更新日:2002年2月22日

ここから本文です。

第269回兵庫県県議会 知事提案説明(平成14年2月22日)

第269回兵庫県議会の開会にあたり、議員の皆様のご健勝を心からお喜びし、日頃のご精励に対し深く敬意を表します。

去る1月17日、多くの県民の参加を得て、「1.17ひょうごメモリアルウォーク2002」を実施しました。「追悼のつどい」では、ご遺族をはじめ政府代表、多数のご来賓とともに、県内外から五千名を超えるご参列をいただき、改めて尊い犠牲となられた方々の御霊の安らかならんことをお祈りしました。
大震災から7周年を迎えたいま、復旧から復興へと共に力を合わせてきた道のりを振り返るとともに、この3年のうちには創造的復興を成し遂げるとの決意も新たに、全力で取り組むことを誓い合うことができました。
さて、知事に就任してから早や半年余が経過しましたが、ここに平成14年度予算を提案するにあたり、県政に取り組む基本的な考え方をご説明し、議員及び県民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。

県政の理念

世界はいま、歴史的な大転換期を迎えています。テロや民族紛争をはじめ、環境、資源・エネルギーの問題など、人類社会の存亡を左右する諸課題が深刻化するなか、対話と協調、寛容と共存、そして貧困や地域格差の克服を基調とする新しい秩序を模索しています。
国境の壁や文化・宗教の違いを超えた人と人、地域と地域の多彩な交流と連帯の動きも広がりつつあります。
21世紀の始まりは、私たちにこのような人類共通の課題を改めて認識させてくれました。いま直面しているこうした課題を解決するためには、地球規模での多文化共生社会の実現に向けた歩みを確実に進めていくことが何よりも大切です。
昨年、電子メールで世界中に広がったひとつのメッセージが、一冊の本になりました。世界がもし100人の村だったら、多くの村人が貧困やさまざまな危険のもとで生活していること、そして私たち自身がその同じ村に住む仲間であり、まさしく共に生きているということを教えてくれています。
兵庫県は、日本の縮図ともいわれています。兵庫県こそが、さまざまな可能性を最大限に生かしながら、明るい未来を拓く取り組みに果敢に挑戦し、成熟の時代にふさわしい地域づくりを進める資格と責務があるのではないでしょうか。それだけに私たちは、わが国、ひいては世界の人々に対して、素晴らしい21世紀型地域社会のモデルを示さなければならないのではないでしょうか。
本格的な成熟社会を迎え、これまでの社会構造そのものを、集権・集中から分権・分散へ、画一・効率から多様・個性へ、供給重視から生活・消費ニーズ中心へ抜本的に改革していかなければなりません。
その基本は、生活者、消費者の視点に立った新しい分権社会システムを構築することによって、生活の質的充実を図ることです。自律した人々が、自然と共生し、生き生きとくらし、共に生きることを実感できる地域社会を築いていくことが求められているのです。
わが兵庫県は、明治以来、発展途上の日本の近代化をリードし、戦後の復興と経済成長に大きく寄与してきました。新しい世紀の幕が開かれたいま、広大で多彩な県土の上に、開かれた風土と豊かな文化を育んできた地域の個性を生かしながら、県民生活重視の県政を引き続き展開していかなければなりません。
また、あの未曾有の大震災から得た経験や教訓を踏まえて、自然と調和し共に生きることを基本に、人類の安全と共生にも寄与する志高い地域づくりをめざさなければなりません。
私は、県民主役と地域主導により策定した「21世紀兵庫長期ビジョン」を指針として、「安全と安心」、「自律と共生」の理念のもと、県民の皆様の「参画と協働」を基本姿勢にしながら、新しいわが国のあり方を兵庫から発信していく気概をもって、多様な地域に多彩な文化と豊かなくらしを築く「美しい兵庫」をめざして全力を尽くしてまいります。

県政推進の基調

まさしく、21世紀の幕開けを告げた昨年は、国内外で人々に不安感を抱かせる事件、出来事が相次いで発生し、歴史の転換期におけるさまざまな困難な問題を投げかけました。これからの兵庫づくりを進めるためには、何よりもまず、こうした課題に的確に対応し、県民生活の安定を図っていくことが必要です。
それだけに、私は、次の三つの柱を基調として、新年度の県政を積極的に推進いたします。

その第一は、県民生活の安全と安心の確保です

社会構造の変化に伴う先行きへの不安や不透明感、さらには、家庭や地域、青少年をめぐるさまざまな事件などが続くなか、防災や防犯はもとより、厳しい経済・雇用情勢への対応をはじめ、健康福祉や医療、食生活の安全など県民生活の安全と安心を総合的に確保し、県民生活全体の質的充実をめざします。
第二に、新しいふるさとづくりです。
日本海から太平洋に至る広い県土を舞台として、地域の個性と文化を生かしつつ、快適な生活環境や多彩な交流基盤づくりを進めるとともに、人と自然、人と人のふれあいを、地域から地域へ、そして世界へとつなげながら、県民誰もが豊かで充実した生活をおくり、ふるさとへの誇りと愛着を育む県土空間をつくります。

第三は、参画と協働の推進です

21世紀の成熟社会にふさわしい兵庫を創造していくためには、県民一人ひとりが、地域のあり方を自ら考え、判断し、責任を持って行動していくことが大切です。私は、「参画と協働」を基本姿勢として、県民の主体的な取り組みに期待しつつ、共に知り、考え、取り組み、そして共に確かめ支え合う県民と県政のパートナーシップの確立をめざします。
平成14年度は、このような考え方を基本に県政を展開してまいりますので、よろしくご理解をお願いいたします。

これより、新年度の重点政策についてご説明いたします。

県民生活の安全と安心の確保

その第一は、県民生活の安全と安心の確保です

まず、阪神・淡路大震災からの本格復興を進めなければなりません

昨年秋には被災地の人口が震災前の水準に回復するなど、復興は概ね順調に進んでいます。今後とも、「阪神・淡路震災復興計画後期5か年推進プログラム」のフォローアップを図りつつ、被災高齢者の生活復興やまちの賑わいづくりなど、残された課題の解決を急ぐ必要があります。
そのために、地域での見守り対策を拡充します。
被災者の高齢化が進むなか、健康や生きがいづくりなど個別・多様化する諸課題にきめ細かく対応するため、高齢世帯生活援助員等を増員するとともに、「まちの保健室」の看護ボランティア等の支援者ネットワークを強化する、新たに高齢世帯への電話訪問を実施するなど、見守り体制の一層の充実を図ります。
また、コミュニティづくりと一体となった生活復興を促進するため、閉じこもりがちな高齢者の仲間づくりをラジオで呼びかけ、NPO等によるふれあい交流事業の実施などの元気アップ活動を引き続き支援します。
このほか、巡回型の「いきいき仕事塾」の開設、中高年齢被災者への就業相談や職業訓練も実施することとしました。

その2は、まちの賑わいの創出です

市街地復興事業に時間を要することもあって、まちの活力の回復が遅れています。商店街に活気を取り戻し、市街地復興事業の着実な推進にも寄与するため、アイデアコンペによる商店街等の先導的な活性化事業や空き地・空き店舗を活用した集客イベント等に対する助成を行います。また、被災地の魅力を高める花づくりや緑化活動も支援しながら、自治会等の住民組織による地域の自然や歴史資源等の再発見運動も展開します。
さらに、早期の市街地再生に向け、事業継続地区における再開発ビルへの商業施設等の入居を促進するため助成するとともに、土地区画整理事業地区における住宅建設等を促進するため、被災者以外の者に対してもその所要資金に利子補給を行うこととしました。

その3は、大震災の教訓の継承と発信です

神戸東部新都心では、本年4月、「阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター」がオープンします。震災の実態や復興過程等を展示するとともに、防災に関する人材育成や広域支援等を担うわが国初の専門機関としてスタートします。その機能強化が期待される国連人道問題調整事務所やアジア防災センター等との連携を深めながら、国際防災と人道支援の拠点づくりをめざします。
あわせて、トラウマやPTSD等に関する全国的な拠点となる「こころのケア研究・研修センター」(仮称)の整備も進めます。
また、全県の防災拠点となる「三木震災記念公園」(仮称)では、災害時の応急活動や人材育成の中心となる消防学校等の施設整備を進めるとともに、安全安心を担う人材の実戦的な学習・訓練のあり方について検討を深めていきます。
被災住宅の再建支援制度については、共済制度による住宅所有者間の相互扶助を基本に、住宅再建の公共性を踏まえながら、公的負担を組み合わせた仕組みとして、引き続き全国知事会等と連携して、その早期実現をめざします。

次に、経済・雇用対策の推進としごと活性社会の実現です

全国的な景気低迷の影響もあり、本県経済をめぐる環境は一段と厳しさを増しています。安心・元気・創造を基本とする「ひょうご経済・雇用再活性化プログラム」のもと、平成16年度までに5万人のしごと・雇用の創出をめざし、成熟社会にふさわしい経済・雇用の構造改革を進めなければなりません。

まず、経済・雇用のセーフティネットを構築します

深刻化する雇用情勢に対応するため、緊急雇用創出事業として、教育や環境、安全、福祉等の分野において公的雇用の拡充を図る一方、県下各地域のしごと情報広場にキャリアカウンセラーを配置し求職者の相談に対応するほか、住宅ローン等をかかえる失業者への融資制度も継続します。
また、雇用のミスマッチを解消するため、産業界等とも連携して、アメリカのコミュニティカレッジでの実践も参考にしながら、地域の雇用ニーズに的確に応える能力開発の仕組みを研究します。中高年齢離職者等のIT化への対応や、若年層の成長産業分野への再就職に向けた能力開発等を進めるほか、ワークシェアリングの民間企業への導入を促進するなど、個人の適性や能力を生かした多様な働き方の実現を支援します。
中小企業金融対策では、厳しい経営環境下のキャッシュフロー対策として創設した特別経営資金について、貸付期間を1年延長するとともに、経営安定から新事業展開までの資金需要に的確に応え、利用し易くするため、各種の融資制度を整理・再構築し、昨年度を500億円上回る2,500億円の融資目標を設定しました。

その2は、地域産業の元気回復と新たな活力の創造です

ものづくり産業の新展開に向け、異業種交流や共同研究等により地場産業の新分野への進出を応援します。中小企業の第二創業を促進するため、新製品開発や販路開拓、事業化に対する補助や資金融資を行う一方、積極的な取り組みを進める「元気企業」をPRするなど、「一点突破」による産業活力の再生をめざします。
商店街対策では、空き店舗の活用による生活支援型ビジネスの展開をはじめ、商店街活性化に向けた再生プランづくりやアイデアコンペによる集客イベント等の先導的事業を支援します

その3は、未来を拓く創業と成長産業の創出です

明日の産業を拓く起業家の発掘や育成を図るため、新産業創造プログラムやキャピタルに加え、ベンチャー企業と投資家等とのマッチングを進めるとともに、医療・福祉産業や生活文化産業など21世紀を先導するフロンティア産業の創出に取り組みます。
大型放射光施設の県ビームラインによる分析サービスを実施して、放射光の産業利用を支援するほか、県科学技術会議の答申を踏まえ、産学官連携のコーディネート機能を強化して、バイオ・テクノロジーなど先端技術分野におけるビジネスの創出をめざします。
本県企業が持つ高い環境技術の集積を生かし、産業廃棄物回収システムの開発など複数企業による先導的事業の推進を支援するほか、物流調査等を進め広域リサイクル拠点の形成を進めます。
さらに、ひょうごIT戦略のもと、地域情報格差を解消するため、兵庫情報ハイウェイの民間利用を積極的に促進します。中小企業における人材養成や情報機器の導入を支援するほか、ひょうご情報公園都市の整備を推進します。
こうした内発型の産業振興を図る一方で、内外企業の立地促進をめざす必要があります。このため、新たな条例を制定し、地域の特性に応じて「産業集積促進地区」「国際経済拠点地区」「新産業構造拠点地区」の指定を行うとともに、不動産取得税を減免し、地元雇用者数等に応じて1億5,000万円を上限とする助成制度を設ける
ほか、外資系企業に対するオフィス賃料の一部補助も行うなど、積極的な取り組みを進めることとしました。

第一の柱の最後は、安全・安心の社会づくりです

生涯を健康で安心して過ごせる社会の実現をめざし、ハード・ソフトの両面にわたる保健・医療・福祉の基盤を整えるとともに、災害や犯罪から県民を守り、くらしの安全対策に全力で取り組まねばなりません。

はじめは、子育て環境の整備です

子育て中の親が気軽に集い、仲間づくりを通じて子育ての悩みを相談し、互いに情報を交換できる身近な拠点として、保育所や児童館等を活用した「まちの子育てひろば」を県下に470箇所程度開設し、専門家やボランティアによる相談、情報提供等を行うこととしました。
また、保育所待機児童の解消に向け、保育所整備を進めつつ、認可外保育施設に対する指導・監督を通じて、基準適合証明制度の実施や認可保育所への移行支援を行うほか、家庭的保育や駅前保育センターの設置を促進します。
児童虐待防止対策では、推進プログラムに基づき、中央こどもセンターに24時間ホットラインを開設するとともに、専門チームによる迅速な対応、一時保護所の受入体制の拡充など、総合的な取り組みを進めます。
乳幼児医療費の公費負担助成制度を拡充して、義務教育就学前までを対象とするほか、小児救急医療について、体制整備を検討しつつ、こども病院での受け入れや初期救急医療を担う医師等への研修を行うなど対応を図ります。

その2は、健康福祉対策の強化です

県民誰もが質の高い医療を安心して受けられるよう、県保健医療計画の圏域別推進方策に基づき、疾病別医療システムの整備などを実施します。
県立病院では、手術室の増築等により待機患者の解消をめざすとともに、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる病院体制の確立に向けて、新たに地方公営企業法の全部適用を行い、公共性と採算性を確保することとしました。
また、「県立粒子線医療センター」については、現在、陽子線治療装置の製造承認の審査を受けており、来春にもがん治療の開始を予定し、また、炭素線の臨床試験も急ぎ、完全開院をめざします。さらに、大規模災害に対応できる「県立災害医療センター」(仮称)の整備を進めます。
県民の健康づくりを支援するため、住民参画による健康なコミュニティづくり、新ひょうご対がん戦略の推進など、引き続き健康ひょうご21大作戦を展開します。
また、特別養護老人ホームの整備を推進し、入所待機者の計画的な解消をめざすほか、介護保険制度の着実な実施を図り、在宅福祉対策や介護予防にも力を注ぎます。
障害者の福祉対策では、小規模作業所や授産施設の運営支援を拡充し、しごと開拓アドバイザー等を設置して、受注先の開拓や製品の品質向上への技術支援を行うほか、総合リハビリテーションセンターのブランチ構想の検討も進めます。
さらに、淡路景観園芸学校において、アメリカ園芸療法協会の資格認定が得られる本格的な指導者養成コースを開設し、公立機関としては全国初となる園芸療法研修を行います。

その3は、くらしの安全対策です

防災対策では、市町と連携しながら自主防災活動の充実強化に努めるほか、安全な住まいづくりに向け、耐震診断を経た既存住宅の耐震改修資金に対する利子補給制度を創設します。
警察活動については、警察官、交番相談員を増員するほか、違法駐車の取締活動を支援する人員を新たに配置します。あわせて、県民アクション事業等を通じて交通事故のない安全な社会をめざします。
食品の安全確保については、県独自のHACCP認定制度を創設して、衛生管理の徹底を図るほか、生産・流通・消費の関係者が一体となって、食品表示にかかる監視指導を強化します。農産物については、生産者と消費者の顔が見える関係づくりをめざし、いわゆる「地産地消活動」を推進するとともに、「ひょうご安心ブランド」
の普及に向け、環境に配慮した方式を導入する生産集団の認定や残留農薬等の自主検査を促進します。
なお、牛海綿状脳症対策については、消費者等の不安を解消するため、スクリーニング検査等を徹底して安全な流通を確保するほか、県産ブランド牛の生産・流通に関する履歴情報の表示促進など、引き続き的確な対策を講じ、牛肉の安全性のPRにも力を注ぎます。

新しいふるさとづくり

新年度の県政の第二の柱は、新しいふるさとづくりです

その第一は、自然と調和した循環型社会づくりです

環境の世紀に対応するため、自然の再生や快適な生活環境づくり、地球環境の保全などに積極的に取り組み、持続可能な社会を実現しなくてはなりません。
このため、ひょうごの森・川・海の再生をめざします。
まず、「新しいひょうごの森づくり」として、水源涵養をはじめ多面的な公益機能を持つ森林の保全をめざし、「森林管理100%作戦」を推進して、要保育森林の間伐をすべて公的負担により実施するとともに、人々が山に入れるよう歩道整備などを進め、荒廃した里山林の再生をめざします。また、県民総参加の森づくりに向けて「森林ボランティア育成1万人作戦」を展開します。
さらに、地域の生態系に配慮しながら人と自然が共生する川づくりを進めるとともに、瀬戸内海における自然海岸を回復し、緑地や公園を結ぶ「瀬戸内なぎさ回廊」を整備します。

その2は、良好な生活環境の整備です

人と自然の共生をめざす淡路花博の理念を継承し、花を生かしたまちづくりを県民運動として展開するため、市町等との連携のもと、道路、河川、空き地など県下200箇所でモデル的に実施される花づくり活動を支援します。
地球環境保全への取り組みとして、建築物の屋上緑化を制度化し、ヒートアイランド現象の緩和にも努めます。また、太陽光発電について、県施設へ積極的に導入するとともに、ひょうごグリーンエネルギー基金による施設建設も呼びかけるなど自然エネルギーの普及を図ります。さらに、低公害車の普及促進や、阪神高速道路の環境ロードプライシングの試行等による大気環境の改善を促進します。
廃棄物対策では、使用済み容器の回収促進等を進める兵庫型デポジット制度のモデル実施を行うなど、ごみをつくらず出さない、いわゆる「5R生活」の実現に向けた取り組みを進めます。また、増大する不法投棄に的確に対処するため、監視から撤去、原状回復に至る実効あるシステムの構築をめざすなかで、原状回復処理のための基金の造成や適切な制度化を検討します。
住民参画型の自然の保全と利用をめざし、上山高原をエコミュージアムとして整備するとともに、砥峰高原に自然交流館、笠形山千ヶ峰に中核利用施設、神戸、篠山、中・八千代地区に野外CSR施設をオープンします。
このほか、兵庫における国際的研究機関や先進的な環境産業の集積を生かして、国際的な支援ネットワークを構築し、日中韓環境産業円卓会議の開催を支援するなど、環境保全に関する国際貢献にも力を尽くします。
なお、県が事業主体となる新たな工事について、工事費の5%以上を太陽光発電など自然エネルギーの利用促進等に充てる「環境創生5%システム」を導入して、県自ら率先して環境の創生に取り組むこととしました。

その3は、「農」の時代の創造です

自然の循環の中でその恵みを分かち合う「農」は、人のこころにゆとりとやすらぎを与えてくれます。「農」を楽しみ、実践することによってより人間らしく豊かに生きるアグリライフ、すなわち農を楽しむ生活、「楽農生活」の創造を広く提唱し、「市民農園面積倍増作戦」を展開するとともに、「アグリライフ・リーダー2,000人育成作戦」や「アグリライフ交流人口1,000万人作戦」を推進します。あわせて、「農」の役割を学び体験できる拠点づくりを検討します。
また、野生動物対策として、シカの個体数管理を徹底し、農作物被害の多い地域の山裾に防護柵を緊急設置して被害軽減を図るほか、農業共済制度を補完する新たな補償制度を設けることとしました。
一方、人と野生動物との共存をめざし、生息地や個体数等を総合的に管理するワイルドライフ・マネジメントに取り組み、「森林・野生動物研究センター」(仮称)の具体化に向けた検討も進めます。
このほか、「おいしいごはんを食べよう県民運動」を展開するとともに、ガーデンビレッジ構想やひょうごウッディビジネスパーク構想について、関連産業の交流フェア等のソフト事業を先行実施するほか、ノリ対策、漁港整備、沖合漁場調査等によるつくり育てる漁業の推進など、自然産業としての農林水産業の振興を図ります。

次に、自律と共生の人づくりです

まず、新しい時代にふさわしい兵庫教育を進めます

新設の総合的な学習の時間を生き生きとする必要があります。学校教育に地域住民が参画する「学校応援団」の設置をはじめ、各分野で活躍する郷土出身者が「ふるさとの先輩」として教壇に立つなど、各学校が進める豊かな学習活動を支援します。
また、学校週5日制の完全実施にあわせ、「スポーツクラブ21ひょうご」の活動拠点について、昨年度を100箇所上回る整備を進め、平成14年度までの前期3年で全体計画の6割達成をめざします。子ども自らやNPO等が企画して自然体験活動等を行う「ウィークエンド・子ども・いきいき体験事業」や、ふるさとの歴史・文化を再発見し、地域文化を考える事業などを実施します。
一方、児童生徒の問題行動等に対しては、各教育事務所に専門家によるチームを設置し、学校だけでなく関係者が連携して、早期対応・早期解決に向けた機動的な指導・支援を行うほか、私立学校に対して、安全管理対策に向けた助成を行います。
教職員の資質向上対策では、女子中学生放置死事件を踏まえて設置した懇話会からの提言等に基づき、カウンセリング・マインド研修の導入や教職員による自主研究の支援等を推進するとともに、悩み等を抱える教職員をサポートするため、心の健康対策、休職中の教職員に対するフォローアップや職場復帰トレーニングなども実施します。
高校教育の推進では、体験的な学習等を多く取り入れた単位制の高等学校をめざす三田祥雲館高校を新設するとともに、芦屋南高校の中高一貫教育等を行う国際学校への改編準備を行います。また、総合学科や単位制高校の設置を引き続き進めるほか、新しい選抜制度を神戸第三学区で導入します。
なお、厳しい経済環境の中で高校生が安心して学べるよう、学力基準を設けず、所得階層の50%程度を目途に所得基準を拡大して、奨学資金の貸与を行うこととしました。
障害児教育では、西播磨地域における長時間通学等を解消するため、養護学校の整備の検討を進めます。
大学教育では、平成16年度の県立三大学の統合に向け、準備委員会において教育内容や管理運営体制等の検討を進め、新大学設置の認可申請をめざすとともに、共通教育棟の建設や遠隔授業のためのシステム設計に着手します。

その2は、ボランタリー活動の促進です

NPO活動等の全県的な支援ネットワークの拠点となる「県民ボランタリー活動プラザ」(仮称)を神戸市内に新設するとともに、ひょうご地域福祉財団のボランティア基金等について、県社会福祉協議会に設置する「県民ボランタリー活動基金」(仮称)に移設することとし、多くの県民や企業に呼びかけながら、支援することとしました。
また、生涯学習時代を迎えて、県民主役の実践活動が生かされるよう、文化会館等による支援機能を拡充するほか、大学による連携講座やオープンカレッジに加え、高校での地域開放講座など学習機会の充実も図ります。

その3は、兵庫文化の創造です

本年4月、日本最大級の美術館として、「芸術の館」を開館し、松方・大原・山村コレクション展、ゴッホ展、英国のヴィクトリア&アルバート美術館所蔵品展などの魅力ある記念展を開催します。また、秋には全国初のバーチャルな「兵庫文学館」(仮称)もオープンします。
一方、ひょうご舞台芸術などのソフト事業を先行実施してきた「芸術文化センター」(仮称)については、平成17年度の開館をめざして、いよいよその建設に着手することとなりました。また、佐渡裕氏に音楽担当の芸術監督に就任していただき、付属交響楽団の設立準備も進めます。
考古博物館や陶芸館の整備については、文化財や所蔵品展などを先行実施するとともに、芸術文化の裾野を広げるため、地域のアーティストが成果を発表できる場を提供します。
スポーツの振興では、本年5月に「県立武道館」を開館して、兵庫武道祭等のさまざまな記念事業を実施するほか、震災復興後の本県の姿を全国に披露する場となる「のじぎく兵庫国体」の平成18年開催に向けた準備を進め、著名スポーツ選手による講演会等を実施するなど開催気運の醸成を図ります。

第二の柱の最後は、交流と連携の基盤づくりです

住み続けたいと思える魅力あふれる地域社会の形成に向け、都市の再生や多自然居住地域の創造に取り組み、多彩な県民交流の輪を広げます。

まず、個性豊かな県土空間の創造です

快適な生活環境を創出するバリアフリー化や電線類の地中化等を推進するとともに、政府の都市再生プロジェクトにも位置づけられた尼崎21世紀の森について、市民や企業等の参画を得て、緑豊かな環境共生型のまちづくりへ向けた構想の具体化を進めます。
また、三世代交流型の健康・安心・生きがいのまちづくりをめざす小野長寿の郷構想を推進するなど、多自然居住地域の創造に努めます。
さらに、水域利用の適正化を図るため、プレジャーボート対策を総合的に進めます。

その2は、交流を支える基盤づくりです

「みんなでつくる」「もっと使いやすく」「使い方を考える」の三つの視点を踏まえた「つくる」から「つかう」プログラムを推進し、渋滞解消を図る交差点の右折レーンの設置や空き店舗のコミュニティ施設としての活用など、既存ストックを生かしながら、質の高い社会基盤の整備活用をめざします。
県土の骨格をなす交通基盤として、第二名神高速道路や阪神高速道路湾岸線、北近畿豊岡自動車道等の基幹道路網の整備を促進していく必要がありますが、一方で、道路関係四公団の民営化など特殊法人等の整理合理化計画が進められています。関係自治体と協力して、国土の基幹道路は国の責任において整備すべきことを求めていくとともに、国の負担を安易に地方に転嫁しないよう強く申し入れてまいります。
鉄道網の整備では、阪神尼崎駅等の改良事業への助成や北神急行電鉄への神戸市等との協調支援を行うほか、JR加古川線の電化・高速化等を進めます。あわせて、JR姫路駅や加古川駅等の連続立体交差事業も推進します。
関西、大阪、神戸の三空港については、それぞれが国際拠点空港、国内基幹空港、地方空港としての機能を発揮してはじめて、21世紀の大交流時代にふさわしい関西圏の基幹的な交流基盤が整備されるものであります。引き続きそれぞれの早期整備を進めていくべきです。そのため、新年度において、県民の利便性向上の観点から、神戸空港整備に対する支援と「神戸空港ターミナルビル株式会社」(仮称)への出資を行うこととしました。
また、地域における重要な生活交通の手段であるバス路線の維持を支援します。

その3は、多彩な交流事業の展開です

まず、「ひょうご交流社会創造ビジョン」を策定し、「美しい兵庫」の実現に向けた交流のあり方を示すとともに、その仕組みづくりを進めます。
地域を超えた県民の交流を促進するため、ふれあいの祭典の全県総合イベントを各地域持ち回りとし、平成14年度は阪神地域での開催を予定しています。また、最終年を迎える21世紀記念事業では、シンボル事業としての兵庫の森づくり記念植樹事業などを展開し、尼崎臨海地域での記念植樹会をファイナルイベントとして開催します。
今年は、本土復帰を契機とする沖縄県との友愛提携30周年にあたります。記念式典をはじめ、県民交流の船の沖縄寄港や観光・物産展などを実施します。
賑わいと交流のツーリズムを振興するため、県観光連盟を改組して「ひょうごツーリズムビューロー」を設置し、国際ツーリストの受入体制の強化や地域の魅力づくりを進めるほか、グリーン・ツーリズムなどの交流事業を拡充します。
なお、本年6月に開催されるサッカーのワールドカップに向けて、国際ツーリズムの振興や警備対策の強化等に取り組むほか、「県立佐野運動公園」(仮称)の整備を進め、イングランドチームのキャンプも支援します。
このほか、広東省との友好提携20周年を記念して、経済も含めた幅広い交流事業を実施するとともに、大韓民国で開催される安眠島国際花の博覧会への出展を行うなど、国際交流の積極的な展開に努めます。あわせて、県国際交流協会において、外国人県民に対する相談活動や支援ボランティアの充実を図ります。

参画と協働の推進

新年度の県政の第三の柱は、参画と協働の推進です

「21世紀兵庫長期ビジョン」の実現に向けて、「地域ビジョン推進プログラム」と「全県ビジョン推進方策」の策定作業がいま最終段階を迎えています。新年度は、その具体化へ向けたスタートの年です。「地域ビジョン委員会」の実践的な活動をはじめ、県民誰もが参加できる「地域夢会議」を継続し、きめ細かく開催しながら、それぞれの地域の将来像の実現に県民と共に取り組みます。
全県ビジョンがめざす創造的市民社会をはじめ四つの社会像の達成状況を客観的に評価・検証する指標のフォローアップも行いながら、各分野の推進方策を計画的かつ機動的に推進します。
広報・広聴では、メールマガジンなど新たな媒体の効果的な活用も含め、県民本位のわかりやすくきめ細かい情報の提供・発信に努めるとともに、県民との多様なチャンネルを通じて、さわやか県政を進めます。
次に、男女共同参画社会の形成をめざして、基本条例を制定し、職場と家庭の両立に向けた県・事業者間の協定の制度化や推進員の設置などを行い、県民と一体となった取り組みを進めます。
なお、県民同士による地域の共同利益の実現に向けた取り組みと、県政への県民の積極的な参画と協働を進めるための仕組みづくりについて、引き続き条例化も含めて検討を進めます。

行財政構造改革の推進

最後に、行財政構造改革の推進についてです

平成12年2月に策定しました推進方策に基づき、起債制限比率を15%台にとどめることを基本に、平成20年度までに、事務事業の整理合理化をはじめ、5,000人規模の定員の見直しや給与の抑制等を通じて、1兆600億円の収支不足を解消する一方、新たに1,000億円の財源を確保し新しい時代の県民ニーズに的確に対応する行財政全般にわたる抜本的な改革を今日まで進めてきました。本庁と地方を通ずる組織の再編や投資事業の重点化など、これまでの取り組みは着実に進展しつつあります。
しかし、国の中期展望等を踏まえると、平成15年度からの6年間で、推進方策での試算に比べ、収支不足額が1,150億円程度増加することが見込まれます。したがって、経済動向等を注視しながら、引き続き実効ある改革へ向けた努力を積み重ね、今後、的確な対応に努めていく必要があります。
新年度においては、組織の見直しとして、長期ビジョン部の設置期間の終了に伴う再編等を行うほか、昨年4月に総合事務所化した県民局について、機動的な組織にするとともに、1県民局あたり3,500万円の地域戦略推進費を新設したほか、自治振興助成事業における地域重点事業や県単独土木事業の枠配分の拡充により予算調整機能の充実を図り、地域の課題に的確に対応する現地解決機能を強化することとしました。
また、定員の適正かつ効率的な配置に努め、特別職の給与の減額や一般職員の給与の抑制措置を継続するほか、試験研究機関の再編や公社等の見直しも進めます。
さて、地方分権の推進については、第二ステージを迎えた改革が地域の実情を踏まえたものとなるよう、国の動向も見ながら、成熟社会にふさわしい法令や制度のあり方を検討し、県自らの取り組みとあわせて積極的に提案・提言していく考えです。
法人事業税への外形標準課税の導入については、引き続き全国知事会等と連携して取り組む一方、県としても、法定外税や超過課税など課税自主権の活用について、広くご意見をいただきながら、その可能性を検討します。
市町合併については、昨年1月に策定した検討指針のフォローアップとして、今後の市町のあり方に関する地域での議論の場づくりに対して助成するなど、市町や住民の自主的な取り組みを支援します。

条例・事件決議

以上の方針のもとに編成した平成14年度の歳入歳出予算は、

  • 一般会計「2兆982億6,500万円」
  • 特別会計「1兆383億7,100余万円」
  • 公営企業会計歳入「1,556億600余万円」
  • 同歳出「1,707億5,300余万円」です。

次に、条例につきましては、男女共同参画社会づくり条例、産業の集積による経済及び雇用の活性化に関する条例等33件です。
事件決議につきましては、関西国際空港株式会社、阪神高速道路公団等に対する出資等10件です。

以上で平成14年度の主な県政施策と諸事業の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議のうえ、適切なご議決をいただきますようお願いいたします。

お問い合わせ

部署名:総務部秘書広報室広報広聴課

電話:078-362-3016

FAX:078-362-3903

Eメール:kouhouka1@pref.hyogo.lg.jp