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ようこそ知事室へ
第357回兵庫県議会の開会にあたり、議員各位の日頃のご尽力に敬意と感謝の意を表します。
提出議案の説明に先立ち、今後の県政について所信を申し述べます。
新型コロナウイルスとの闘いが続いています。感染し、苦しんでおられる方々にお見舞い申し上げるとともに、お亡くなりになられた方々に哀悼の誠を捧げます。また、長期にわたり、対策の徹底にご協力いただいている県民・事業者の皆様、そして最前線で感染症と闘っている医療従事者をはじめとする皆様に、心から感謝申し上げます。
昨年8月の知事就任以降、新型コロナへの対応に最優先で取り組んできました。県民の命と健康、暮らしを守ることは、県の最大の使命です。引き続き、新型コロナ対策に最大限の力を注ぎます。
新たな変異株「オミクロン株」が全国で猛威を振るっています。本県も例外ではなく、1月25日にまん延防止等重点措置実施区域の指定を受け、昨日にはその延長を国に要請しました。
これまでのデルタ株と比較すると、重症化リスクは低いとされる一方で、感染力が非常に強く、爆発的に感染が拡がりました。その結果、入院患者や自宅療養者が増加するなど、保健・医療をめぐる状況は厳しさを増しています。
このため、応援職員の増強に加え、保健所業務支援室や自宅療養者等相談支援センターの設置などにより、保健所の体制強化を図っています。また、一般医療とのバランスも考慮しながら、さらなる病床の確保について医療機関と協議を進めているほか、医師会等と連携し、宿泊療養施設での医療ケア、自宅療養者への往診の充実等に取り組んでいます。
今後とも感染状況や入院・自宅療養者の状況等を注視し、必要な対策を迅速に講じていきます。
感染拡大防止と重症化予防の鍵となるのは、3回目のワクチン接種です。
県大規模接種会場の接種枠の拡大や県民への啓発強化など、市町とも連携しながら、さらなる接種促進に努めます。
また、感染症対策の機能強化を図ります。大学など専門機関と連携し、これまでの検証・データ分析により得られた知見や専門家からの助言を県の対策に反映させていきます。
昨年、第5波が収束に向かう中で、県内旅行支援の早期再開を実行したように、感染拡大防止と社会経済活動の両立に努めてきました。その基本姿勢に変わりはありません。現下の感染が収束する適切なタイミングで、ひょうごを旅しようキャンペーン、商店街の消費拡大キャンペーン、地場産品のPRイベントなどを実施し、需要の回復を図ります。
中小企業の倒産の増加が懸念されます。コロナ禍で売上が減少した企業に対し、実質無利子・無担保の融資等により支援を行ってきましたが、元金の返済に加えて、令和5年度以降、利子負担が始まるためです。金融機関が事業者に対して行う経営改善や成長力強化を促す伴走型支援への助成制度を創設し、地域経済と雇用を守っていきます。
新型コロナとの闘いは長期戦です。新たな変異ウイルスの出現も覚悟しておかねばなりません。困難な状況は続きますが、県民の皆様とともに乗り越えていきたいと思います。引き続き、ご協力をお願いいたします。
「冬来たりなば春遠からじ」
寒い冬の後にはやがて暖かい春がやってきます。コロナ禍を乗り越えた先に希望を持つことはもちろん、コロナ前よりも安心で活力に満ちた兵庫をめざさなければなりません。
待ち受けるのは激しい変化の時代です。人口減少や高齢化が進む一方、大都市集中型から分散型の社会に向かう潮流も生まれつつあります。
テクノロジーが加速度的に進歩し、AI、5G、自動運転などの技術が社会を変えていきます。メタバースは現実と仮想との境界を溶かし、人々は距離や時間の制約から解き放たれるでしょう。気候変動への対処を怠れば、自然災害や感染症のリスクを高め、食料生産や自然生態系にも深刻な影響を与えかねません。
あらゆる環境がめまぐるしく変化し、これまでの当たり前が当たり前でなくなる。そんな時代の中で、私たちが大切にすべき価値観は何でしょうか。このほど県政の羅針盤としてまとめた「ひょうごビジョン2050」の案では、特に大事なものとして「包摂」と「挑戦」を掲げました。
「包摂」は、だれも取り残されることのない社会をつくることです。激しい時代の波に飲まれ、置き去りにされる人をつくってはなりません。
100余年前、賀川豊彦は「一人は万人のために、万人は一人のために」と、日本初の生活協同組合を兵庫で立ち上げました。また、太平洋戦争末期の沖縄戦で、県民と苦難を共にした本県出身の島田叡沖縄県知事を引き合いに、貝原知事は「知事の責任は県土の一木一草にまで及ぶ」と使命感を示されました。
兵庫に連綿と受け継がれるこうした心構えや責任感を私もしっかりと継承し、大都市から農山村まで多様な地域に暮らすすべての県民が、安心して、育ち、学び、働き、遊び、幸せに生きられる環境をつくっていきます。
「挑戦」は、人も地域も思い思いのチャレンジができ、それぞれの可能性が開ける社会をつくることです。変化を前に、立ち止まったり、うずくまってはいけません。
現下のコロナ禍でも、スキルを活かして副業や地域活動を始めた方、新ビジネスに乗り出した企業、新たな移住促進策を打ち出した地域など、様々なチャレンジが生まれています。失敗を恐れず、進取果敢に挑戦する。そんな未来志向で行動する社会をめざします。
「包摂」と「挑戦」を両輪とする「躍動する兵庫」。その実現に向けて、県民とともに取り組むことで、少子化や人口流出に歯止めをかける、地域や経済の活力を持続的に高める、といった構造的な課題も必ず解決できると信じています。
私にとって初めてとなる当初予算編成では、その思いを具体化すべく3つの点に重きを置きました。
一つは、新たな成長の種をまくことです。
既成概念にとらわれない発想ができる若者たちの活躍を広げるスタートアップ支援の強化。デジタル化やグリーン化に挑む中小企業等の後押し。インバウンドの回復もにらんだ新たな観光戦略の推進。
人口の減少や産業構造の転換が進む中にあっても、なお持続的に成長・発展する兵庫を築いていくことに力を入れました。
次に、地域の価値を高めることです。
働き方や価値観の変化によって地方への関心が高まり、2025年には大阪・関西万博が控えています。この機を逃すことなく、人や投資をもっと惹きつけられる地域づくりが大切です。SDGsを切り口とした各地の食や地場産品の磨き上げ。高いポテンシャルをもつベイエリアの活性化。スポーツや芸術文化に親しめる機会の拡大。
地域の魅力やブランド力を高めていくことをめざしました。
三つに、安全安心の網を広げることです。
知事就任後、困難を抱える妊産婦を支援されている施設を訪れました。頼る人も生活の場もない女性の厳しい実情を肌で感じました。新型コロナの長期化による社会的な孤立・孤独も増えています。ヤングケアラーや医療的ケア児への支援創設。高齢者等の特殊詐欺被害対策やデジタルデバイド解消。災害に強い県土づくりや避難対策の強化。
新たに顕在化している課題も捉え、安全安心の網を広げることに意を用いました。
以下、分野ごとの柱に沿って、主な施策を説明します。
まず、新たな価値を生む経済の構築です。
その一は、産業競争力の強化です。
若者の挑戦を支え、社会課題の解決や新たな産業活力の創出につなげるため、スタートアップの育成を強化します。
国連機関UNOPS(ユノップス)と連携して支援を行っているスタートアップに対し、さらに1年間の追加サポートを実施し、本格的な海外事業展開につなげます。
「ひょうごスタートアップアカデミー」を開設し、中高大学生を対象に実践的な教育プログラムを提供します。これを通じて、社会課題の解決に主体的に取り組む若者を育成します。
デジタル社会を支える先端半導体や、脱炭素社会の実現に不可欠な次世代電池分野の重要性が増しています。産学官協議会を設置し、SPring-8やニュースバル、スーパーコンピュータ「富岳」等の科学技術基盤を活用した技術開発を促進します。また、トップセールスにより本県における研究成果等を発信し、拠点形成につなげます。
地域産業の競争力を高めるためには、中小企業の優れた技術を活かしながら変革を進めることが重要です。環境、医療、ロボットなど、成長産業分野への参入をめざす企業の新製品開発を支援するとともに、DX人材育成リカレント教育を強化し、ビジネスモデルの高度化を促進します。
中小企業や地場産業の産地組合によるSDGsの取組を支援し、企業や地場産品のブランド力アップにつなげます。
その二は、兵庫で働く人材の確保・育成です。
20代の人口の社会減が高止まりしています。このため、「チャレンジHYOGO就職大作戦」として、採用した企業に助成金を支給するおためし企業体験事業の創設、中小企業と理工系学生のマッチングの仕組みの構築など、UJIターンを含めた県内就職対策を強化します。
生産年齢人口の減少が続く中、多様な主体の就労をより一層サポートしていくことが求められます。女性活躍推進企業の認定制度の創設、シニア世代の就労マッチング機能の強化、障害者の工賃向上に向けた研修の新設、外国人留学生の県内中小企業への就職を促す事業の拡充など、取組を充実します。
コロナ禍を機に拡がっているリモートワークのような柔軟な働き方は、ワーク・ライフ・バランスの実現などのメリットだけでなく、地方への人の流れを生む上でも重要です。
ひょうご仕事と生活センターにテレワークサポートセンターを設置し、導入から定着までの相談に対応します。セミナーの開催等を通じ、ワーケーションの普及啓発も図ります。
その三は、新たな観光戦略の構築、推進です。
国内最大級の観光キャンペーンである兵庫デスティネーションキャンペーンを令和5年夏に予定しています。また、令和7年には国内外から約2,800万人が訪れる大阪・関西万博が控えています。コロナ禍で深刻な影響を受けた兵庫観光を再生し、次なる飛躍を図る絶好の機会です。
万博やMICEの需要も視野に入れた、新たな観光戦略を策定します。高付加価値の上質な旅の提供を通じて兵庫のブランド力を高めるとともに、関西広域の観光圏を形成し、圏域としての訴求力・集客力向上をめざします。
兵庫デスティネーションキャンペーンに先立ち、本年7月から9月にかけてプレキャンペーンを実施します。五国の食と、それを育んできた自然、文化などのストーリーを体験するテロワール旅を提供します。
首都圏富裕層をターゲットにした新たな観光・特産品の首都圏プロモーションも展開します。
高齢者や障害者など移動や宿泊等に困難を伴う方が旅行しやすいユニバーサルツーリズムを推進します。観光地人材の育成、モニターツアーの実施、ホテル・旅館のバリアフリー改修など、ソフト・ハード両面から推進強化を図ります。
その四は、農林水産業のさらなる振興です。
五国の豊かな自然と風土のもと、多彩な農林水産業が息づく兵庫。将来にわたる持続可能な農林水産業を実現すべく、取組を進めます。
ICTやセンシング技術を活用したスマート農業の普及に向け、産地の課題と企業の技術のマッチング等を行う仕組みを構築します。
また、但馬牛(うし)の改良手法にゲノム解析を取り入れ、肉質等に優れた但馬牛の増頭を図ります。
県産農林水産物の販路拡大をめざし、新たな取組を展開します。神戸・阪神間のスーパー等への広域配送ルートの構築を支援するほか、関西圏の飲食店において県産食材を使ったフェアを開催します。
学校給食での県産食材の使用割合は、3割弱にとどまっています。産地と給食サイドをつなぐアドバイザーの派遣、県外産原料の加工品との価格差補填などにより、学校給食での県産食材の利用拡大とそれを通じた食育活動の推進を図ります。
林業・木材産業の自立的発展と、森林の有する多面的機能の持続的な発揮のため、県産木材の利用を促進します。県産木材を利用した木造住宅の設計に対する支援を拡充するとともに、施設の木質化支援の対象を、多くの県民が利用する病院や商店街の共有スペース等にも拡充します。
全国豊かな海づくり大会を11月に開催し、豊かな海の再生に向けた本県の取組を全国に発信するとともに、県民総参加の運動として展開していきます。
栄養塩類の供給量増加をめざす栄養塩類管理計画を、海域への影響のシミュレーションも踏まえて策定します。
農林漁業者の中には、気候変動の緩和や生物多様性の保全等の取組を日々の活動に組み込み、実践している方々がいます。そうした活動を広げるため、SDGsに対する理解促進や、実践に向けた研修会、専門家派遣等を行います。
その五は、グリーン化の推進です。
2050年カーボンニュートラルをめざし、地球温暖化対策推進計画を今年度中に改定します。2030年度の温室効果ガス削減目標や再生可能エネルギー導入目標を引き上げます。
この目標達成に向け、県有施設の未利用スペースへの太陽光発電導入ポテンシャル調査を行うとともに、事業者の脱炭素型経営への意識向上を図る国際フォーラムを開催するなど、取組を強化します。
脱炭素社会の切り札とも言われる水素エネルギーの普及に向けた取組を加速させます。
姫路港には、安定して大量に水素を消費する可能性のあるLNG発電所等が立地しています。この特性を踏まえ、水素サプライチェーンの拠点化を含めたカーボンニュートラルポートの形成をめざし、計画策定に着手します。
淡路島では、豊富な再生可能エネルギーから水素を製造・貯蔵・活用する地産地消モデルの可能性を探ります。
水素は、次世代成長産業の代表格でもあります。試作品開発や実証試験、研究開発に取り組む中小企業を支援します。
水素モビリティの普及に不可欠な水素ステーションについては、これまでの中規模ステーションに加え、低コスト・低リスクで導入可能な小規模ステーションへの整備支援制度も創設します。
プラスチックごみ削減に向け、資源循環の取組を強化します。市町・事業者からなるコンソーシアムを設置し、効率的な回収や再生利用を進める広域連携スキームや、生分解性プラスチックの普及方法を検討し、全県展開を図ります。
国のJ-クレジット制度を活用した市町の森林整備を促進します。間伐等によるCO2吸収量をクレジットとして販売するにあたり、その発行手続きの支援を行います。
第二に、安全安心社会の先導です。
その一は、医療確保と健康づくりです。
はりま姫路総合医療センターが、5月に開院します。高度専門・急性期医療の提供、救急医療の充実、質の高い診療・教育・研修を行い、播磨姫路圏域における中核的な総合病院としての役割を担います。
歯及び口腔の健康は、全身の健康づくりや質の高い生活を営むために重要な役割を果たします。新たな条例を踏まえ、子どものむし歯予防対策、口腔がんの早期発見・治療、通所介護事業所における口腔ケアの定着促進など、ライフステージに応じた取組を展開します。
その二は、福祉社会づくりの推進です。
家庭内のケアを担うヤングケアラーについて、学業や精神面など日常生活への負担が指摘されています。モデル的に専門の相談窓口を設置し、ピアサポートや交流事業を行う団体の支援、関係機関の職員に対する研修の実施など、早期発見・把握から福祉サービスへの円滑なつなぎまで、一連の支援体制を構築します。
たんの吸引等の医療的ケアが必要な障害児が、地域で必要な支援を受けられる体制を構築します。医療的ケア児支援センターを設置し、ワンストップ相談に応じるとともに、家族交流会などを開催します。
特別養護老人ホームの整備を進めるとともに、在宅生活を支える看護小規模多機能型居宅介護への事業者参入を促します。退院直後の在宅生活への移行や看取り期の支援等により、高齢者が住み慣れた地域で生活できる社会をめざします。
加齢性難聴者の補聴器購入支援制度の創設について国に提案する根拠を裏付けるため、補聴器の装用と社会参加との関係性等を調査します。
その三は、安全安心な暮らしの実現です。
昨年度の特殊詐欺被害の件数は前年度の1.5倍にも及び、今年度も高い水準で推移しています。被害の未然防止を図るため、高齢者の自動録音電話機導入を支援します。
道路や交通安全施設の不具合などをLINEで通報できる仕組みを構築します。あわせて、横断歩道等の応急補修を行う機動補修班を、警察本部に設置します。
今後、老朽化マンションの急増が見込まれます。火災安全性の不足等により周辺に危害を及ぼす恐れがあるマンションについて、建替工事の助成制度を創設します。
昨年発生した死亡事故等により、水上オートバイに対する県民の不安が高まっています。適切な指導・啓発を行うマリーナ等の認証制度の創設、全国初となる県内の海域全てを対象とした自主ルールの設定など、官民連携で対策に取り組みます。県条例の罰則・規制強化については、公安委員会で検討を進めます。
その四は、災害への備えの強化です。
南海トラフ地震や頻発する風水害に備える強靱な県土を構築します。
分野別計画に基づき、(1)最大クラスの津波への対応や橋梁の耐震化などの地震・津波対策、(2)河川改修や堆積土砂の撤去、高潮対策などの総合的な治水対策、(3)砂防堰堤の整備などの山地防災・土砂災害対策等の取組を着実に進めます。
災害発生時に避難支援が必要な高齢者や障害者に対する市町の個別避難計画作成を後押しします。計画作成に重要な役割を果たす福祉事業者や自主防災組織への研修も進めます。
福祉避難所への直接の避難や感染症対策など、国のガイドライン改定に伴う設置・運営のモデル訓練を行います。その検証結果を踏まえて県マニュアルを改訂し、市町の取組を支援します。
第三に、未来を創る人づくりです。
その一は、子ども・子育て環境の充実です。
不妊治療は、4月から公的医療保険の対象となります。この機にシンポジウムの開催などを通じ、男性不妊を含めた不妊症・不育症への理解促進を図ります。
あわせて、不妊治療と仕事の両立を図るため、休暇制度の導入や従業員の理解促進に取り組む企業に対し、支援金を支給します。
「発達障害のこどもの保育園入園を断られた」。働く女性からの切実な声が届きました。県内では約7割の施設で障害児の受入を実施しています。しかし、国の支援制度は二人以上の受入が要件とされているため、一人の受入であっても県として支援を行います。
多胎育児家庭では、同時期に人数分の育児用品購入が必要となり、経済的負担が重くのしかかります。外出時に必要な二人乗りベビーカーの購入等への助成を行います。
予期しない妊娠等により、その後の生活に困難な課題を抱える妊産婦への支援を強化します。SNSを活用した相談窓口の周知、県営住宅の入居要件の緩和等による住まいの確保、社会福祉施設での就労支援など、総合的な支援を行います。
児童虐待に関する相談件数は増え続け、内容も複雑化・多様化しています。専門職員の拡充や市町との連携体制の充実等により、こども家庭センターの体制を強化します。
満床状態が常態化している一時保護所の拡充にも取り組まねばなりません。川西市での新規整備を進め、中央こども家庭センター一時保護所の建替・移転についても検討します。
その二は、学びの環境づくりの充実です。
教育用コンピュータなどのICT機器を、学びの質の向上に活かすことが大切です。個々の児童生徒に応じたきめ細やかな指導・支援のほか、多様な人々との学び合いへの活用も進めます。
また、ひょうごリーディングハイスクールとして、国際的に活躍できる人材育成など、本県ならではの魅力・特色ある高校づくりのためのカリキュラムを開発します。
いじめ・不登校への対応をはじめ、学校現場の課題は複雑化・多様化しています。教育事務所に、教員や警察職員のOB、弁護士等の専門家で構成する学校問題サポートチームを設置し、事案発生時の機動的な支援等に取り組みます。
児童生徒数の増加により、教育活動に制約が生じている特別支援学校の教育環境改善も必要です。4月に小中学部を開校する「むこがわ特別支援学校」は、高等部・聴覚部門を含めた令和6年度の全面開校に向け、引き続き整備を進めます。阪神北地域の新設校の整備にも着実に取り組みます。
第四に、個性を磨く地域づくりです。
その一は、五国の魅力向上です。
県内の団体からユニークな提言をいただきました。17のゴールからなるSDGsに、兵庫県独自の18番目のゴールを加えようというものです。
その内容は、「兵庫各地の特色を活かして、地域活力を生み出す」。まさに兵庫ならではの目標であり、県として提言をしっかり受け止め、地域創生の取組を前に進めていかなければなりません。
国内外との交流が広がる神戸・阪神。次世代産業や地場産業を核に発展する播磨。自然やリゾートを舞台に滞在人口が増える但馬。大都市近郊の田園空間や食文化が人々を惹きつける丹波。食のブランド化やツーリズムに磨きがかかる淡路。五国の魅力を活かした取組をさらに推進し、兵庫全体の活力へとつなげていきます。
第二期地域創生戦略は、中間年度を迎えます。新しい将来ビジョンや時代潮流を踏まえ、戦略を見直します。
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする万博。世界中の叡智が結集し、健康、気候変動、災害など様々な課題の解決策を提示し、SDGs達成に寄与することをめざしています。
本県でも、県土全体をパビリオンに見立てた「ひょうごフィールドパビリオン」を展開します。SDGsを体現する地域の活動現場を国内外の多くの方々に見て、学び、体験していただく取組です。庁内体制を整備し、機運醸成や資源の掘り起こし等に取り組むとともに、万博会場に関西広域連合と共同出展するパビリオンの展示基本計画の策定を進めます。
その二は、大阪湾ベイエリアの活性化です。
人口・企業・研究機関等が集積する大阪湾ベイエリアは、人・モノ・投資を国内外から呼び込み得る高いポテンシャルを有しています。万博開催を契機に、県内の関係市町や観光事業者、学識者等の参画を得て、兵庫県域の活性化基本方針を取りまとめるとともに、新たなグランドデザインの策定をめざします。
「非日常を味わえるようなブランド化が必要ではないか」昨年11月の海上交通実証実験では、大学生や企業の方と、ベイエリアの未来について活発な議論を交わすことができました。
海上交通の充実に向け、将来的な民間商用運航も見据えながら、新たに関空や天保山等を発着する航路において、船上での会議スタイル「クルージングMICE」の実証実験を行います。
また、海上観光ツアーの開発、大きな消費効果が見込まれるスーパーヨットの誘致等も進めます。
その三は、地域の活力の創出です。
移住・定住やワーケーションの受け皿として、空き家を有効活用していく必要があります。流通・活用を促すため、新たな条例を制定し、空家活用特区内における規制緩和や補助制度の創設を行います。
市街化調整区域の厳しい建築制限によって、移住や出店、事業拡張等のニーズがあっても応えられず、地域の活力が失われているとの声があります。昨年11月に設置した土地利用推進検討会の中でも、見直しの検討を求める意見が示されました。都市計画審議会に新たな専門委員会を設置し、令和7年度の都市計画区域マスタープランの見直しに向け、区域区分の要否を含めた検討を進めます。
コロナ禍での外出先として県立都市公園の人気が高まっています。さらなる魅力向上のため、明石公園、播磨中央公園、赤穂海浜公園において、公園施設の整備や維持管理について、民間のノウハウと投資を呼び込むPark-PFI等の導入に向けた調査を行います。
県庁舎等再整備事業は一旦凍結し、新たに民間投資を呼び込むような将来の元町全体のグランドデザインを描くべく、民間ヒアリングや先進事例調査などを行います。その中で、県庁舎整備のあり方についても検討し、現庁舎を当面活用する場合は、必要となる耐震改修の方策等についても検討を行います。
子どもから高齢者まで、世代を越えて誰もが参加できるコンテンツとして、eスポーツへの注目が高まっています。eスポーツを通じた地域活性化や多世代間交流の促進を図るため、モデル的にイベント等を開催し、効果等を検証します。
その四は、デジタル化の推進です。
国のデジタル田園都市国家構想でも示されているように、地域の活性化に向け、地域課題をデジタル実装により解決する取組を加速していかなければなりません。
そのためには、都市・地域全体のまちづくりにICT技術・データを活用するスマートシティの取組が重要です。市町や企業・大学等とコンソーシアムを組成し、健康・医療、交通、観光、教育など、地域の課題に対し連携してモデル事業を推進します。得られた成果は県内の他市町に展開し、取組の裾野を広げていきます。
デジタル化の推進と並行して、デジタルデバイドの是正に取り組むことが必要です。高齢者等のスマホ利用を支援する講習会開催や、地域で相談に応じる人材の養成、障害者のIT利用に関する相談窓口の設置など、新たな取組を展開します。
その五は、スポーツ、芸術文化の振興です。
東京オリンピックでは、スケートボードなどのアーバンスポーツが、日本勢の大活躍で一躍脚光を浴びました。若者をはじめとしたスポーツ人口の拡大や地域の活性化に向け、競技体験会の開催や大会招致に係る支援を行い、裾野の拡大を図ります。
芸術文化は、安らぎと感動、心の潤いを与えてくれます。県民が芸術文化を楽しめる機会を充実するため、「県民プレミアム芸術デー」を創設します。県立美術館などの県立芸術文化施設を無料開放するほか、特別イベントを実施します。
その六は、交流を支える社会基盤の形成です。
基幹道路ネットワークは、広域交流を支えるとともに、防災や安全安心にも資するものです。大阪湾岸道路西伸部や北近畿豊岡自動車道、東播磨道など事業中路線の着実な整備を引き続き図るとともに、名神湾岸連絡線における有料道路事業の早期導入、播磨臨海地域道路の早期事業化に向けた手続き、山陰近畿自動車道の豊岡北から城崎温泉間の権限代行による早期事業化などを、国へ働きかけます。
第五に、県政運営の改革です。
その一は、新しい将来ビジョンの推進です。
新ビジョンの実現に向けて県民とともに取り組むため、広く情報発信し、浸透を図ります。また、具体的なプロジェクトを生み出す仕掛けとして、地域の多様な主体をつなぐプラットフォームを各地域に設置します。
その二は、SDGsの取組の推進です。
健康、経済、環境等の課題がコロナ禍で浮き彫りとなる中、SDGsの達成に向けた行動の重要性が高まっています。本県においても、部局横断的な体制を整備し、SDGsの理念に即した施策を推進するとともに、企業や大学等との連携を図ります。あわせて、「SDGs未来都市」の認定に向けた計画策定に取り組みます。
その三は、開放性の高い県政の推進です。
昨年10月に設置した「ひょうご公民連携プラットフォーム」の機能を拡充します。民間人材の活用やポータルサイトの設置により、県と企業等のマッチングや連携事業の具体化をより一層推進します。
地域課題を解決するため、起業家や事業者が有する情報通信技術や工業技術の活用を図る「兵庫版シビックテック」のプロジェクトを立ち上げます。市町から課題を募ったうえで、事業者を公募し、協働実証を行います。課題解決につながった事例は県内自治体で広く共有するとともに、スタートアップ等による社会課題解決型ビジネスの展開にもつなげます。
コロナ禍は、広域連携の重要性を改めて浮き彫りにしました。関西広域連合において、コロナ対策に連携して取り組むとともに、防災、産業振興、観光、医療など7分野の広域事務を着実に推進します。
あわせて、これまでに鳥取県、大阪府との知事会議を開催しましたが、観光・産業・地域交通など、県境をまたがる課題に対応するため、隣接府県との連携を拡げます。
その四は、県民ボトムアップ型県政の推進です。
地場産業にかける思い。地域で活躍する若者の姿。移住してこられた方々の声。昨年12月のワーケーション知事室では、地域の課題と同時に、そのポテンシャルを肌で感じました。今後も各地を訪れ、課題を県政に反映するとともに、地域の魅力や新しい働き方を広く発信していきます。
「就職で東京などに出て行くのを止めるのは難しい。大切なのは、一旦県外に出た人達に、いかにしてUターンしてもらうかではないか。」学生未来会議での意見も参考にしながら、UJIターン就職やスタートアップの支援を強化することとしました。引き続き、若者の自由な発想による意見・提案を県政に反映させるため、学生未来会議等を通じて意見交換を重ねます。
情報発信は県政推進の礎となるものです。SNSを含め様々な媒体により県政情報をわかりやすく伝えるとともに、観光・交流人口の拡大や県産品のブランド力向上のため、テレビやラジオを活用し、県の魅力を内外に発信します。
県民参加型動画投稿選手権として、県のイメージアップにつながる動画を公募し、優秀者には県政PR動画も作成いただく新たな取組も始めます。
このたび、行財政運営調査特別委員会での慎重かつ熱心なご審議や、県民、市町、関係団体等からの様々なご意見を踏まえ、令和10年度までの県政改革方針の案をとりまとめました。
行財政改革は、知事就任当初からの最も大きなテーマの一つです。就任後、庁内協議を進める中で、本県の財政状況は外から見ていた以上に厳しいことが分かりました。一方で、様々な関係者との意見交換を通じて、県には財政的な余力があるとの認識が広がっていると感じました。
持続可能な行財政運営を行っていくには、就任直後の今だからこそ、財政の実情をきちんと見える化し、改革の姿勢を示さなければならない。そうした強い思いで、見直しに取り組みました。
新たな財政フレームでは、税収や財政指標を堅実に見込むため、経済成長率をベースラインケースに見直しました。県債管理基金への内部・外部基金の集約の解消も反映しました。
各分野の見直しのうち、事務事業は、単なる歳出削減型の見直しではなく、改善の方向性や代替事業を示すなど、ビルドを重視した改革を進めました。
また、投資事業は、将来の財政負担に配慮し、別枠事業についても通常事業と同様、地方財政計画の伸びを踏まえた上限を設ける一方、防災・減災対策など、喫緊の課題にも対応できる枠組みを設定しました。
これらの見直しを反映してもなお、令和10年度までに総額140億円の収支不足が生じる見込みです。コロナ禍の影響もあり、中長期な税収見通しは予断を許さず、震災関連県債残高も令和3年度末で約2,500億円にのぼっています。本県を取り巻く財政環境は依然として厳しい状況が続きますが、今後とも、歳入歳出両面の不断の見直し等により、収支均衡をめざします。
組織については、政策課題への的確な対応や施策の効率的かつ的確な執行のため、本庁組織を5部体制から12部体制に見直します。また、部局長マネジメントや、各部官房機能を強化します。
「イノベーション型行財政運営」の実現をめざす取組の一環として、外部有識者による事業レビューを導入し、PDCAサイクルの実現、ビルドを重視した事務事業改善に取り組みます。
めざすのは、躍動する兵庫の実現に向けた持続可能な行財政基盤の確立です。県議会はもとより、これまでの参画と協働の理念に基づき、県民ボトムアップ型の県政を進めるため、市町、関係団体、県民の皆様のご理解とご協力を得ながら取り組んでまいります。
新年度予算の歳出では、社会保障関係費や新型コロナに関連した交付金事業の増を見込む一方で、融資目標額の見直しによる中小企業制度資金貸付金の減や給与改定等による人件費の減などにより、前年度予算を下回りました。
歳入では、企業業績の回復による法人関係税の増など県税収入の増加が見込まれる一方、臨時財政対策債を含む実質的な地方交付税は減少し、一般財源総額は今年度当初予算並を見込んでいます。
本県の財政状況は引き続き厳しい状況にありますが、選択と集中を徹底するとともに、有利な財源や地方財政制度を活用し、令和4年度当初予算において、収支均衡を達成しています。
新年度の歳入歳出予算は、
一般会計 2兆3,833億500万円
特別会計 1兆5,943億9,700万円余
公営企業会計 歳入 2,545億2,900万円余
同 歳出 2,705億900万円余となります。
なお、過日、国において成立した補正予算を有効活用するための経済対策補正予算案を、新年度当初予算と一体的に編成しました。これについては、後ほど説明させていただきます。
条例については、行財政の運営に関する条例の一部を改正する条例など23件、その他、公の施設の指定管理者の指定など12件です。
海洋冒険家の堀江謙一さんが、まもなく単独無寄港での太平洋横断に挑まれます。あの「太平洋ひとりぼっち」の航海から60年目、83歳での挑戦です。
「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方を言うのだ」という有名な詩の一節がありますが、堀江さんは今も青春の真っ只中ではないでしょうか。
私との対談の中で、堀江さんは言われました。「単に頭で考えているだけでなく、行動を起こすことが大切。行動を起こせば今まで見えなかった世界が見えてくる」。
150年余の歴史をもつ兵庫県も、キラキラした心持ちを忘れてはいけません。そして、行動を起こしていかなければなりません。私自身、謙虚さを忘れることなく、自らの信念に基づいて前に進んでいきます。
県民の皆様、躍動する兵庫の実現をめざし、ともに未来を切り拓いていきましょう。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議の上、適切な議決をいただきますようお願い申し上げます。
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