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ようこそ知事室へ
第361回兵庫県議会の開会に当たり、議員各位の日頃のご尽力に敬意と感謝の意を表します。
また、新型コロナウイルスの医療現場を支えていただいている医療従事者や関係者の皆様、そして感染防止対策にご協力いただいている県民や事業者の皆様に、改めて感謝申し上げます。
今月6日、トルコ南部で発生した地震により、トルコと隣接するシリアで甚大な被害が発生しています。亡くなられた方々に心から哀悼の誠を捧げるとともに、被災された方々が一刻も早く元の生活を取り戻されることを願っています。
本県とトルコとは、1999年のトルコ北西部地震を機に、20年以上にわたって防災教育等の交流を続けてきました。友好関係を育んできた兵庫として、10日には県議会・地方4団体・民間団体とともに義援金の募集を開始しました。この先、阪神・淡路大震災の経験と教訓を活かし、国際防災関係機関とも連携しながら、必要な支援を行っていきます。
それでは、提出議案の説明に先立ち、今後の県政について所信を申し述べます。
新型コロナが広がりを見せてから3年が経過しました。グローバルな経済活動が戻り、入国制限の緩和によりインバウンド需要も回復しつつあります。感染症法上の位置づけについても、5月8日に2類相当から季節性インフルエンザ並の5類に緩和する方向が示され、具体的な内容の検討が進んでいます。いよいよ真の意味でウィズコロナ時代を迎えようとしています。
一方、世界は混迷の度を増しています。昨年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。今なお収束の兆しは見えず、国際社会の平和と秩序が脅かされています。また、物流の混乱、エネルギー需給のひっ迫、原材料・部品不足などから世界経済は減速し、私たちの暮らしにも物価高騰などの深刻な影響が及んでいます。
これらは一年前には想像の及ばなかったことではないでしょうか。気候変動、技術革新、人口減少といった構造的変化もスピードを増しており、ますます先の見えづらい時代になっています。
「一言にして国を滅ぼすは『どうにかなろう』の一言なり。幕府が滅亡したるはこの一言なり」。江戸幕府の幕臣で、神戸港開港とともに我が国初の株式会社「兵庫商社」を設立した小栗上野介の言葉です。
欧米列強の植民地支配の波が日本にも押し寄せるなかで、幕末の若き志士達が、これまでのやり方ではこの危機を乗り越えることはできないと立ち上がり、新しい国づくりを進めました。
150年余りが経過した今、時代は当時のように大きな転換期を迎えています。だからこそ、「どうにかなろう」と立ち止まるのではなく、一歩を踏み出していかなければなりません。前に進めば、見える景色も変わり、やがて私たちの不安は可能性へと変化していくでしょう。臆することなく前進する。新たなチャレンジで扉を開く。それが私のめざす「躍動する兵庫」です。
もとより、行動を起こす上では、多角的な視点で状況を捉えることが不可欠です。激動の時代にあって、私はビジネスの世界でも強調される「3つの目」を持つことが重要だと考えています。
1つは「虫の目」。近づいて見ることであり、現場主義の徹底です。知事就任以降、可能なかぎり県内各地に足を運び、現場の生きた情報を得て施策にもつなげてきました。この基本姿勢はこれからも揺らぐことはありません。
県土は広く、人や地域によって多様な考え方や課題があります。一面的な見方を押しつけては、分断や対立が生じるでしょう。多様性を尊重し、対話をしながら解決策を探る。引き続き、この点に意を用いた現場主義の取組を進めます。
第2は「鳥の目」。空高く飛ぶ鳥の目線のように、大局的な視点で俯瞰することです。例えば、兵庫の地は、関西と瀬戸内の結節点に位置しており、この特長を最大限に活かさなければなりません。大阪・関西万博を契機にさらなる発展をめざす関西。美しい島々やアートで世界の注目を集める瀬戸内。この両エリアとの連携を広げ、兵庫が要に位置する大交流圏の形成をめざします。
また、こうした空間軸とともに、時間軸も俯瞰する必要があります。2025年の万博や瀬戸内国際芸術祭、2027年のワールドマスターズゲームズ、さらに2030年の神戸空港の国際化など、来たるプロジェクトをにらんだ取組を計画的に進めます。
第3は「魚の目」。潮の流れを読む魚のように、時代や社会の流れを捉えることです。だれ一人取り残さない世界をめざすSDGsや、カーボンニュートラルの実現に向かう動きはその代表例であり、兵庫としてどう戦略的に取り組むかが問われています。また、次の時代を牽引する成長産業をどう創り出すか、人口減少が進む時代にどう地域の持続性を高めるかなど、時代や社会の流れをつかみ、スピード感をもって布石を打っていきます。
新年度の当初予算編成にあたっては、次の3つの点に重きを置きました。
まず、新しい時代の力を育むことです。
兵庫の持続的な発展には、子どもたちが未来を切り拓いていく力の育成や、兵庫を舞台にいきいきと働ける場の創出が不可欠です。
新年度予算では、快適な環境で充実した学びができるよう、県立学校の施設や部活動の環境改善、特別支援学校の狭隘化対策等に力を入れるとともに、国際的視野を育む教育の充実に向けた検討も進めます。また、水素など次世代成長産業の育成、県内学生のスタートアップ支援、企業におけるダイバーシティ&インクルージョンの促進など、若者がやりがいを持って働ける環境を広げます。
二つには、人の流れを生み出すことです。
大阪・関西万博まで残り2年余りとなりました。兵庫の可能性が大きく広がる2025年となるよう、コンテンツの磨き上げや国内外へのプロモーションなど、フィールドパビリオンの取組を加速させます。今年7月から始まる兵庫デスティネーションキャンペーンでも、テロワール旅誘客を強化し、2025年につなげていきます。
また、コロナ禍によって、人々の暮らし方や働き方に変化が生まれ、県内の多自然地域でも社会増に転じた市町が見られます。こうした動きを一過性のものにすることなく、移住施策の強化、市街化調整区域の土地利用の促進、高規格道路ネットワークの整備など、人の流れをさらに呼び込む取組に力を入れます。
三つ目は、一人ひとりに寄り添うことです。
県民生活を支える要となるのが安全安心の基盤であり、ヤングケアラーや課題を抱える妊産婦など、支援の行き届きづらい方々への対応等に努めてきました。
新年度においても、不妊・不育症治療の充実や児童虐待対策の強化、社会的養護経験者であるケアリーバーの自立支援、さらには働き盛りの方の自殺対策やユニバーサルツーリズムの推進などに取り組みます。兵庫で暮らす人も、働く人も、訪れる人も、だれもが安心して過ごせる兵庫づくりに意を用いました。
もとより、以上3つの重点は、人口減少の克服に眼目を置いたものでもあります。
現在、国は子ども・子育てを最重要政策と位置づけ、出生率の反転に向けた対策強化の検討を進めています。子育て施策をめぐる過度な自治体間競争は財政力による格差を生み、東京一極集中も加速しかねないだけに、国家プロジェクトとして国が責任を持って臨むべきと考えます。
その上で、県としては、依然として高い水準で続く若者流出への対策や、特別な支援を必要とする方々への対応などに一層力を入れていかなればなりません。このことから新年度予算で力点を置いたのが、シビックプライドにもつながる教育の充実、地域経済の活性化を通じた雇用の創出、若者や女性等が働きやすい環境づくり、地方への関心の高まりを捉えた移住促進、不妊・不育症治療や児童虐待対策の強化などです。
人口対策に即効性のある特効薬はありません。地域創生戦略のもと、各般の取組をしっかりと積み重ね、人口減少の克服をめざします。
以下、主な施策を説明します。
まず、持続的に発展する兵庫経済の構築です。
その一は、次世代成長産業の創出です。
兵庫経済の競争力を持続的に高めていくには、ものづくり県としての強みを活かしながら、成長分野への投資を加速させていかなければなりません。このため、産業立地条例を改正し、次世代エネルギーやロボット、半導体などを重点立地促進事業に指定し、全県域で支援を拡充します。また、万博やカーボンニュートラルポート等で国内外から注目を集めるベイエリア地域を、新たに投資促進地域として設定します。加えて、中小企業もより投資を行いやすくするため、支援の投資額要件を大幅に緩和します。
先月、姫路で開催した「水素社会推進シンポジウム」では、県内の自治体、産業界、大学等が集い、オール兵庫で水素社会の先進地を創り上げていくことを誓い合い、広く発信しました。
その核となる取組が、水素サプライチェーンの拠点づくりです。今夏を目途に播磨臨海地域のカーボンニュートラルポート形成計画を取りまとめ、官民連携で推進していきます。また、水素関連産業への中小企業の参入支援を行うとともに、国に対しては製品開発に必要な公的試験機関の整備と県内への立地を働きかけます。水素ステーションやFCバス等の普及拡大に向けた財政支援も強化します。
万博時の空飛ぶクルマの県内飛行をめざし、取組を本格化させます。1月24日には、空飛ぶクルマの機体開発を進めるSkyDrive社と連携協定を締結しました。新年度は、有識者会議の設置による飛行ルートや利用シーンの検討、離着陸場の候補地の抽出・選定、事業開発を行う事業者への支援など、具体的な取組を横断的に進めます。
ドローンについては、昨年12月、目視せず、市街地の上空を飛ばせるレベル4での運用が解禁されました。県内の課題解決に資する先導的な実証事業を推進します。
その二は、スタートアップ支援の強化です。
斬新なアイデア・技術で地域課題の解決を図るプレーヤーとして、スタートアップはますます重要な存在となっています。
地域課題とスタートアップ等をマッチングする「ひょうご TECH イノベーションプロジェクト」を拡充するとともに、スタートアップ・既存企業・大学など様々な主体が連携して課題解決にあたるオープンイノベーションを推進します。
先日、シンガポールのスタートアップ拠点を視察しました。シンガポールはアジア有数のスタートアップ集積地であり、多様性とエネルギーに満ちていました。
本県の起業プラザひょうごについても、海外の支援機関との連携を広げ、国内外の起業家のハブとしての機能を強化します。
また、地域しごとサポートセンターを、現在の都市部に加え、新たに多自然地域に3ヵ所設置し、地域に根ざした起業等の支援体制を充実します。
「自ら起業し、社会課題の解決に貢献したい」。こうした想いを持つ県内学生や外国人留学生を応援します。起業時の資金支援のほか、起業プラザひょうごの一定期間の無料利用、相談窓口の開設、支援プログラムの創設なども行います。
その三は、地域経済を支える産業の振興です。
新型コロナの長期化や物価高騰により、事業者の経営環境は厳しい状況にあります。中小企業制度融資の融資枠を、今年度と同額の5,000億円確保し、資金繰りを支えます。また、金融機関によるゼロゼロ融資実行先の経営改善や成長力強化を促す伴走型支援を継続します。
企業価値の向上や人材の確保等を図る上で、SDGsの重要性が増しています。中小企業の間でも意識は高まっており、今年度開始したSDGs推進宣言事業では、登録企業数が当初の想定を上回る300社を超えました。
新年度は、登録企業の中から一定の要件を満たす企業を県が認証するSDGs認証事業を立ち上げます。県信用保証協会の保証料軽減などインセンティブも付与することで、取組の裾野の拡大とレベルアップを図ります。
その四は、兵庫で働く人材の確保・育成です。
就職後の奨学金返済が大きな負担になっています。そこで、県内中小企業と連携した奨学金の返済支援制度について、就職後5年間本人負担をゼロにする制度へと大胆に見直します。これにより、若者の経済的な安定と県内就職の促進につなげます。
このほか、大学低学年向け企業見学会の拡充、SDGs認証企業等を集めた合同就職説明会の開催、企業と理工系学部生との交流機会の創出など、県内企業への就職支援を強化します。
多様な人材がその能力を最大限に発揮するダイバーシティ&インクルージョンは、企業経営における大切な価値観として浸透してきています。県としてもその取組を後押しすることが重要です。
女性活躍等に積極的に取り組むひょうご・こうべミモザ企業を積極的にPRし、女性の県内就職を広げます。
「兵庫で働きたくても、チャンネルが不足している」。そんな外国人留学生からの声を踏まえ、留学生採用のワンストップ窓口や、留学生と県内企業とのマッチング機会を拡充します。
その五は、持続可能な農林水産業の実現です。
脱炭素化やSDGsの流れを受け、有機農業を含む環境創造型農業への関心が高まっています。コウノトリ育む農法をはじめ、本県はこれまで先導的な取組を進めてきました。この知見も活かしながら、環境創造型農業の取組面積の拡大や販路の確保等について具体的方策を検討し、実行に移していきます。
地域の農業の持続・発展に向け、将来の農地利用の姿を明確化する地域計画の市町による策定を支援するとともに、地域と連携して農業に参画する企業の支援、農業と他の仕事を組み合わせて働く半農半Xの促進などに取り組みます。スマート農業技術の普及支援も強化します。
農林水産物の輸出額は、外食需要の回復や円安の影響により伸びています。海外でのさらなる認知度向上や販路開拓に向け、現地のトップシェフやメディアへのトッププロモーションを展開します。これにより、輸出の拡大はもとより、万博での誘客にもつなげます。
昨年11月、天皇皇后両陛下ご臨席のもとで開催した全国豊かな海づくり大会。この成果を県民総参加の海づくりへと発展させていくため、「ひょうご豊かな海づくり県民会議(仮称)」を立ち上げます。SDGsの実現にもつながる取組の輪を広げ、次世代につなげていきます。
その六は、脱炭素化の推進です。
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、企業版ふるさと納税制度による寄附金も活用し、取組を加速します。
特に、県内企業の脱炭素化を後押しするため、事業活動により排出される温室効果ガスを把握するサービスや、PPA方式による太陽光発電設備等の導入を支援します。また、脱炭素製品等の購入を促進するため、地場産品や農産物の製造過程での温室効果ガス排出量を見える化するカーボンフットプリントの取組も進めます。
市町の森林整備を支援するため、Jクレジット制度の活用を広げます。市町が行うクレジット発行への支援に加え、新たに市町と企業のマッチングの場を設けます。また、養殖ノリのブルーカーボンとしての可能性等も検討します。
第二に、魅力あふれる地域・交流圏の形成です。
その一は、観光ツーリズムの振興です。
国内最大級の観光キャンペーンであるデスティネーションキャンペーンが、いよいよ今年7月から3ヵ月間、「兵庫テロワール旅」をテーマに実施されます。地域に根ざした食や文化を味わう。そのルーツや歴史を知る。受け継いできた人々の想いを感じる。地域性をとことん追求した旅のスタイルで、多くの人々を五国に誘います。
その二は、2025年大阪・関西万博に向けた取組です。
世界中から約2,800万人が訪れる大阪・関西万博に向け、人の流れを兵庫に導く仕掛けづくりを本格化させます。
先般、本県が実施予定の事業やロードマップを示したアクションプランを取りまとめました。その推進体制として、3月には自治体、経済界、交通事業者、県民等で構成する協議会を立ち上げます。様々な関係者と方向性を共有し、兵庫全体で推進します。
ひょうごフィールドパビリオンのSDGs体験型地域プログラムの募集に対し、100件を超える応募がありました。今後、一定の基準を満たすプログラムを認定し、受入環境の整備や人材育成研修、コンテンツの磨き上げ等を行います。
また、国内外でプロモーションを展開します。先日、シンガポールで行ったトッププロモーションでは、兵庫の食や地場産品等に高い関心が寄せられ、手応えを感じました。引き続き、海外を含むトップセールスのほか、WEBサイトによる情報発信の強化、500日前イベントの開催など、様々な形で兵庫の取組を発信していきます。
万博会場の兵庫棟(仮称)、および県内拠点である県立美術館については、「兵庫の各地に行ってみたい」と来場者に強く印象づけられるような発信内容を検討の上、設計に入ります。
加えて、テーマに応じたイベントを集中的に行うテーマウィークや、県内の子ども達が参加するプロジェクトなどの企画も具体化を進めます。
誘客促進には、近隣府県と連携した広域観光も重要です。2025年の万博や瀬戸内国際芸術祭の開催もにらみながら、外国人観光客の取り込みを意識し、関西観光本部や大阪府と連携したコンテンツ開発やプロモーション、せとうちDMOと連携した広域周遊ルートの形成等に力を入れます。
その三は、地域の魅力向上です。
兵庫県域の大阪湾ベイエリアの活性化に向け、目指すべき将来像や取組の方向性等を示す基本方針を、今年度中に取りまとめます。これに基づき、新年度からは先行プロジェクトをスタートさせます。
海上交通については、クルージング MICEの支援や、岡山県・香川県との周遊クルーズ実証、淡路交流の翼港の浮桟橋の改良等を行います。海外の富裕層等をターゲットにしたスーパーヨットの誘致活動にも取り組みます。
まちの活性化につながるような元町全体のグランドデザイン策定に向けて検討を進めます。併せて、テレワークやペーパーレス化などの新しい働き方等を踏まえた県庁舎のあり方、地元からの要望が強いJR元町駅西口周辺のバリアフリー化についても検討します。
なお、現庁舎の安全対策は、現在実施している時刻歴応答解析による耐震診断の結果を踏まえ、適切に判断します。
交通網の充実等によって、市街化調整区域への産業立地等のニーズが高まっています。このため、都市計画審議会の専門委員会で区域区分のあり方を検討しており、今年度中に見直しの考え方を取りまとめる予定です。今後、市街地の無秩序な拡大や農地への影響に留意しながら、市町の意向把握や市町間の調整等を進め、令和7年度の都市計画区域マスタープランの見直しにつなげます。
併行して、大規模な立地案件等に対しては、部局横断のプロジェクトチームが市町を支援する仕組みを構築し、スピード感をもって対応していきます。
これまでの地域再生大作戦の成果と課題を踏まえ、持続可能な多自然地域づくりプロジェクトを展開します。支援対象を多自然地域の全集落に広げるとともに、広域的な地域運営体制を構築するなど、県と市町の重層的な支援体制により、持続可能な生活圏の形成をめざします。また、躍動する兵庫応援事業を創設し、市町における地域創生の取組を支援します。
地方移住への関心の高まりを捉え、移住ニーズにきめ細かく対応していくことが重要です。「情報を集める」「窓口に相談する」「移住体験をする」「住居や仕事を決める」という移住に至る各段階の対策を充実するとともに、それを「ひょうご移住プロジェクト」として体系化して積極的に発信します。
その四は、スポーツ・芸術文化の振興です。
スポーツは、生活の質の向上、交流人口の拡大、スポーツ関連ビジネスの創出など、地域活性化に大きな効果をもたらします。また、アーバンスポーツやeスポーツなど、スポーツの多様化が進んでいます。これらを踏まえ、スポーツ行政の所管を知事部局に移管し、観光や地域振興などの施策とも連携を深めることで、スポーツの持つ力を最大限に発揮させていきます。
県民が芸術文化を楽しめる機会をさらに充実します。県立芸術文化施設を無料開放する「ひょうごプレミアム芸術デー」について、障害のある方や子育て中の方なども楽しめる取組を新たに実施します。市町の芸術文化施設にも参加を求め、身近に触れられる機会を広げます。
その五は、社会基盤の充実・強化です。
広域的な物流と人の交流を支え、地域の発展の基盤となる高規格道路ネットワークの整備を着実に進めます。東播磨道北工区については、3月21日に一部区間を開通し、引き続き残る区間の整備を推進します。北近畿豊岡自動車道、山陰近畿自動車道、名神湾岸連絡線、大阪湾岸道路西伸部、神戸西バイパスなど、事業中路線の早期整備も図ります。播磨臨海地域道路は、事業化に向け早期の都市計画決定を目指します。また、徳島県とともに、大鳴門橋の桁下空間を利用した自転車道整備に取り組みます。
JRローカル線は、県民の暮らしや交流人口の拡大に欠かせない社会基盤です。このため、路線の維持・活性化を大前提に置いた上で、沿線市町やJR、観光事業者等の参画を得て、JRローカル線の利用促進策の検討を重ねてきました。新年度はその結果を踏まえ、マイレール意識の醸成、観光キャンペーンの展開、駅周辺の賑わい創出などに取り組み、各路線の活性化を図ります。
第三に、希望と温かさに満ちた社会づくりです。
その一は、結婚・出産・子育て環境の充実です。
コロナ禍で人と人との接触機会が減った影響もあり、婚姻数が大きく減少しています。新年度から出会いサポートセンターの体制を見直し、登録からお見合いまでオンラインでできる新システムの運用を開始します。また、AIを活用したマッチングの導入、市町・民間との連携強化等も進め、結婚を希望する男女の出会いを支援します。
「所得制限があるため、支援制度を周知しづらい」。不妊治療外来での意見交換で、現行制度の課題について指摘を受けました。より不妊検査を受けやすい環境をつくるため、不妊治療ペア検査費助成の所得制限を撤廃し、夫婦の受診間隔要件も緩和します。同様に、不育症の検査費・治療費助成についても所得制限を撤廃します。
また、不妊治療支援体制のあり方を協議する検討会を立ち上げ、今後の取組に活かしていきます。
核家族化や地域の人間関係の希薄化によって、子育ての知恵が継承されず、保護者の約7割が子育てに不安を感じています。保護者が子供とのより良い関わり方を学べるよう、ペアレントトレーニングプログラムを整備し、市町等と連携して支援に取り組みます。
先日訪れたこども家庭センターの一時保護所では、厳しい境遇にありながらも、活発に駆け回って遊ぶ子どもたちの姿が深く胸に刻まれました。残念ながら、児童虐待の相談件数は増加を続け、複雑・困難なケースも増えています。
体制を強化するため、川西こども家庭センター一時保護所の整備に入ります。また、西宮・川西・姫路・豊岡の各こども家庭センター管内で里親支援センターの開設準備を進めるとともに、里親・特別養子縁組業務の委託により民間の力も活かして対応を充実します。
その二は、教育への投資の強化です。
「老朽化した施設を改善して欲しい」。県立高校を訪れた際、多くの生徒から環境改善を望む声を聞きました。選択教室や体育館の空調整備、部活動の用具の改修・更新、グラウンドの芝生化、特別支援学校の狭隘化対策などに、令和10年度までの6年間で約300億円を集中投資し、生徒ファーストの視点に立った環境整備を進めます。
東播磨地域では、特別支援学校の児童生徒数が著しく増加しています。先の視察では、普通教室が不足し、特別教室を転用せざるを得ない状況など、狭隘化の深刻さを改めて痛感しました。今後、いなみ野特別支援学校の建替や、東はりま特別支援学校の校舎の増築、市立学校施設の活用による新校設置を進めます。
豊岡聴覚特別支援学校と出石特別支援学校の発展的統合については、新校舎整備を進めるとともに、新校舎の近隣の機関と連携し、当エリアで農福連携などの取組が展開できるよう検討していきます。
昨年7月に県立高校の発展的統合を発表して以降、教職員、生徒、保護者及び地域の関係者の皆様と丁寧な議論を重ねてきました。
今後は、各学校の基本計画に基づき、学校の特色や学びを、統合後の学校に継承することが重要です。円滑な統合に向け、新しい学習環境の整備や各校の交流を進めます。
教育課題が多様化・複雑化する中、教職員の負担軽減が大きな課題となっています。市町等からの要望も踏まえ、スクール・サポート・スタッフの全小中学校への配置に向けて制度を拡充します。
「県内のどこに住んでいても、実践的な英語教育を受けられる環境をつくってほしい」。グローバル化の進展を背景に、そうした声を各地で聞きます。アジアや世界のビジネスハブとなっているシンガポールも、公用語が英語であることが、発展の重要な役割を果たしていると言われています。
これからの若い世代は、学業やスポーツ、ビジネス等の分野で、兵庫を拠点に世界と交流しながら力を伸ばしていくことが重要であり、その際に求められるのが、自分の意見や考えを英語などで直接伝えていくことです。
国際的視野を育む教育を強化するため、具体的方策を研究する検討会を設置し、国際教育の充実をめざします。
私立学校に通う家庭の負担軽減のため、授業料の軽減措置を拡充します。平均授業料の上昇に伴う助成額の引上げを行うとともに、多子世帯には新たに助成額の加算を行います。
その三は、一人ひとりが尊重される社会づくりです。
「行きたいところへ自由に旅行ができる環境にして欲しい」。障害のある方の声が寄せられています。年齢や障害の有無に関わらず、だれもが気兼ねなく旅行を楽しめる。そんな兵庫をめざして、全国初となる条例を制定し、ユニバーサルツーリズムを推進します。宿泊施設の宣言・登録制度を創設し、ハード・ソフト両面で支援するなど、受入体制の充実を図ります。
社会的養護経験者、いわゆるケアリーバーは、頼れる保護者がおらず、退所後の生活に不安や課題を抱えておられます。相談室等を設けて自立支援を行う事業所を応援するとともに、今後のさらなる対策に向けて退所後の実態調査を行います。
コロナ禍で経済環境や生活様式が変化した影響などにより、働き盛り世代、特に女性の自殺者が増加しています。企業における自殺予防研修会を開催し、同僚の悩みに気づき、必要な支援につなげるゲートキーパーの養成などを支援することで、企業内での気づきを専門的な窓口につなぐ体制を構築します。
第四に、安全安心基盤の強化です。
その一は、新型コロナ対策です。年末から急拡大を続けていた第8波の新規感染者数は、ここ数週間、減少傾向が続いています。他方、季節性インフルエンザの患者数の増加が続き、新たな変異株の動向にも注意が必要です。県民の皆様には、引き続き基本的な感染対策の徹底とワクチン接種にご理解とご協力をお願いします。
この春の5類への移行にあたっては、入院勧告や公費負担等の法的根拠がなくなることから、財源も含めて、保健・医療現場に混乱が生じないよう、万全の対策を国に求めていきます。県としても、国の方針や医療現場の実態等を踏まえ、今年度中に5類移行後の方針を固めます。
その二は、医療・介護体制の充実です。
産科医不足は多自然地域を中心に依然として深刻で、地元自治体から切実な声が上がっています。また、晩産化等によるリスクのある妊娠や低体重児の出生割合の増加も課題となっています。このため、産科医療体制に関する研究会を設置し、安心して妊娠・出産できる体制について検討を進めます。
コロナ禍で面会が制限される中、多くの入院患者から病室のWi-Fi整備の要望がありました。
すべての県立病院において、万全の安全対策の下、Wi-Fi環境の整備を進めます。これにより、オンライン面会での活用など患者やその家族へのサービス向上と、病院機能の高度化を図ります。
介護現場での生産性向上を支援するワンストップ型の相談窓口を設置し、介護ロボットやICTの導入等を促進します。
また、在留期間の制限なく長期継続就労ができるよう、特定技能外国人の介護福祉士の資格取得を支援するなど、外国人介護人材の定着を図ります。
その三は、安全安心な暮らしの実現です。
犯罪被害者等が置かれた状況を理解し、社会全体で支えていかなければなりません。新たに制定する条例のもと、サポートセンターを立ち上げ、切れ目のない被害者等支援と県民理解の促進を関係機関と連携して進めます。
インターネット上の誹謗中傷やLGBT等への偏見・差別など、人権問題が多様化していることを踏まえ、専門家を中心としたサポートチームを設置し、対応を強化します。
ストーカー殺傷事件や広域強盗事件が発生し、県民の不安が高まっています。
ストーカー被害の相談対応を強化するとともに、新たに通信機能付きGPS端末の貸与を開始します。また、防犯カメラの設置支援の加速化、AI技術を活用した防犯カメラ顔画像解析システムの整備、地域団体への防犯アドバイザー派遣を行います。
子どものスマホ等の利用が進み、健康への悪影響が懸念されることから、対応策を検討してきました。今年度中に健康面に配慮した適正利用のガイドラインを取りまとめます。これに基づき、新年度は効果的な啓発素材を作成するとともに、教職員や保健師等への研修による周知、夏休み・冬休み中の啓発動画配信など、様々なチャンネルを通じて啓発を強化します。
増加する児童生徒の不登校を踏まえ、県、市町、学校、関係機関等が一丸となって不登校の児童生徒を支える体制を構築します。また、県内すべての小中学校に「不登校対策チーム」を設置し、支援プランの作成・実施等を行います。
その四は、防災・減災対策の強化です。
南海トラフ地震や頻発する風水害に備え、強靭な県土を構築します。
湾口防波堤の整備、橋梁の耐震化、河川改修、防潮堤の嵩上げ、砂防堰堤や治山ダムの整備、緊急輸送道路の機能強化など、各分野の計画に基づき着実に取組を進めます。
災害発生時に被災者へすみやかに物資を届けるため、ドローンの活用可能性を探ります。防災訓練等において、目視外飛行や大型機により食料・医薬品等の救援物資を運ぶ実証実験を行います。
また、防災意識の向上と地域活性化の両立を図るため、県内の防災関連施設等をめぐる防災ツーリズムを推進するとともに、地域防災の担い手確保に向け、女性消防団員や少年消防クラブの充実・強化を支援します。
兵庫発の創造的復興という理念は、「ビルド・バック・ベター」として世界に広がっています。
万博が開催される2025年は震災30年の節目の年です。創造的復興の意義を被災地の知事等とともに発信するサミットの開催に向け、準備を進めます。
また、戦禍が続くウクライナ支援の一環として、阪神・淡路大震災の経験と教訓を踏まえた提言の策定など、創造的復興の理念を活かした支援を検討します。
第五に、県政の推進基盤の構築です。
その一は、県政改革の推進です。
今回見直した財政フレームでは、経済成長率の低下や金利の上昇等により、令和10年度までの収支不足額が115億円増加し、255億円となる見込みです。引き続き、歳入歳出両面における改善や地方財政制度の活用により、収支均衡をめざします。県議会はもとより、市町や関係団体等との対話を重ねながら、限られた財源の中でも、時代の変化やニーズに合った施策の推進を図ります。
職員の働き方改革については、新しい働き方推進プランに基づき、柔軟で多様な働き方やICTを活用した業務改革などを進めます。
また、人材育成に関する基本方針を策定し、求められる職員像を定めるとともに、新しい人事評価制度の導入などに取り組みます。
職員の協力のもと、長年実施してきた管理職手当の減額措置については、職員の士気高揚、人材確保等のため、段階的に縮小していきます。
その二は、公民連携の推進です。
昨年10月に設置した「ひょうごSDGs Hub」において、企業や大学等との連携事業を充実するとともに、「兵庫県SDGs WEEK」の開催、ポータルサイトの開設などにより連携の輪を広げます。また、内閣府の「SDGs未来都市」選定に向けて年度内に提案書を提出し、取組を具体化していきます。
「寄附を通じて地域社会に貢献したい」。こうした思いと地域の課題解決を図るプロジェクトを結びつけるため、ファンドレイジングに取り組みます。
県内外の企業等への渉外活動を強化し、企業版ふるさと納税等のさらなる獲得をめざします。
個人向けのふるさと納税も、体験型返礼品など魅力的な返礼品を充実するとともに、多くの方から賛同・共感を得られるプロジェクトを展開し、兵庫ファンの拡大につなげます。
その三は、広域連携の推進です。
関西広域連合では、防災など7分野の広域行政を着実に推進するほか、2025年の万博や2027年のワールドマスターズゲームズに向けて、構成府県市が連携を強化して取り組みます。
また、大阪府との産業・観光分野等での連携事業を進めるとともに、瀬戸内国際芸術祭の中心地である香川県など、様々な府県と具体的なテーマを定めた連携を広げていきます。
その四は、情報発信力の強化です。
公民連携型アンテナショップの展開など、兵庫ゆかりの人・企業の参画を得るプラットフォームをつくり、首都圏での情報発信を強化します。また、高校生が兵庫の魅力を取材し、発信する取組も始めます。
これより新年度予算の概要を説明します。
歳出では、社会保障関係費や万博関連事業の増加を見込む一方、新型コロナ関連事業の減や新年度から始まる定年延長による退職手当の減などにより、前年度予算を下回りました。
歳入では、企業業績の回復が続き、法人関係税などの増加により県税収入全体では過去最大となる見込みであり、臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税は減となるものの、一般財源総額では前年度当初予算を上回る見込みです。
この結果、有利な財源や地方財政制度も活用し、令和5年度当初予算では、引き続き、収支均衡を達成しています。
以上により編成した新年度の歳入歳出予算は、
一般会計 2兆3,596億9,600万円
特別会計 1兆6,062億5,800万円余
公営企業会計 歳入 2,955億2,500万円余
同 歳出 3,122億4,700万円余となります。
条例については、犯罪被害者等の権利利益の保護等を図るための施策の推進に関する条例など17件、その他、公の指定管理の指定など22件です。
先のサッカーワールドカップカタール大会では、日本代表が格上の強豪に相次いで勝利し、喜びと感動を与えてくれました。最後は惜しくも延長の末、PK戦で敗れましたが、その時、ひとつの言葉を思い出しました。
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」。イタリアの至宝と言われたサッカー選手が、98年のワールドカップでPKを外したチームメイトに真っ先に駆け寄ってかけた言葉です。ミスを恐れて蹴らなければ、傷つくことはありません。しかし、失敗を恐れて行動しなければ、何も生み出すことはできません。
PKを蹴る勇気。失敗を恐れない勇気。これを持ち続ける「躍動する兵庫」をめざします。そして、果敢な挑戦で兵庫のポテンシャルを解き放ち、次の時代の突破口を開いていきます。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議の上、適切な議決をいただきますようお願い申し上げます。
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