本日、第272回兵庫県議会の開会にあたり、議員の皆様のご健勝を心からお喜びし、日頃のご精励に感謝します。
まず、提出議案の説明に先立ち、県政の主要施策等についてご説明、ご報告をします。
その一は、経済・雇用対策です
本県経済は、平成12年度には県内総生産が実質でプラス3.2%となるなど、全体として緩やかな回復局面にありましたが、翌年度には一転して調整局面に入り、年度後半には世界的な経済の減速傾向のなかで厳しい状況が続きました。本年度に入り、輸出の増加や鉱工業生産の持ち直しに支えられ、全体としてはほぼ下げ止まっているものの、世界経済をめぐる不透明感や内外の為替・株式市場の不安定な動きなどから、景気回復に向けた動きが見通せない状況にあります。
こうしたなか、国においては、10月末に不良債権処理の加速と金融・産業の早期再生のための総合対応策を決定し、デフレ克服と経済活性化に取り組むとともに、今般、改革加速プログラムを新たに策定し、補正予算措置を講じることとしました。
県としては、かねてより、ひょうご経済・雇用再活性化プログラムを積極的に推進するとともに、投資事業量の確保や地域産業の活性化、地域のにぎわいの創出、雇用就業の確保などの緊急対策を講じてきましたが、さらに、今般、ひょうご経済・雇用再活性化プログラム推進会議から、プログラムの充実に向けた提言をいただきました。
今後、プログラムの基本理念である「セーフティネット」「一点突破」「構造改革」を生かしながら、地域課題に即したデフレ対策の推進、中小企業の活力の創出、新しい産業と生活・住まい方の創造を重点方向として、その具体化について検討を進め、国の政策動向も見極めながら、積極的かつ適時適切に施策化を図ります。
また、先に決定された「構造改革特区推進のためのプログラム」を受け、規制の特例措置等を盛り込んだ「構造改革特別区域法案」が今臨時国会に提出されました。
県としては、特区制度を十分に活用し、デフレ克服に向けた民間投資の活性化を推進するため、地元市町等との連携のもと、さらなる規制改革や実効性ある特区制度に不可欠な投資減税等の税制支援、企業立地等に対する融資・助成の一体的実施の必要性について引き続き国に働きかけます。
さらに、先般開催した「国際フロンティア産業メッセ2002」や「ITあわじ会議」等の成果も踏まえつつ、国内外の企業や研究機関の誘致など地域独自の取り組みを積極的に展開します。
その二は、震災復興の推進です
創造的復興に向けたこれまでの取り組みを検証し、残された課題解決に向けた施策や一般施策として引き継ぐべき施策の方向等を示す「阪神・淡路震災復興計画最終3か年推進プログラム(仮称)」の策定を進めています。
後期5か年推進プログラムフォローアップ委員会におけるプログラム案の検討や県民の皆さんからいただいたご意見、ご提案を踏まえつつ、被災高齢者の見守り体制の構築やまちのにぎわい創出などを含め、残された期間内での創造的復興をめざし、年内の策定に向けた作業を急ぎます。
また、震災の経験と教訓を新しい兵庫づくりにつなげていくため、震災8周年・「防災とボランティアの日」事業として、「1.17ひょうごメモリアルウォーク2003」
を開催します。“未来をひらく”をサブタイトルとして、昨年度に続き東西二ルートで実施するとともに、多くの方々のご参加を得て、防災訓練やふれあいバザーなどの防災事業を行います。
一方、阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた新湊川の災害復旧事業が完了し、11月4日に完了記念式典を開催しました。災害に強い河川改修にあわせ、遊歩道や親水施設整備など快適な水辺空間づくりを進めるとともに、貴重な歴史的価値を有する湊川隧道の保存にも取り組みます。
工事期間中の平成10年、11年に発生した浸水災害により大きな被害を被りましたが、工事の完成により、安全で安心な地域づくりの基盤が整備されましたので、地域・商店街等が一体となって、歴史と文化が息づくまちづくりが進められることを期待します。
その三は、芸術文化の振興です
ひょうご舞台芸術などのソフト事業を先行実施してきた「芸術文化センター」について、11月12日に起工式を行い、平成17年秋の開館に向け、いよいよ着工の運びとなりました。
阪神・淡路大震災からの心の復興と文化復興のシンボルとして、舞台芸術の鑑賞・創作・発表など多彩な文化活動を通じた県民文化の振興を図るとともに、21世紀における舞台芸術の創造と交流を国内外に発信し、自ら創造し、県民とともに創造する県民文化の拠点をめざします。
また、これと時を同じくして、兵庫の文学を振興し、新たな文化を創造・発信する「ネットミュージアム兵庫文学館」が開館しました。日本初の試みとして、兵庫を舞台とする文学作品や兵庫ゆかりの作家等をインターネット上で紹介するこの文学館は、バーチャル空間の利用という特性を生かし、文学の面白さを多くの人々にわかりやすく伝えることができるものと期待しています。
その四は、交流と連携の推進です
広東省との友好提携20周年を記念して、すでに本県の友好訪問団が8月に広州を訪れ、同地で記念式典を開催したところですが、今週末には、広東省友好訪問団が来県されます。
新しい世紀を迎えた両県省の交流事業の促進をめざし、経済、観光、芸術文化、教育、環境など広範な分野で意見交換を行うとともに、淡路夢舞台国際会議場において日本広東経済促進会第二回年次会を開催し、両県省のさらなる経済発展をめざし積極的な検討を行います。
その五は、地方分権改革の推進です
この10月末に、地方分権改革推進会議から総理大臣に「事務・事業の在り方に関する意見」が報告されました。しかしながら、その内容は、国から地方への税源移譲を含む税源配分のあり方について踏み込んだ検討がなされておらず、国庫補助負担金の廃止縮減、税源移譲、地方交付税制度の見直しの三位一体改革へ向け、極めて不徹底なものであると言わざるを得ません。また、事務事業をめぐる国と地方の役割分担の明確化により責任と権限の一致をめざすとの方向について、大幅に後退したことは極めて残念です。
一方、11月20日に財政制度等審議会から財務大臣に提出された「平成15年度予算の編成等に関する建議」において、地方交付税の財源保障機能の廃止と来年度予算編成における総額抑制の考え方が示されましたが、地方交付税が地方の固有財源であることを忘れて、地方の自立に名を借りた一方的な議論には断固抗議します。
今後、政府においては、地方の意見を十分聴くことはもちろん、単に国の予算編成の都合等により地方へ負担を転嫁するのではなく、財政自主権の確立を含む改革を通じてこそ、成熟社会にふさわしい分権型社会が実現できるとの視点をもって検討が進められることを期待します。
また、法人事業税への外形標準課税の導入については、先の政府税制調査会答申において、税負担の公平性の確保、地方分権を支える基幹税の安定化等の観点から早急に導入すべきであるとされたところであり、平成15年度税制改正で実現することを強く期待しています。
市町合併については、本年度に入り五つの法定合併協議会が設置されるなど、具体的な検討が進む一方で、合併に伴う行政区域の広がりによって、住民と市町との距離感が拡大するとの懸念も指摘されています。こうした課題を踏まえ、地域の実情に応じた施策展開を推進するため、現在、合併後の行政に住民意見を反映する方策やシステムについて研究を進めており、その成果をできるだけ早期に県内市町に提案していきます。
先の道路関係四公団民営化推進委員会で、本州四国連絡橋公団の債務処理について、現行の償還計画を超える新たな地方負担が合意されました。日本道路公団が建設する道路には地元負担がないなかで、本州四国連絡道路については、既に地方が必要に応じ負担を行い、さらに平成24年度まで出資を行うこととなっていることから、これ以上の負担を求められることは誠に遺憾です。
また、公団の道路建設にあたり、料金収入で賄いきれない部分にその他の財源を投入すること自体は一つの考え方であるものの、高速道路は全国ネットワークの形成によりその機能が十分に発揮できるものであることから、整備時期の後先で地元負担に差が生じてしまうことには納得がいきません。
通行料金について半額程度の引き下げが合意されたことは評価できますが、今後の検討にあたっては、出資地方公共団体の意見を真摯に受け止められるよう、強く求めていきます。
関西の三空港については、国際拠点空港としての関西国際空港、国内基幹空港としての大阪国際空港、地方空港としての神戸空港がそれぞれの役割、機能を果たすよう整備、運営することが基本であると考えています。
そのなかで、大阪国際空港については、騒音に悩まされた住民の方々と空港との共生への理解も進み、そのためのまちづくりがようやく具体化しようとしているだけに、第一種空港の位置付けの変更や発着枠の縮小の議論はあまりにも一方的です。また、環境対策費については引き続き国の責任で対策を講じるべきです。県としては、大阪国際空港は、国民共有の財産として地元住民と共生するなかで引き続き利用者の利便を図っていくべきであることを強く主張していきます。
その六は、県財政の運営です
本年度の財政見通しについては、県税の10月末調定額が前年度同期比で86.4%に止まっており、とりわけ法人関係税が前年度同期比78.7%ときわめて低い水準にあることから、年間の県税収入額が当初予算額を下回ることが見込まれるなど、
大変厳しい状況にあります。
このため、12月を全県統一の重点月間として、税収の確保に全力をあげるなど、健全財政の確保に十分留意しながら、適切かつ弾力的な財政運営に努めます。
また、本県の経済状況を考慮すると、今後も厳しい財政運営が続くものと見込まれます。このため、平成15年度の当初予算編成にあたっては、従来にも増して限られた財源の重点配分と経費支出の効率化を図ることを基本に、既存事業の徹底した見直しを行いながら、新規施策分野への積極的な取り組みを進めます。
あわせて、県民局が地域課題の解決に向けて取り組む施策について直接の予算要求を行うこととし、現地解決型行政を一層推進します。
なお、職員の給与改定については、去る10月16日、県人事委員会から職員の給与等に関する報告及び勧告を受けましたので、勧告の趣旨を尊重することを基本姿勢とし、現在、職員団体との話し合いを進めています。今後、厳しい社会経済情勢と財政状況を勘案して、十分に検討し適切に対処します。
最後に、県民の参画と協働の推進です。
本格的な成熟社会を迎え、生活者の視点に立った新しい社会システムへの転換が求められるなか、本県では、これまでから、生活創造の推進など県民生活重視の県政を展開してきました。
阪神・淡路大震災において、被災者相互の助け合いの精神や県民一人ひとり、地縁団体、ボランティア等による草の根の活動が、被災地の復興を支える大きな力となるなど、私たちは自発的で自律的な意思に基づく県民の主体的な取り組みの大切さをあらためて確認しました。そして今、県内各地域では、21世紀兵庫長期ビジョンに県民自らが描いた地域の将来像の実現に向け、県民主役・地域主導による先導的な取り組みが進められています。
これらの貴重な経験や教訓を踏まえつつ、自然と調和し、共に生きることを基本に、人類の安全と共生にも寄与する志高い地域づくりを進めるためには、県民一人ひとりが地域のあり方を考え、判断し、責任を持って行動する取り組みが大切です。
また、県民の多様なニーズに的確に対応しつつ、県民生活を一層重視した県行政を推進していくためには、県民の参画と協働の多様な機会の確保を図り、県民とのパートナーシップに基づく県行政を推進していく必要があります。
このたび、議会との緊密な連携のもと、施策の決定と確実な推進が図られることを基本に、参画と協働の基本理念を明らかにするとともに、地域づくり活動への支援、県行政における参画と協働の推進などの基本的事項を定めた「県民の参画と協働の推進に関する条例」を制定することとしました。
今後は、この条例に基づき、参画と協働を進めるための基本指針や推進計画を策定するとともに、関連施策の総合的な推進を図り、条例施行後3年以内にその効果を検証するなかで、多様な地域に多彩な文化と暮らしを築く美しい兵庫の実現をめざします。
なお、日本人拉致問題については、日朝首脳会談により両国の新しい扉が開かれ、政府の努力と国民の願いが凝集されてきています。こうしたなか、今後とも拉致問題の解決に向けて、政府に適切な対応を望むとともに、国民が納得できる事件の真相解明がなされることを切に願っています。
これより、提出議案の概要についてご説明します。
まず、歳入歳出決算認定の件です。
平成13年度決算は、
一般会計で、
- 歳入2兆1,240億5,900万円余
- 歳出2兆1,118億5,900万円余
特別会計で、
- 歳入8,578億6,800万円余
- 歳出8,498億3,800万円余
となりました。
平成13年度は、県税収入が2年ぶりに前年度を下回るなど、厳しい財政環境にありましたが、行財政構造改革の着実な推進を図りながら、震災復興対策や21世紀兵庫長期ビジョンの推進、産業・雇用構造改革の推進をはじめ、緊急経済・雇用対策や県民の安全と安心を確保する対策など、当面する行政課題にも機動的かつ弾力的に取り組みました。
この結果、平成13年度の一般会計決算額は、実質収支の黒字を確保したところであり、行財政構造改革推進方策に基づく収支フレームの枠内で健全財政を堅持することができました。この決算につきましては、かねてより監査委員の審査に付しておりましたが、このたび審査意見書の提出がありましたので、今回認定を求めるものです。
条例案件は、先ほどご説明しました「県民の参画と協働の推進に関する条例」制定の件等7件です。
事件決議案件は、当せん金付証票発売の件等73件です。
以上で、提出議案の説明を終わります。
議員の皆様におかれては、よろしくご審議のうえ、適切なご議決をいただくようお願いします。