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「ひょうごフィールドパビリオン」座談会
ひょうごフィールドパビリオンの核となる「SDGs体験型地域プログラム」に応募した地場産業の担い手と審査に携わるコアメンバーに、プロジェクトへの意気込みや期待についてお話を聞きました。皆さん県外出身で、外からの視点に基づいたアイデアなど、多様な意見が出されました。
齋藤 「ひょうごフィールドパビリオン」では、多くの方に現地を訪れ、見て、体験していただき、万博終了後も人が集まってくるようにしたいと考えています。
古田さん 昨年から県が取り組んでいる「兵庫テロワール旅」は、訪れた人が各地の魅力をその背景を含めて楽しむものですが、フィールドパビリオンはより地域の人々が主役となり、SDGsで掲げられている地域の課題解決につながる取り組みを発信することも重視されます。これからの観光は、ただ訪れるだけでなく、現地の人との交流が旅の目的にもなるでしょう。
齋藤 集まったプログラムを見てどのような印象を受けましたか。
古田さん まずは自分たちの地域の魅力に気付くことが大切だと感じています。認定までの過程では、素晴らしいコンテンツはさらに伸ばし、惜しいものにはアドバイスをしています。コンテンツ同士をつなげて宿泊のプランにするなど、まだいろいろな可能性を秘めています。
播州織のショールは、最終工程で天日干しに。 |
齋藤 応募されたお二人にも意気込みをお聞きしたいと思います。
西山さん 2014(平成26)年の豪雨による会社存続の危機を乗り越えた時に、これからは地元に貢献しようと思いました。弊蔵の建物は国の登録有形文化財で、県の景観形成重要建造物にも指定されているので、これらを活用した事業で人を呼び込み、地域の活性化につなげたいと考えています。
玉木さん 以前から世界に播州織を知ってもらいたいと思っていました。自分たちだけで大勢の人を呼び込むのは無理ですが、県の支援があれば周囲にも声をかけやすいので、チャンスだと思いました。職人さんは多くを語りませんが、人が来るうちに説明もうまくなるはずです。万博という決まったゴールがあるので、モチベーションを保つこともできます。
齋藤 今回のテーマの一つに「持続可能な社会の実現」があります。地場産業も、苦しい状況の中でどう未来につなげるかが課題ですね。
玉木さん 播州織は繁栄していた時代に分業化され、効率よく生産できるようになった半面、全ての工程を知る人が減りました。そこで、全てを知り潤滑油となってみんなをつなごうと、コットンの栽培を始め、間もなく糸作りもする予定です。万博までには全工程を学び、各工程のプロたちと連携できればと考えています。職人さんの高齢化も進んでいるので、今のうちにいろいろ受け継いでおきたいです。
こうじとヨーグルトを組み合わせた |
西山さん 日本酒は若い人たちには敷居が高い世界です。そこで、酒造りの発酵技術を生かし、酒以外に間口を広げることにしました。今秋、蔵を改装した複合施設がオープンします。発酵をテーマに発酵食を食べたり発酵調味料を作ったりしてもらうことで、日本酒にも興味を持っていただけたらうれしいです。
齋藤 取り組みを進める中で、どのような課題がありますか。
玉木さん 製品を作っているラボは見学や染色などの体験も可能ですが、ものづくりは簡単だと誤解されるのは避けたいと思っています。例えば藍染め体験はすぐにできますが、アイの栽培を含めた前工程は手間暇のかかるとても大変な作業です。そこを誤解されないよう、体験していただく前にその背景もきちんと伝えなくてはいけません。
古田さん 観光コンテンツについては、そこでしかできない体験が求められています。特に欧米では手仕事を国外に外注するようになったので、日本の手仕事に価値を感じてくれます。片手間のワークショップではなく、宿泊してじっくり本物の体験を提供していただけたら。ただし、中には手軽さを求める人もいるので、両方あればいいですね。
西山さん インバウンドの対応が課題です。外国語を話せる人材が少なく、コンテンツの価格設定も自分たちでは客観的な判断ができず悩みます。
古田さん 言葉については全国的に問題になっています。地域ごとに一括で受けて通訳ガイドを差配する方法がありますが、まだあまり例がありません。ただ、富裕層はガイドを連れて来るのでそれほど心配はいりません。また、今後はオンラインの申し込みも増えますので、専門業者に予約の受け付け業務などを頼む手もあります。
齋藤 万博終了後にどうつなぐかも重要です。
古田さん 「リジェネラティブ」という昔のものを見つめ直し、それを生かして新たなものを生み出す概念があります。今回はそういうものづくりを見つけるきっかけになるはずです。再編されてイノベーションが起こることで、新しい兵庫が生まれます。恐らくそれは「懐かしい未来」になるのではないでしょうか。
齋藤 フィールドパビリオンには、万博の来場者だけでなく県内の子どもや若い人たちにも訪れてほしいと考えています。ふるさとを知り、誇りを持つことが人口流出の抑制にもつながれば。万博を遠い話ではなく、ぜひ皆さんが“自分ごと”として捉えていただけたらと思います。
播州織 西脇市を中心とした北播磨地域では、温暖な気候を生かした綿花栽培と水量豊富な河川を背景に織物業が発展しました。先染めの糸で柄を織る播州織は、自然な風合いや豊かな色彩、肌触りの良さが魅力。糸染めから製造・販売まで地域で一貫して行っています。
(有)玉木新雌 |
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丹波の地酒 丹波地域は日本三大杜氏(とうじ)の一つ「丹波杜氏」のふるさと。現在も伝統を受け継ぎ、豊かな自然の中で7つの蔵で酒が醸されています。丹波杜氏たちは江戸時代後期から、冬の農閑期に伊丹や灘五郷などへ出稼ぎに赴き、各地の酒造りを支えました。
(株)西山酒造場 |
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こちらに本座談会の詳しい内容を掲載しています。ぜひご覧ください。
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