、その促進を図るほか、県有施設も平成16年度までに診断を終え、順次耐震化を進めていきます。
警察活動では、パトカーを24時間運用して初動対応にあたる「フロントライン・パトロール隊」を拡充するとともに、地域の安全確保のため警察官を増員し、不在交番の解消をめざして相談員も拡充します。あわせて、街頭犯罪等に関する総合対策本部の活動などを通じて、現場対応力の強化に努めます。
次に、食の健康の推進と安全・安心の確保です。
長寿社会を迎えて、県民だれもの健康生活づくりを支援するため、「ごはんを食べよう」「大豆を食べよう」「減塩しよう」を柱として、新たに「ひょうご“食の健康”運動」を展開します。健康ひょうご21県民運動を進めるなかで、様々なキャンペーンや実践活動を行い、子どもから大人まで生涯にわたる健康な食生活の普及を図るほか、正しい食習慣や食文化の伝統などを実践しながら学ぶ「食育」も進めます。
また、県民の不安解消のため、相談や食品表示監視の徹底を図るとともに、ひょうごの「食」ブランドの認証や県独自のHACCP認定制度の拡充等を通じて、消費者に信頼される食品づくりを支援します。
そして、保健・福祉・医療対策の充実を図ります。
高齢者福祉では、第2期の事業運営期間を迎える介護保険制度について、地域の実情に応じた円滑な運営に努めるとともに、第三者による施設評価の導入や人材の資質向上を図ります。あわせて、特別養護老人ホーム等の計画的な整備を進める一方、在宅介護サービスの利用を促進します。
支援費制度が始まる障害者福祉では、障害者が自らの生き方に応じて選べる福祉への転換に伴い、事業主体となる市町を支援するため、ケアマネジメント従事者の研修をはじめ、事業者や利用者を含む圏域ネットワークの整備などに取り組みます。あわせて、「“すこやかひょうご”障害者福祉プラン」の改定に着手します。
また、リハビリニーズの高まりに対応するための総合リハビリテーションセンターのブランチや、障害者の通学の利便に配慮した西播磨地域の養護学校を、播磨科学公園都市において整備するとともに、トラウマやPTSD等に関する研究・研修の全国的な拠点となる「こころのケア研究・研修センター」(仮称)の開設準備も進めます。
あわせて、園芸療法の普及を図るため、淡路景観園芸学校において、新たに県内外の福祉・医療施設での実習を行うとともに、国際標準となる資格制度の確立に向けたサミットの開催準備も進めます。
障害者の社会参加を促進するため、ユニバーサルプログラムのもと総合的な取り組みを進めます。
企業と連携して小規模作業所等の受注先や販路を開拓するなど、福祉就労の枠を越えた働く場づくりを進めるほか、障害者の一般企業への就業についても、求人開拓から就職・職場定着までワンストップで支援します。
いつでもどこでもできる「障害のある方への声かけ運動」を提唱し、だれもが必要な手助けを心がけるよう働きかけるとともに、公共交通のバリアフリー化や福祉のまちづくりを引き続き積極的に推進します。
多様化する県民ニーズに応える医療体制を充実する必要があります。小児医療については、県立こども病院の3次救急患者受入れ体制に加えて、淡路及び神戸・東播磨地域をエリアとする救急相談の窓口を設置します。また、県立病院での女性専用外来の開設をめざすとともに、民間病院への普及を促進するための研究を進めます。
また、患者の苦情や相談に迅速に対応する「医療安全相談センター」を開設するほか、増加するアレルギー性疾患について、医師研修の実施などにより、正しい知識の普及と医療機関への最新の治療情報の提供に努めます。
県立病院では、本年4月に一般診療を開始する「県立粒子線医療センター」において、治療が必要な県民が広く受診できるよう、高度先進医療の適用を受けるまでの間治療費を軽減するとともに、保険が適用されないもとでの患者負担対策として無利子の貸付制度を設けることとしました。また、「県災害医療センター」については、神戸赤十字新病院及び県赤十字血液センターとあわせ本年8月に開設いたします。
そのほか、急激に進行する少子化、高齢化に対応し、来るべき人口減少社会を見据えた、より抜本的な政策展開をめざして「少子・高齢社会ビジョン」を策定します。
未来への期待
「未来への期待」こそ明日の兵庫を拓く扉だといえます。
夢と志を持ち、創造性豊かな兵庫をつくる子どもたちを育むため、幼児から青少年までみんなが集う「ひろば」を開設することとしました。すでに昨年から地域ぐるみで取り組んでいる、乳幼児の父母が気軽に集える「まちの子育てひろば」を拡充するとともに、空き地等を活用して、リーダーのもとに自由に遊び創造性を育てる「子どもの冒険ひろば」、NPO等との協働事業として、悩み多い青少年の仲間づくりを支援する「若者ゆうゆう(友・遊)広場」を開設します。
次に、子育て支援体制の拡充のため、「まちの子育てひろば」と相まって活動する、すくすく相談員を民間保育所に配置するほか、子育てサポーターやサークル等による支援ネットワークなどの充実も図ります。また、父親の子育て参加を促進するためのセミナーを開催する一方、老人クラブ等の活動を通じた「祖父母世代の孫育て」も推進します。
児童虐待防止対策では、各市町をはじめ、関係機関や地域団体の参画を得て、予防や発見、援助、見守りのネットワーク化を進めるとともに、こどもセンターの相談体制を充実し、虐待をした親への指導援助も強化します。
不登校対策としては、「但馬やまびこの郷」をセンターとして、県下各地域の適応指導教室とのネットワーク化を図り、新たに、ひきこもり傾向にある児童生徒の家庭に職員や学生ボランティアをモデル的に派遣する事業も展開します。
また、青少年の健全育成対策のため、引き続き「青少年を守り育てる県民スクラム運動」を展開するとともに、迷惑防止条例を改正し、有害チラシの配布規制を行うほか、地域ぐるみで非行防止に取り組むモデル事業を支援します。
次に、新しい兵庫教育の推進です。
すでに、児童・生徒の体験学習として、小学校の「自然学校」、中学校の「トライやる・ウィーク」、高校の「クリエイティブ21」を体系的に進めています。新年度は特に、6年目を迎える「トライやる・ウィーク」について、休日や夏休みのモデル実施をはじめ、活動の内容や場所も含めて一層の充実を図ります。
総合的な学習の時間に地域の教育力を生かすいきいき学校応援事業は、応援団への登録が2万人に近づくなど多くの県民の協働の輪が広がっています。地域の参画をさらに広げるため、芸術、文化、伝統芸能等を学ぶ教室を開催します。
また、身近な資源を教材として子どもたちが理科を楽しく学べる「いきいきサイエンス推進プラン」を進め、環境教育やインターネットを活用した情報教育の推進にも力を注ぎます。
開かれた学校づくりでは、地域教育推進事業の充実や教育事務所ごとの特色ある取り組みの推進、学校評価システムの確立へ向けた研究のほか、学校評議員制度の定着を図ります。
高校教育改革では、中高一貫校の芦屋国際中等教育学校や国際高校の開校、総合学科や国際人間科の設置など、個性化・多様化に向けた取り組みを一層推進します。
なお、教職員の資質向上対策では、児童生徒の問題行動の未然防止や早期発見のためのカウンセリングマインド研修を全教職員に対して実施するほか、在職期間が10年を経過した教職員の指導力向上を図る研修も始めます。
県立大学については、質の高い人材育成や研究活動をめざし、平成16年度の新大学開学に向けて、設置認可申請手続を進めます。また、教育内容や管理運営体制などの具体的な検討を進め、本部や情報系大学院とともに、地域特性を踏まえたケアサービスの実践研究を行う「地域ケア開発研究所」(仮称)の整備を進めます。
本県に集積する国際的な諸機関や大学等の高等教育・研究の機能を生かし、兵庫アジア太平洋大学間交流ネットワーク(HUMAP)の取り組みやITあわじ会議等の国際会議の成果も踏まえて、新たな知的創造のネットワークをめざす「コレージュ・ド・ひょうご」構想を推進します。
「未来への期待」の最後は、21世紀を拓く産業基盤の構築です。
明日をリードする新産業の創出をめざして、初期の研究から実用・事業化に至る各ステージに応じた体系的な支援を行います。
まず、県科学技術会議の提言に基づき、ライフサイエンスやナノテクノロジーなど重点5分野を対象に提案公募型で研究プロジェクトを選定し、実用化開発については、新産業創造プログラム等を活用します。
特に、先進的中小企業等の新分野進出や新製品開発に対して、高付加価値化や新技術開発への助成・貸付を行い、地場産業には新たな補助制度を設けるほか、産学官の連携システムの整備を進めるなど、企画から販路開拓まで柔軟かつ総合的に支援します。
また、大型放射光施設を活用した光科学技術の産業化を推進するため、実験ハッチを拡充するとともに、県ビームラインの増設とニュースバルの活用に向けた検討も行います。
IT戦略として、ブロードバンド100%整備プログラムに基づく県下のインターネット利用環境の整備や、「兵庫情報ハイウェイ」の隣接県との相互接続を行うほか、情報セキュリティ対策を含む新たな取り組みを進めます。ひょうご情報公園都市への企業誘致も活発化を図ります。
一方、構造改革特区については、先端光科学技術や国際経済、自然産業等県内各地域における特区構想の実現をめざして、関係市町や産業界とも一体となって取り組みます。
あわせて、産業集積条例を改正して構造改革特区を位置づけ、本県独自の支援を行うこととし、進出企業に対する不動産取得税等の減免、雇用補助金の限度額を3億円に、立地促進融資の限度額を通常25億円、知事特認50億円と大幅に引き上げ、投資減税や研究開発減税と相まって、内外の企業立地を促進することとしました。
さらに、広東省政府・企業に対する投資促進セミナーの開催や、ワシントン州姉妹提携40周年を契機とした経済ミッションの派遣など、本県への投資促進にも取り組みます。
新しいふるさとづくり
「新しいふるさとづくり」では、まず、自然と調和した循環型社会づくりをめざして、多彩な取り組みを展開します。
廃棄物対策では、安易な不適正処理に結びつきやすい産業廃棄物や使用済自動車等の保管と土砂埋立て等に対し、それぞれ届出と許可を新たに義務づける条例を制定して、その適正処理を担保することとします。あわせて、不法投棄監視サポーターの増員等により監視体制を強化するなど、総合的な対策を進めます。
自動車公害対策では、国道43号をはじめとする道路の環境基準の達成をめざし、低公害車の導入促進対策を充実するとともに、NOx・PM法対策地域へのディーゼル自動車等の流入規制に向けた準備を進めるほか、天然ガス・エコステーションの設置を助成します。
地球温暖化対策では、大規模な事業所に対して温室効果ガス抑制計画の作成等を義務づけることとするほか、県自らの取り組みとして、「環境率先行動計画ステップ2」のもと、太陽光発電施設の計画的な導入や屋上緑化、省エネルギー化のための施設改修を進める一方、ハイブリッド車等の積極的な導入に努めます。
また、「緑豊かな地域環境の形成に関する条例」に基づく環境形成地域を全県下に拡大して、適正な土地利用の確保を図るとともに、緑化活動バンクや全県花いっぱい運動を通じて良好な生活環境の創造をめざします。
このほか、住民参画型の「エコキャンパス・しそうの森」をはじめ、「いなみ野ため池ミュージアム」や「北はりま田園空間博物館」「上山高原エコミュージアム」等のプロジェクトを進めます。
「ひょうごの森・川・海再生プラン」の着実な推進を図ります。
新ひょうごの森づくりでは、「森林管理100%作戦」「里山林の再生」「森林ボランティア育成1万人作戦」を引き続き強力に展開することとし、新年度は特に、「ふるさと育林バンク」の設置により所有者が不在の森林整備を進めるほか、里山林について、緊急地域雇用創出特別交付金を活用するなど積極的な推進を図り、現行計画の3年前倒しによる整備を進めます。
あわせて、個体数管理などを通じて、シカやイノシシ、ツキノワグマなど多様な野生動物との共生をめざすワイルドライフ・マネジメントを推進するとともに、森林の適正な管理手法を研究する「森林・野生動物研究センター」(仮称)の具体化に向けた検討を進めるほか、ヌートリアやヤマビル対策にも取り組みます。
一方、森林の育成と林業等の活性化を図るため、「県立施設木造・木質化20%作戦」や「県産木造住宅10倍増作戦」を展開し、「ひょうごウッディビジネスパーク構想」の一環として「ひょうご木の家モデル住宅」の設置にも取り組みます。
川の再生では、多自然型川づくりを推進するとともに、流域ごとの魚類・植生等の調査を行います。円山川流域では、コウノトリの野生復帰に向けた河川の自然再生に取り組みます。
海の再生では、「瀬戸内なぎさ回廊」づくりや「高砂みなとまちづくり構想」の策定に取り組む一方、海の環境教育の推進プログラムを開発します。
次に、都市住民が自然とのふれあいのなかで食とのかかわりを深める新しいライフスタイルとして、「楽農生活」を創造します。
土に親しみ旬の野菜を味わいたいという県民ニーズに応えるため、「ひょうご県民農園」の整備を進めるとともに、地元農家等の指導のもと親子で参加する農業体験学習を実施し、「兵庫みどり公社」(仮称)による遊休農地の有効活用とあわせ、「市民農園面積倍増作戦」を強力に推進します。
「ガーデンビレッジ構想」については、淡路景観園芸学校のノウハウも生かしながら、ガーデニングフェアや産業交流セミナー等の先行事業を展開します。
このほか、消費者と生産者を結ぶ農産物直売所の設置支援や有用微生物の効果等の実証試験、但馬沖における深層水利用調査を実施するなど、自然産業としての農林水産業の振興に努めます。
そして、兵庫の県民文化の創造です。
県民の創造的活動を振興するためには、多彩な芸術文化活動の基盤づくりが不可欠です。
平成17年の開館に向けて、「芸術文化センター」(仮称)の整備や付属交響楽団の設立準備を進めるとともに、将来性ある子どもたちのオーケストラ演奏などの音楽分野をはじめ、ひょうご舞台芸術の上演その他の先行事業を、ピッコロ劇団創立10周年記念事業とあわせ計画的に実施します。
県立美術館では、「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」などの開催とともに、「ネットミュージアム兵庫文学館」の充実を図ります。また、県内の美術館等との連携により、移動美術館など優れた芸術作品を身近に鑑賞できる機会を提供します。
「県立陶芸館」(仮称)の建設工事や「県立考古博物館」(仮称)の基本計画策定に着手し、所蔵品展や地域文化財展などを実施するほか、暮らしのなかに多彩な芸術文化が息づく豊かな社会を実現するための指針として、新たに「芸術文化振興ビジョン」を策定することとしました。
スポーツの振興では、「スポーツクラブ21ひょうご」の活動拠点について、平成17年度までの県下全小学校区での設置に向けて、全体計画の8割達成をめざすとともに、交流大会やリーダー養成講習会などを実施します。
また、「県立武道館」での全日本ジュニアテコンドー選手権大会など全国規模の大会誘致や「震災復興全日本女子ハーフマラソン大会」の継続開催、国体にあわせた「全国障害者スポーツ大会」の開催準備を進めます。新年度に開園する「県立淡路佐野運動公園」では、全国レベルの少年野球大会が開催されます。
「新しいふるさとづくり」の最後は、交流と共生の基盤づくりです。
魅力あふれる県土空間の創造として、広大な県土の多様な資源を活用し、都市の再生と多自然居住地域の創造により、生活の質を高めるための県土空間を築いていきます。
臨海地域の都市再生を先導する「尼崎21世紀の森」については、拠点地区において緑地整備を進め、PFI手法を活用してプールと健康増進施設の整備に着手する一方、参画と協働の森づくりに向けた行動計画の策定を進めます。
南芦屋浜地区では、まちびらきイベントの開催とともに、シンボルとなるマリーナ・センター施設ゾーンの整備を進めます。
また、既成団地の再生に向けたモデルとして、明石舞子団地のマスタープランを策定するとともに、NPOとの連携による団地内空き店舗を活用した先導事業も実施します。
多自然居住の推進では、モデル的な計画策定や交流拠点施設の整備を支援するパイロット事業を実施するほか、高齢者の新しい住まい方を提案する「小野長寿の郷構想」について、引き続き事業化をめざして健康と交流をテーマに広域施設の基本構想も策定します。
次に、多彩な資源を生かした交流事業の展開です。
水辺や森、まちとむらなどをテーマにした交流と連携の絆を深め、広い県土の魅力と個性を生かす地域づくりにつなげます。
また、NHK大河ドラマ「武蔵」の放映にちなんで、明石公園内に「宮本武蔵伝承の庭」の復元を行うことをはじめ、ゆかりの地を訪れる「武蔵バス」等を隣接県とも共同して実施するなどツーリズムの振興に努めます。
県民交流バスとして、走る県民教室をより多くの県民が利用できるようにするとともに、歴史文化や農林漁業等を体験する交流型ツーリズムを推進するほか、全県的な観光の振興をめざし、キャンペーン活動等を積極的に展開します。
国際交流では、中国・広東省へのプロモーション事業やブラジル戦後移住50周年祭への参画、パラナ州との共同による環境保全のためのシンポジウムの開催などに取り組みます。
交流を支える県土の基盤づくりについては、「つくる」から「つかう」プログラムを拡充して、渋滞交差点やすれ違い困難区間を解消する「くらしの道」の緊急整備などを推進します。また、透水性舗装をはじめ、公共事業による環境への負荷を極力抑制するゼロエミッションインフラの整備など、新たな取り組みも進めます。
道路網の整備では、第二名神高速道路や阪神高速道路湾岸線等の事業化に向けた取り組みを進めるとともに、北近畿豊岡自動車道の整備促進のため遠阪トンネルの改良に着手します。国道312号の渋滞対策として播但連絡道路でのロードプライシングの社会実験も行います。
一方、道路関係四公団民営化の検討が進むなか、本州四国連絡橋公団の債務問題については、国の負担を安易に地方に転嫁しないよう引き続き強く申し入れるとともに、利用しやすい料金への一層の引き下げを働きかけます。このような基本的な立場を明確にしながら、出資の延長を検討していきます。
鉄道網の整備では、在来線の利便性向上に向けた増便・乗り継ぎ改善等の検討や、定時性確保のため余部橋梁の架け替えの調査検討を行うほか、JR加古川線の電化・高速化や阪神尼崎駅等の改良事業等への支援も引き続き実施します。
関西、大阪、神戸の三空港については、関西圏の基幹的な交流基盤として整備していく必要があります。関西空港は、国際空港にふさわしい機能の整備を促進しなくてはなりません。昨年来、大阪空港のあり方が議論されていますが、国民共有の財産として、地元住民と共生するなかで引き続き利用者の利便を図り、国内基幹空港として活用していくべきです。神戸空港の整備も着々と進めていきます。
港湾の整備は、物流体系を強化するため、姫路港での多目的国際ターミナルの整備などを進めます。また、放置艇が社会問題となっている実情にかんがみ、適正な水域利用促進のため、プレジャーボート対策を推進します。
参画と協働の推進
最後は、「参画と協働の推進」です。
「21世紀兵庫長期ビジョン」の推進では、県民だれもが参加できる夢会議を県下各地域において引き続き開催するとともに、地域ビジョン委員会も第2期の委員をメンバーとして、それぞれのプログラムの着実な展開を図ります。
そして、“美しい兵庫”をめざす四つの社会像、「創造的市民社会」「環境優先社会」「しごと活性社会」「多彩な交流社会」の達成状況を評価する「美しい兵庫指標」の運用をはじめ、重点プログラム65の積極的な推進や的確なフォローアップに努めます。高校での「兵庫未来講座」の実施などを通じて、若者の参画も促します。
「県民の参画と協働の推進に関する条例」の円滑な施行のため、地域づくり活動の登録システムを活用して適切な情報提供等を行い、活動のネットワーク化を急ぐとともに、その普及啓発に努めるなかで、幅広い県民の意見を聴きながら、地域社会の共同利益の実現に向けた県民活動の支援指針や、県行政への参画と協働の推進計画を早期に策定します。
自治会や婦人会などの各地域団体が、それぞれの地域特性を生かしながら行う主体的な取り組みを支援して、協働のネットワークづくりを応援します。
また、NPO等の活動を支援するため、「ひょうごボランタリープラザ」において、活動交流や立上げ期の団体への支援機能を拡充するほか、NPO大学の開催や「ひょうごボランタリー基金」による助成等を通じて、基盤強化とネットワークづくりを推進します。
県民運動のさらなる広がりと深まりに向け、「こころ豊かな美しい兵庫」を新しい目標として、多様な主体の連携と協働をもとに積極的な展開を図ります。
生涯にわたる学習活動も活発化しています。「ひょうごオープンカレッジ」や「ふるさとひょうご創生塾」の開催等を通じて、県民への多様な学習機会の提供を図りつつ、学びの成果を生活の創造や豊かな地域社会の実現に結びつける生涯学習システムの整備を推進します。
男女共同参画社会づくりでは、事業者との協定の締結や推進員の設置、県の率先行動計画の推進など、今後とも、県民と一体となった取り組みを進めます。
広報・広聴では、県民との情報共有を一層深めるため、全世帯配布広報紙の紙面拡充や、多様なチャンネルを通じた県民とのコミュニケーションの充実を図るとともに、知事が県民と直接対話するフォーラムやトークを引き続き県内各地域で実施します。
行財政構造改革の推進
今後とも、行財政構造改革を推進していかなければなりません。
成熟社会にふさわしい行財政構造の確立をめざして、推進方策に基づく取り組みを引き続き着実に進めています。新年度は、厳しい税収見通しや地方財政対策のもと、限られた財源の重点配分や経費支出の効率化、スクラップ・アンド・ビルドを徹底し、ようやく現下の厳しい状況に応える予算を編成し得たものと考えています。
組織の見直しでは、本庁において、総合的な政策形成機能を充実し、県民生活重視の県政を推進するため、県民政策部を設け、関係部局を再編整備します。県民局については、地域の重点テーマにかかる予算の確保や地域戦略推進費の拡充等により、さらに現地解決機能の強化を図ります。
また、定員の適正かつ効率的な配置に努めるとともに、特別職の給料の減額や一般職の管理職手当の減額を継続します。
行政施策については、政策評価を踏まえた見直しを進め、投資事業の重点化や事務事業の整理・合理化を行うほか、公的施設の市町への移譲や、21世紀ひようご創造協会と県ヒューマンケア研究機構の統合など、公社等の統廃合も進めます。
使用料・手数料については、引き続き、国の基準等に基づく料金の適正化以外を据え置くとともに、スポーツ施設等の平日料金を引き下げ、利用促進を図ることとしました。
地方債については、県下市町、他府県等との共同発行や県民債の充実により、その円滑な発行をめざします。
そのほか、企業庁における経営ビジョンの策定や県立病院の構造改革を進めるとともに、電子申請や県税の電子申告をはじめとする電子県庁の推進、PFIなど成熟社会型行政手法の導入にも取り組みます。
ところで、新年度予算は以上のとおり編成しましたが、内閣府の資料等を踏まえ、平成20年度までの収支を見通すと、起債制限比率は15%台に止まるものの、収支不足額が今後5年間で約2,550億円増加することが試算されます。新年度は、行財政構造改革の中間年にあたります。したがって、推進方策の進捗状況及びそのフレームの総点検とともに、改革へのさらなる検討を加える必要があると考えています。
地方分権の推進については、平成16年度から法人事業税への外形標準課税が導入されることとなりましたが、他方で、義務教育費国庫負担制度の見直しなど、地方の意見を汲まない一方的な制度改正が進められようとしています。地方分権を本来の意味で確立するためには、税財政面の分権が不可欠です。いわゆる三位一体の改革を進めなければなりません。今後とも、全国知事会等との連携のもと、財政自治権の確立など分権改革へ向けた努力を継続する一方、県としての検証作業を本格化させ、自らの取り組みとともに、法令や制度の改善について国に対して積極的な提案・提言を行います。
市町合併については、県として必要な情報提供や地域の議論の場づくりへの助成をはじめ、合併を前提とした法定協議会の事務局への県職員の派遣などを行ってきました。法定協議会が7地域で設置されるなど県下の自主的な取り組みが高まってきたことを踏まえ、新たに、事業費40億円の県単独県道整備事業の創設や自治振興助成事業の拡充を行うとともに、法定協議会における新市町建設計画の策定にあたっては必要な県事業を積極的に計上するなど、引き続き地域の自主的な取り組みを支援します。
条例・事件決議
以上の方針のもとに編成した平成15年度の歳入歳出予算は、
- 一般会計「2兆1,020億2,800万円」
- 特別会計「1兆1,420億5,800万円余」
- 公営企業会計歳入「1,535億5,800万円余」
- 同歳出「1,688億8,200万円余」です。
次に、条例につきましては、産業廃棄物等の不適正な処理の防止に関する条例等35件です。
事件決議につきましては、環境事業団に対する出捐等10件です。
以上で平成15年度の主な県政施策と諸事業の説明を終わります。
議員の皆様には、よろしくご審議のうえ、適切なご議決をいただきますようお願いします。